政府も働き方改革の一環として副業を促進するようになり、これまで就業規則で禁止にしていた副業を解禁しようと考えている企業も多いのではないでしょうか。しかし、いざ解禁となると色々な不安があるかと思います。そこで今回は、副業解禁に関するトラブルや留意点についてまとめてみました。
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社内の要望に応え、副業を解禁してみたもののトラブルが起きては本末転倒です。一言で「副業」といっても大きくふたつのタイプに分けることができます。ひとつは個人事業主として業務委託やビジネスオーナーのかたちで仕事を掛け持つタイプ。そしてもうひとつは、他の法人や個人に雇われるタイプです。後者は「ダブル雇用」となり、トラブ発生率が高くなるのはこの場合です。ここでは、二重雇用として従業員が仕事を掛け持ちした際に起こりがちなトラブルをご紹介します。
副業を開始するにあたって懸念されるのは、本業への支障です。副業を開始すると、全体的な仕事の量が増えるわけですから、総合的な労働時間は増え、体に負担がかかります。副業先の業務にトラブルなどが生じれば本業に集中できないこともあるでしょう。実際、企業が兼業・副業を禁止している理由は「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が44.8%と最も高くなっています(株式会社リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」)。たとえ本業にかける時間は変わらなくとも、疲れや睡眠不足からこれまでと同じクオリティの業務をこなすことが難しくなるかもしれません。
副業先に思わぬ形で情報が漏れる可能性もあります。特に副業先が同業他社であった場合、事態は深刻です。本人に意図がなかったとしても、本業先で得たノウハウやスキルが自然と他社に流れ、会社の利益を害するおそれもあります。やむなく競業避止義務違反や秘密保持義務違反として、懲戒処分の対象とせざるを得ないケースも想定できます。
副業解禁の流れに伴い、「副業で儲けよう!」という勧誘も増えてきました。そのなかには悪質な詐欺もあります。特に従業員の副業をしたい理由が「収入を増やしたい」だけであった場合は、要注意です。結果的に、借金を背負うことになったり、不安やストレスから本業に身が入らなくなったりするリスクがあります。
上記のようなトラブルを防ぐため、副業を解禁する前には、どのような点に留意したらよいのでしょうか。
副業先の労働時間は誰が管理すべきなのでしょうか。労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されています。「労働時間を通算する」とは、本業とは働く場所が変わっても、労働時間が1日8時間、週40時間を越えると割増賃金の支払い対象となる、という意味です。割増賃金の支払い義務を負うのは副業先ですが、本業となる雇用主は従業員の副業先での労働時間を把握しなければなりません。ただしこれは、副業先でも従業員として雇用されている「二重雇用」の場合なので、個人事業主として業務委託で副業をする際は当てはまりません。この「労働時間の通算」が複雑なため、「自営や業務委託としての副業ならOK」という規則を設けている企業もあります。とはいえ、総合的な労働時間を管理しなければ「長時間労働による本業への支障」リスクは解決されません。細かいスケジュールを把握する必要はありませんが、平日・休日、それぞれ何時間くらい副業に割くのかなどは把握しておくべきでしょう。
従業員の中には、今のスキルや知識を生かせる同業他社での副業を検討する人もいるでしょう。その結果、本業先の利益を損ねることになった場合、企業は従業員に対して、損害賠償や懲戒処分を求めることになりかねません。そのようなトラブルを防ぐためにも、「在職中は本業の企業の利益を最優先して働く義務がある」ということを、しっかりと認識してもらう必要があります。
参考として、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」と同時に発表した企業の就業規則のひな型「モデル就業規則」によると、次の規程が設定されています。
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従業員が副業先を検討する際は、上の内容に留意して選ぶよう呼びかけが必要です。
一口に「副業を解禁する」といっても、重要なのは「どこまで解禁するのか」「何時間までOKとするのか」といった副業に関する就業規則を設けることです。規則を浸透させるとともに、詐欺被害などに遭わないよう注意喚起も行うと良いでしょう。副業を始めたいという従業員には、実際に働き出す前に、副業先の企業情報や事業内容を報告してもらい、企業側で検討してから許可をするというフローを設けるのもひとつの方法です。また本業での勤務状態や心身の健康状態など現状の確認も必要です。
そして、本業の業務量や内容が変わる可能性があるように、副業先での業務内容も変化する可能性があります。副業開始前だけでなく、定期的に状況報告を受ける仕組みを整えることも大切です。
副業をOKにすることによる企業側のメリットは多くあります。副業を許可することで「この人にはこんな一面もあったのか」という発見にもつながるでしょう。しかし、従業員にはあくまでも「本業がメインであること」を理解してもらったうえで業務を並行してもらう必要があります。
確かに基本的には本人の自己責任、自己管理のなかで行うべきですが、企業としても「本業に支障をきたさなければ、どこで何をするのも個人の自由」という野放しの体制ではなく、従業員の生活や人生そのものに寄り添う姿勢が大切です。従業員によっては、副業をしたい理由など言い出しにくいこともあるかもしれませんが、最も避けたいのは黙って副業をされることです。
すべてを把握・管理する必要はありませんが、自社のための一労働者としてではなく、働き方全体が変革期にあるなかで、一個人のキャリアを考えるのも人事の役割です。「副業をしたい」と申し出された際は適切なフォローができるようにしましょう。
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