育児や介護のために時短勤務制度を取り入れている企業も多いでしょう。しかし、実際の利用率に関しては企業によって開きがあるようです。制度があるだけでは求職者へのアピールにはなりません。実際に利用されてはじめて魅力的な会社であるととらえられます。そこで今回は、「そもそも時短勤務とはどのような制度なのか」「企業にとってのメリットは?」「利用率を上げるには?」という観点から時短勤務について触れたいと思います。
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時短勤務は、「短時間勤務制度」として、2009年、育児・介護休業法の改正により導入が各事業主に義務づけられた制度です。もともとは少子化問題対策のために設けられた制度でしたが、介護を理由としても利用でき、家庭と仕事を両立しやすい社会を目指して、国が積極的に取り組んでいるものです。制度を利用するには特定の条件を満たす必要があります。
育児のために短時間勤務制度を利用できるのは以下のすべてに該当する労働者とされています。
わかりやすくまとめると、「3歳に満たない子を持つフルタイムの社員」ということになるでしょう。
5.については、「以下のような条件に該当する社員は、適用対象外とすることができる」という意味です。
ア)当該授業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
イ)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
ウ)業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員
つまり、就業1年以内の人や週に1−2日だけ出勤する人、また業務の内容から短時間での勤務が難しい人は対象外ということになります。ただし、ウ)に関しては、客観的に見て導入が困難だと認められなければ、除外の対象とすることはできません。さらに適応除外とされた労働者に対しても、企業は代替措置をとらなければなりません。代替措置とは、フレックスタイム制や時差出勤制度などとされています。
また、要介護状態にある家族を介護する労働者に対しても、所定労働時間の短縮等の制度を設けることが企業に義務付けられています。具体的には、下記4つのほか、これに準ずる制度のいずれかを利用できるようにしなければなりません。
期間や利用回数に関しては、対象家族1人につき、利用開始の日から3年以上の間で2回以上利用できるものとしなければなりません(介護サービスの費用助成、その他これに準ずる制度は回数制限なし)。ただし、育児のための時短勤務と同様、労務協定により対象外とすることができる人もいます。
参考資料:育児・介護休業法(介護関係制度)の概要 |
短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間(5時間45分から6時間まで)とする制度です。特定の1日の労働時間を7時間としたり、隔日勤務にしたりなど、柔軟に他の制度と併用することも可能ですが、本人が希望した場合は6時間としなければなりません。
短時間勤務になるとフルタイムの時より労働時間が減少します。この減少した分の労働時間に対して、給与を支払うか否かは企業が決めてよいことになっています。つまり、差額分を減給しても違法ではありません。
社員から「時短勤務制度を利用したい」と申し出があった際、「時短でどこまでの業務ができるのか」「他の社員に負担がかからないか」という懸念を抱く企業もあるかもしれません。しかし、時短勤務の利用率をあげることによって企業側にもたらされるメリットもたくさんあるのです。
時短勤務の利用者が現れることで、組織全体の業務量の減少や偏りが心配されるのは当然です。しかし逆に、「パフォーマンスを落とさないために進め方やスケジュール管理を工夫したことで、かかる時間を7割に短縮できた」「他の社員への気遣いからコミュニケーション量が増え、全体の業務効率が改善した」といったような効果が期待できるのです。
もちろんそのためにはマネジメントの強化が必要ですが、特定の人が請け負っていたタスクを分散させたり、他の人でもできるよう汎用化させたりすることは、組織全体の業務を見直すよい機会になるでしょう。
時短勤務の社員が増えても事業の業績が左右されないよう、時短勤務で働く社員だけでなく、マネジメント層も時間やリソースの「制約」をもつことで、会社全体の業務効率に対する視座を高めることができます。結果、オペレーションの見直しなど、総合的な効率化につながる可能性があるでしょう。
長年自社で働き、企業にとって欠かせない存在になっている人や、経験豊富で業務スキルが高い人でも、「家庭の事情で残業ができない」「フルタイムで勤務し続けるのが難しい」という理由で退職に至るケースがあります。
同じようなレベルの人材を再度見つけることは難しいうえに、新しく雇用したとしても教育や引き継ぎのコストを考えると、時短であっても自社の業務を理解している従業員に働き続けてもらったほうがメリットは多いのかもしれません。
時短勤務は、従業員が希望した場合には受け入れることが義務付けられているため、利用率が高ければ高いほど法令を遵守している企業であるというアピールができます。さらに様々な事情を持つ従業員に対して、柔軟な対応ができ、周囲からの理解も得られる職場という印象を与えるため、「働きやすい職場」として企業のイメージアップにつながるでしょう。
時短勤務で働く社員が、他の社員と同じ、もしくはそれ以上の成果を出した場合、「自分の業務の進め方には無駄があるのではないか」「自分も早く仕事を終えられるようにしよう」と、他の社員に働き方を見直すきっかけになります。
社員のなかには結果より費やした労働時間で評価されようと、無駄に長時間労働をしている人もいるかもしれません。そのような惰性の混じった職場環境に刺激を与えることができます。
2009年に義務づけられた「短時間労働制度」ですが、子育てのための女性の時短勤務利用率は29.2%、男性は0.5%(2015年)、介護のための時短勤務制度の利用者がいた事業所割合は2.5%(2017年)となっており、積極的に活用されているとは言い難い状況です。
利用率が伸びない原因として、「周囲のへ罪悪感」「仕事が終わらない」「給料が減ってしまう」「社内の理解が得られない」といいった声が上げられています。
そもそも時短勤務が該当するのはフルタイムで働いている社員。「将来のキャリアに不利になるのでは」といった不安からも利用を躊躇してしまうようです。その結果、利用されない「お飾り制度」になってしまっている企業も多数あります。
しかし、前述のとおり、時短勤務によってもたらされる企業側のメリットも多々あります。どのようにすれば時短勤務の利用率を上げられるのでしょうか。見直すべきポイントをチェックしてみましょう。
時短勤務になっても、フルタイムの時と変わらない成果や業務量を求める企業があります。しかし実現は難しく、結果的に「家に仕事を持ち帰り、子どもが寝た後にやる」といったケースも珍しくありません。時短を希望した社員に負荷をかけないためにも、仕事内容を再検討したり、他の社員と連携し仕事をうまく分担したりするなどの工夫が必要です。
またこの機会に「本当に人がやらなければならない作業か」という点も見直してみましょう。現在はRPAを導入するなどのシステム化によって、「単純だが量の多い作業」をロボットに移行し、業務の効率化に着手している企業も多くあります。単純労働を減らすことが時短勤務者の活躍できる土壌を作ることにもつながります。
制度利用のハードルを上げているのは「周囲の目」です。「自分だけ早めに退社するのは気が引ける。居心地が悪い」といった声は時短勤務を選択しない理由としてよく挙げられます。罪悪感を覚えさせない周囲のフォローが必要です。時短勤務者が居心地の悪さを感じているのであれば、周囲も同じように不満を覚えている可能性が高く、職場の空気が悪くなっているかもしれません。
不平不満が漂う環境が変わらなければ、時短勤務者だけでなく、今後子育てや介護を想定している社員からも「この職場で働き続けるのは難しい」と判断され、離職率の増加につながる恐れがあります。制度を掲げるだけではなく、実際に上司が積極的に育休制度を利用するなどをして体現し、時短勤務に理解のある風土を作っていく必要があります。
時短勤務をもっと現実的に活用してもらうために、法律が求めている以上の制度を独自に導入している企業もあります。また、育児や介護に関係がなく選択できる「短時間正社員制度」も注目を浴びています。具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。
例① サントリーホールディングス株式会社<多方面から両立をサポート>
対象:育児・介護の条件を満たす社員
制度:時短(育児のためであれば子どもの中学進学まで)・フレックス・在宅・時差出勤など
サントリーでは、時短勤務ができる期間を、義務である「3歳まで」から「子どもの中学校進学」まで延長しています。その他にも、コアタイムを設けないフレックス勤務やテレワーク勤務、時差出勤制度を併用することでフレキシブルな働き方をサポートしています。また育児や介護に関する社内の理解促進のために、ハンドブックを作成したり、外部講師を招いたセミナーやマネジャー研修を開催したり、「仕事と育児・介護の両立」に対する意識・考動改革を図っています。
例② 株式会社 ドクタートラスト<短時間正社員制度の導入で全体の時短につながる>
対象:すべての社員
制度:短時間正社員制度など
産業医や保健師と企業を繋ぐサービスを中心に2004年に創業した株式会社ドクタートラストでは、2016年から「短時間正社員制度」を取り入れています。育児介護以外にも自己啓発やボランティアを目的として利用でき、正社員から短時間正社員になった際は、正社員に戻ることも可能です。もともと「残業禁止」など長時間労働を敬遠してきた同社ですが、短時間正社員制度を始めたところ、制度利用社員だけでなく、周りの社員も刺激を受け、早く業務を切り上げるようになるという効果も見られたといいます。また、社員数は約50名ですが、社内に保育室を設けており、社員は月1万5千円で利用できます(2018年12月時点)。女性比率が高い職場ということもあり、男女関係なく活躍できる柔軟な就業環境が整えられています。
例③ 日本IBM<週休3日・4日も可能。自己啓発のためにも利用できる>
対象:すべての社員
制度:時短、フレックス、在宅など
日本IBMでは、1日の勤務時間だけでなく週の勤務日数も変えられる「柔軟な時短勤務」を導入しています。1日の労働時間を短くする方法と1週間の勤務日を少なくする方法があり、組み合わせは15通りあります。給与は労働時間に応じて減給されると周知されているため、「自分だけ早くあがるのは気が引ける」という罪悪感も減り、活用しやすくなったと評判です。さらにこの制度は、全社員を対象にどんな理由でも利用できるため、スキルアップのために資格取得を目指すエンジニアなどにも活用されています。
参考資料:ワークライフ|日本IBM |
「短時間勤務制度」が義務づけられた背景には「家庭と仕事の両立支援」がありました。時短勤務はそのための手段のひとつです。真に「働きやすい職場」を目指すのであれば、利用期間を広げたり、在宅勤務などの制度と併用できるようにしたり、柔軟性をもって多方面からのサポートを考える必要があるでしょう。また、特定の社員への制度を考える際は「それ以外の」周囲の反応も共に考えなければなりません。「なぜ一部の社員だけ優遇されるのか」といった社内の不満を残さないよう、啓蒙活動をしたり、利用対象を広げたり、全社員に向けた対策が必要です。
その結果、社員同士が応援しあう風土が生まれるかもしれません。利用されなければどんな制度も形骸化していってしまい、求職者からみても「体裁だけ」の会社に見られてしまいます。社員のリアルな声に耳を傾け、「活用される」制度つくりを目指しましょう。
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