日本国内の少子化や急速に進むグローバル化などを背景に、積極的に外国人採用をする企業が増えてきています。外国人採用をすることで労働力を確保したり、新しいビジネスアイデアが生み出されたり……といったメリットがあります。
とはいえ、「外国人採用」は「なんだか手続きが複雑そう」と不安に思っている人事担当者もいるのではないでしょうか。確かに外国人を雇用するには日本人の雇用とは異なるさまざまな手続きが必要です。その最たるものが「ビザ」の手続きでしょう。今回は、外国人採用時のビザの基礎知識についてみていきましょう。
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外国人を採用する際は、自社が法律違反に問われることのないよう、採用予定者の「在留資格」を必ずチェックしましょう。例えば、
といった行為は「不法就労助長罪」に問われかねず、会社に大きな損害を与えるリスクがあります。
よく耳にする「ビザ」という用語は、「日本国から付与された、日本に滞在・在留できる『在留資格』」の意味で使われています。しかし、本来の「ビザ(査証)」とは、外国人が自身のパスポートを提示した上で、日本への入国を申請し、「当該外国人の日本入国は差支えない」と判断された場合に証明書として交付され、パスポートに貼付される文書のことをいいます。このように本来の「ビザ」と「在留資格」は異なるものなのですが、一般的には「ビザ=在留資格」と理解されていることが多いようです。
外国人が日本で行うことのできる活動等を類型化した「在留資格」は、2019年11月時点で29種類存在しています。いわゆる「ビザが下りた」という状態は、いずれかの在留資格を取得し、日本に滞在できる在留期間が付与されたことをいいます。
「日本で働くこと」を目的としたの在留資格は19種類ありますが、同じ在留資格であっても、資格によって在留期間が異なる場合があるため注意が必要です。具体例を挙げてみましょう。
在留資格 |
在留期間 | |
「高度専門職」 | 1号 | 5年 |
2号 | 無期限 | |
経営・管理(企業の経営者・管理者) | 5年、3年、1年、4月または3月 |
在留資格の詳細については、法務省HPの資料で、「日本で行うことができる活動」や「在留期間」等の詳細を確認することができます。
外国人の採用選考を行う際には、外国人特有のチェックポイントがあるため、以下の点に気を付けましょう。
外国人の応募者と面接する際には、「どの在留資格が下りていて、どんな種類の仕事が可能で、在留期限がいつまでなのか」を細かく確認することが重要です。そのため、応募者から、以下の書類の原本を提出してもらいます。これらの書類をチェックすることで、日本での労働資格があるのか、自社の業務に差支えがないかがわかります。
チェックの際には、特に「期限切れ(オーバーステイ)」について注意深く確認しましょう。
応募者が現在保有している在留資格と採用後の職務内容等が合致しない場合には、在留資格の変更申請手続きが必要になります。変更許可を取得するためには、入管法で規定されている要件をすべて満たさなければなりません。もしも就労可能な在留資格が許可されない場合には、内定は無効になるということも事前にしっかり伝えておきましょう。
日本語が読めない外国人の応募者に対して、日本語のみで労働条件の提示・雇用契約書の交付などを行うのは望ましくありません。日本語だけではなく、応募者が理解できる言語でも労働条件を提示しておかないと、後から問題が生じた場合に契約が無効になるおそれもあるので注意しましょう。
外国人の雇用を決定したら、以下のような手続きが必要になります。
雇用予定の外国人の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。なお、届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となるので注意が必要です。
さまざまなケースに基づき、必要となる申請手続きが異なります。いくつか例を挙げてみましょう。
ケース | 必要な申請手続き |
日本国外から外国人を呼び寄せる場合 | 在留資格認定証明書交付申請 |
国内にすでに在留している外国人で 就労資格を持っていない場合(留学生など) |
在留資格変更許可申請 |
現在保有している在留資格と別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合 | 在留資格変更許可申請 |
申請手続きの際には、厚生労働省のHPを参照するとよいでしょう。
外国人の雇用が初めての場合、何から始めればいいのか、誰に相談すればいいのか、戸惑う人事担当者も多いようです。
厚生労働省は各都道府県に「外国人雇用管理アドバイザー」を設置し、外国人労働者の適切な雇用管理等を推進しています。ハローワークで申し込めば誰でも無料相談が可能です。疑問点がある場合には、抱え込まずに外国人雇用管理アドバイザーに相談してみましょう。
「外国人採用」にあたっては、さまざまな法律や特有の手続きが関わってきます。しかし、多様な人材を採用しダイバーシティを推進することは、業績向上にもつながり、企業にとって大きなメリットになります。
最初は外国人採用の手続きに戸惑うかもしれませんが、ひとつひとつ確認しながら採用活動を進めていきましょう。困ったときには、弁護士など専門家のサポートを受けるのもよいでしょう。
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