採用戦略の立て方│4つの手順や押さえたいポイント、重要性

母集団形成

働く人の価値観の変容、労働者人口の減少、中途採用の一般化……など、さまざまな影響によって、採用に苦労する企業が増えています。「人手が足りないのでとにかく人が欲しい」「採用してから育成はするので大丈夫」そんな考えで採用に臨んでいると、中長期的に採用に苦労する可能性も。

今回は、そんな企業のために「採用を成功に導く」上で重要となる、採用戦略の立て方について具体的な手順やポイントを中心に解説いたします。人材獲得競争は年々激化していますので、ぜひ記事を参考に計画的な採用活動に繋げていただきたいと思います。

目次

採用戦略とは
採用戦略を立てる理由や目的
採用戦略を立てる際の具体的な4ステップとポイント
 【1】どうやって自社のことを知ってもらうか ~候補者集団の形成~
 【2】どうやって選考へ進んでもらうか ~合理的な選考プロセスの設計~
  └①歩留まり
  └②ステップ
  └③コンテンツ
 【3】どうやって適切な人材を見極めるか ~面接の質を高める~
 【4】どうやって自社を選んでもらうか ~優秀な人材の確保~
採用戦略を立てる際に役立つ5つのフレームワーク
 1)ペルソナ設計/リアルな人物像を設定し基軸とする
 2)カスタマージャーニー/求職者の行動を元に施策を考える
 3)3C分析/自社がいる採用マーケット状況を把握する
 4)4C分析/求職者視点で自社の状況を知る
 5)SWOT分析/自社と外部要因から採用課題を見つける
まとめ

採用戦略とは

経営戦略

採用戦略とは、経営戦略や事業戦略に基づいて考える「採用活動の指針」を指します。人事戦略と同義で、事業拡大に伴う採用戦略などは想像しやすい例でしょう。

「採用」=「人事が担当する業務」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、採用戦略は経営層を含む社員全員で協同して進めることが重要です。会社として目指すべき姿(経営戦略)や今後の事業展開(事業戦略)といった事柄に応じて立てる必要があります。

<採用戦略の具体的な考え方>
 ▼企業理念や事業戦略を実現するために
 ▼どのような人材を
 ▼どの程度のコスト(人数、期間などの人件費)をかけて
 ▼どのように採用し(採用手法)
 ▼活躍してもらうか(配置、育成)
 ▼人材が活躍するために必要な人事制度は何か(処遇、評価制度など)

なお、採用戦略は立てたら終わりではありません。具体的な活動内容に落とし込み、競合他社やその時代の潮流に応じて柔軟にブラッシュアップしていく必要があります。

経営戦略とのフィット感(整合性)をはじめ、時代の潮流に応じた働き方であるか(適合性)、採用~育成・活躍までの道筋が通っているか(一貫性)といったポイントを押さえ、都度調整を行いましょう。

採用戦略を立てる理由や目的

中途採用は、募集ポジションが出た際に採用活動を行うため、短期的な目的に応じた活動になりがちです。しかし、本来は人材が組織を作り、会社としての成長に貢献してくれる存在であるという前提に立ち返ると、刹那的な採用活動ではなく中長期的に取り組める状態を作っておくべきだと言えます。

また、少子高齢化や労働者の価値変容を受け、今後も優秀人材の獲得はさらに厳しい状況になると言われています。そのため、経営戦略や事業戦略を明確化し、会社成長における一手として人材採用を捉え、今から取り組むことが将来的に資源となることは間違いないでしょう。

このような理由から、採用戦略を将来の会社成長における重要な戦略の一つであると考え、取り組む企業がいま増えているのです。

採用戦略を立てる際の具体的な4ステップとポイント

採用戦略を立てる際に重要なのは、「どのように採用目標を達成するか」を考える事です。具体的には下記の4点です。

  1. どうやって、自社のことを知ってもらうか
  2. どうやって、選考へ進んでもらうか
  3. どうやって、適切な人材を見極めるか
  4. どうやって、自社を選んでもらうか

ここでは、この4つのポイントを前提に、採用を成功させるための具体的なステップをご紹介します。

【1】どうやって自社のことを知ってもらうか ~候補者集団の形成~

「自社が求める候補人材に対して、届けたいメッセージを届けること」を採用広報と呼びます。この採用広報を用いて、まずは自社が欲しいと考えるターゲット人材へリーチしましょう。

ポイントは、「自社の採用力」と「求める人材」とのバランスです。

自社の採用力が他社よりも低く、求める人材像が高いようであれば、求職者への積極的な働きかけ(PUSH型)が必要に。一方、自社の採用力が高く求める人材像にとっても魅力的であれば、母数の多い広告(PULL型)が有効になってきます。

但し、PULL型採用だけ行っていてはダメです。最近は大手企業も積極的に求職者へアプローチを行う時代です。採用に困っている企業であればこそ、PULL型×PUSH型を併用しつつ、前述したバランスを考えて実施しましょう。また、「自社の採用力が低い」と感じている企業であれば、地道な求職者へのアプローチや社員・知人経由などのリファラル採用も含め、メディア×手法ミックスで進めましょう。

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(図表参照元:曽和利光(2018).『人事と採用のセオリー』P133の図表を元に中途採用サクセス編集部にて作成)

代表的なプッシュ型の採用手法として知られる、SNSを活用したソーシャルリクルーティングによる候補者集団の形成方法については、以下の記事をご覧ください。導入によるメリットやデメリットをはじめ、採用成功事例などごをご参考になさってください。

関連記事SNS採用とは?新しい採用手法をチェック|概要・成功事例まとめ

【2】どうやって選考へ進んでもらうか ~合理的な選考プロセスの設計~

良い採用には合理的な選考プロセスが欠かせません。構成要素である下記3つの要素について、見ていきましょう。

①歩留まり

歩留まりとは、各選考過程において次の選考過程へ進む割合のことです。この歩留まり率を適確に設定することは、採用において非常に重要です。

3_no18_3(書籍引用元:曽根利光.(2018)『人事と採用のセオリー』の内容をもとに編集部にて図表作成)

<歩留まりの要素>
  • 受験率=受験者数÷エントリー数
  • 書類通過率=書類選考通過者数÷書類提出者数
  • 筆記通過率=筆記試験通過者数÷筆記試験受験者数
  • 面接通過率=面接通過者数数÷筆記試験受験者数
  • 内定率=内定者数÷受験者数
  • 途中辞退率=途中辞退者総数÷受験者数
  • 内定辞退率=内定辞退者数÷内定者数

このように例年の数値を集計・蓄積することで、ある程度自社の採用トレンドを把握することができるようになってきます。但し、季節変調や他社状況、景気などさまざまな影響を受けるため、その年の市況感なども考慮しながら妥当な数値を設定するようにしましょう。

②ステップ

選考のプロセスが「ステップ」に該当します。選考回数、実施期間、選考過程(テスト有無・内容)といった項目について内容を詰めましょう。

ポイントとなるのは、自社の状況や人材要件に対して最適な内容にすることです。
中には警備職の募集で志望動機書を手書きで提出させる企業がいましたが、書類選考時の離脱率が高く、要件にフィットしない選考内容であり、求職者からも敬遠されていました。

そのポジションに対して本当に必要な内容かどうかを検討しながら、設計を行いましょう。

③コンテンツ

選考における面接内容や筆記試験といった内容に関するものがコンテンツに該当します。ここで重要となるのが「合理的かどうか?」という観点です。

筆記試験⇒面接数回……というのが当たり前だと思われている採用担当者の方もいますが、そんなことはありません。大切なのは「なんのために実施するのか?」です。自社が求める人材を見極める上で必要な選考内容は何か?という観点で設計しましょう。

【3】どうやって適切な人材を見極めるか ~面接の質を高める~

中途採用においては、経験やスキルという観点で人材を判断しがちです。しかし、育成によって変えられない要素(地頭や成長意欲)は非常に重要です。

また、理想的な人材を追い求めてしまうと、ずっと採用難に苦しむことにもなりかねません。絶対評価でなく相対評価を心がけること、MUST(必須要件)、WANT(持っていればより良い要件)といった具合で、要件を整理した上で見極めることを心がけましょう。

また、面接官によって判断の基準がぶれてしまっては元も子もありません。育成によって主観によるブレを減らすことはできますが、あらかじめ決めておいた質問事項や評価基準に従って評価を行う構造化面接も有効な手段の一つですので、併せてご検討ください。

関連記事構造化面接で選考を最適化!進め方や注意点、使える質問テンプレ付き

【4】どうやって自社を選んでもらうか ~優秀な人材の確保~

せっかく選考を進めてきたのに内定辞退されてしまっては、苦労が水の泡です。多くの企業で採用活動における一連のものだと認識されていないことが多いのですが、内定者フォローの時間をしっかり確保しましょう。

この内定者フォローを確保するための手段として有効なのが、現場社員への協力依頼(リファラル採用)や採用代行(RPO)サービスの利用です。採用に多くの工数がかかる人事担当者の業務負荷を軽減し、効率の良い採用活動につなげることが可能です。こちらも検討してみてください。

採用戦略を立てる際に役立つ5つのフレームワーク

採用戦略を立てる際の流れはご理解いただいたと思います。続いては、採用戦略を立てる際に役立つ思考の型≒フレームワークをご紹介しましょう。

「求める人物像を明確にする」のに役立つフレームワーク

1)ペルソナ設計/リアルな人物像を設定し基軸とする

ペルソナ設計とは、架空の人物像を作り上げてターゲットの詳細分析を行う手法です。

ペルソナ作成シート

  • 性別や年齢
  • 日常触れるメディア
  • 憧れている人
  • 1日の生活スタイル
  • 今どんな会社でどのような仕事をしているのか
  • どんなことにやりがいを感じ、不満を感じるのか
  • なぜ転職を考えているか
  • 転職先に何を求めているのか
  • 将来どうなりたいか、理想とする生活スタイル

こういった細かな内容を想像し、ディテールを明確化していきます。ポイントは架空でありながらも、実際に隣で働いていそうな人をリアルに想像することです。自社にとって最も理想的な社員像を作り上げることによって、その対象はどういったキャッチコピーに惹かれるか、どのメディアに情報を載せれば目に留めてもらえるかなど、広告戦略を考えやすくなります。

また、ペルソナ設計は人事だけで決めるのではなく、採用戦略に基づいて経営層や現場の責任者とのすり合わによって行とよいでしょう。ターゲット像に対して社内で共通認識を持つことにより、戦略がぶれることなく、軸を持った採用活動ができるようになります。

「自社の強みや立ち位置を知る」のに役立つフレームワーク

2)カスタマージャーニー/求職者の行動を元に施策を考える

カスタマージャーニーとは、直訳すると「顧客の旅」という意味で、マーケティングで使われる考え方の一つです。顧客の行動を、認知⇒情報収集⇒検討⇒決定……といった具合にカスタマーの態度変容を時系列で整理することによって、適切なタイミングで顧客にアクションを行うことが可能となります。

採用戦略においてこの図を使う際は、ますターゲットである求職者のペルソナを設定するところからスタートするとスムーズに進みやすいと言えます。設定したペルソナがどう考え、どうアクションを起こすのか?を考え、どこをゴールとするのかを設定することが、このフレームワークにおけるポイントです。

また、あまり難しく考えずにシンプルでも良いので作成してみるということが大切です。

<採用戦略におけるカスタマージャーニーの作成例>

  認知・興味 情報収集 比較検討 意思決定
プロセス 転職時期は未定だが、転職サイトからの情報をチェックしている 自分の経歴で転職できる業界や職種、企業はどんなものがあるか調べている。情報を整理している 自社に興味はあるが、実際の社風や待遇面はどうか?応募するかどうか他社と比較を行っている 企業への応募
接点 ・転職サイト経由のメルマガ
・Web広告
・Googleで検索
・転職サイト掲載の求人内容
・Googleで検索
・転職サイト
・口コミサイト
・Twitter、Facebook
・知人などの人脈経由
・転職サイト
・自社採用HP
思考・感情 今勤めている企業より条件の良い会社はないかな、条件が良ければ検討しても良いな ・自分の経歴から転職可能な企業はどれくらいあるだろう
・どんな業界・職種が自分に向いているかな
・ワークライフバランスが保てそうな会社はないかな
・この企業の将来的なビジョンはどうかな
・実際働いている社員どんな人が多いだろう
・待遇面の良さは?
・社風とのマッチ度はどうかな
・結果はいつ頃出るだろうか
・他社も検討視野に入れた方が良いだろうか
施策 ・転職サイト経由でのスカウトメール配信
・ダイレクトリクルーティング
・リファラル採用

・転職サイトに掲載する求人内容の充実

・Web広告の運用
・自社HPの作成

(採用ブランディング)

・求職者へのダイレクトなアプローチ(名指しのスカウトメール作成)
・知人経由でのPR
・採用コンサルタント経由でのアプローチ、口説き
・応募辞退がないよう迅速に対応を行う
3)3C分析/自社がいる採用マーケット状況を把握する

3C分析とは、外部環境や競合分析などを行い、事業を成功させるための必要条件を見つけ出して、自社の戦略に活かす分析を行うフレームワークです。それぞれの「C」において、採用戦略では以下のような項目を把握します。

Customer (市場・顧客) Competitor (競合) Company (自社)
  • 業界の採用規模
  • 求職者のニーズ
  • 求職者の就活動向 など
  • 競合の業界ポジション
  • 各競合の特徴(採用戦略など)
  • 自社が特に注意すべき企業、今後想定される行動 など
  • 自社の企業理念、ビジョン
  • 自社ビジネスの現状(売上、シェア、商品など)
  • 保有リソース、人員
  • 福利厚生 など

参照元:3C(サンシー)とは・意味|MBAのグロービス経営大学院

4)4C分析/求職者視点で自社の状況を知る

4C分析とは、顧客視点で自社の商品やサービスを確認するフレームワークです。4つの「C」は以下の頭文字をとったもので、採用戦略においては求職者の視点で自社の状況をチェックする際に用いられます。

3C分析は自社、顧客、競合他社といった市場ニーズに対応できているかどうかを分析する手法であるのに対し、4C分析では顧客と自社の関係性において顧客視点に立って分析をするといった違いがあります。

顧客価値

(Customer Value)

経費

(Cost)

顧客利便性

(Convenience)

コミュニケーション

(Communication)

求職者が入社することによって受ける価値はなにか? 求職者が入社を決めるまでに費やす費用や時間はどのくらいか? 求職者が入社しやすい状況や条件とはなにか? 求職者に必要な情報を届けられているか、求職者の声が届いているか?
5)SWOT分析/自社と外部要因から採用課題を見つける

3C分析でまとめた情報を使って、自社の強み・弱み、外部の機会・脅威の4項目の掛け合わせから、自社の市場機会や事業課題を発見するフレームワークがSWOT分析です。

自社の

Strength (強み)」

自社の

Weakness (弱み)」

外部の

Opportunity (機会)」

外部の

Threat (脅威)」

求職者にアピールできる強み 求職者にとってデメリットとなる弱み 市場拡大の可能性や競争優位の可能性など、採用活動の機会となるもの 市場縮小の可能性や競争激化の可能性など、採用活動をする上での脅威となるもの

強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威など、内部と外部の要因をマトリックスで組み合わせることにより多面的な分析ができます。SWOT分析は経営戦略の策定によく使用される手法ですが、採用戦略にも活用することで採用課題を見つけやすくなります。

まとめ

「空きポジションが出たから募集しよう」といった場当たり的な採用も少なくない中途採用。今後はこういった概念を変え、激化する中途人材の獲得に向けて戦略的に取り組むことが求められています。
採用を見直すことは、自社についても見直す良い機会です。ぜひ、自社の強みや課題、将来ビジョンなどを整理し、企業成長につなげていただければ幸いです。

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