中途採用の売り手市場が当たり前になっている昨今、企業側が“ドンピシャ”な人材を採用できるチャンスは今後ますます減っていくものと考えられます。そんな状況であるにもかかわらず、現場のメンバーからは「即戦力になる人材を採用しろ!」という声ばかり上がってきます。
採用担当者としては苦しいところですが、そもそもなぜ現場の人々は、このように「採れない人材=即戦力人材」を欲しがるのでしょうか。
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前提として、現場から人材採用の要望が上がる理由は、たったひとつと言っても過言ではありません。現状の人員数では業務が回らないほど人手が足りていないから(もしくは将来的に足りなくなるから)です。業務量に対して人員数が上回っているのに、それでも人を採用したいというのは、よほど特殊な状況でない限り考えられないでしょう。
逆を言えば、現場メンバーから人材採用の要請がきている場合、ほぼ間違いなく彼らは業務過多に苦しんでいると言えます。「すぐにでもキャパオーバーな状態を解消したい」「とにかく忙しいから、何とかしてほしい」……。そんな状況なわけですから、どんな人材を求めているのか質問すると、返答は「即戦力の経験者!」となりがちなのです。
つまり、現場が採用難度の高い即戦力人材を求める理由のひとつは、単純に「業務過多の状況をなんとかしてほしいから」です。
もちろん、採用が買い手市場であれば、即戦力人材を採れる可能性もあります。しかし前述したとおり、売り手市場は今後も進み、入社後すぐに活躍できるような経験者はますます採用しにくくなっていくでしょう。
特に中小企業において、その傾向は顕著になります。同業他社がひしめき合うなか、想定年収を上乗せできない企業、あるいは自社ビジネスの強みをアピールしにくい企業はなおさらです。実際、大手転職サイトで求人広告を出しても、応募がまったく来ないという事例も珍しくありません。
このような実情を知らないというのも、現場が「採れない人材」を欲しがる背景にあります。特に入社してからの社歴が長い人ほど、昨今の人材採用の困難さを実感しにくいようです。就職氷河期やリーマンショック時のような買い手市場を思い描いてしまい、「売り手市場といっても、これくらいの人材なら採用できるだろう」と知らず知らずのうちに採用ハードルを高めてしまっているわけです。
上記をまとめると、現場が「採れない人材」を要望してくるのは、下記の2点が理由と言えるでしょう。
(1)業務過多な状況を、即戦力人材によって解消してほしいから
(2)現場が、即戦力人材を採用する難しさを実感していないから
こうしたなかで採用担当者に求められるのは、まず現場ニーズと採用市場のミスマッチを埋めることです。例えば現場メンバーに対し、本当に即戦力人材以外はNGなのかと投げかけてみるのはひとつの手でしょう。職務内容を見直すことで、実は経験の浅い人材でも問題なく担当できるかもしれません。あるいは、現在の売り手市場を説明したり、競合他社がどれくらいの条件で採用しているのかを説明したりして、現場に採用難度を知ってもらうことも必要かもしれません。
現場からの無茶な要望にただ従うのではなく、採用担当者としての落としどころを見つけることが、採用成功への第一歩となるはずです。
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