採用手法は、時代とともに変化していきます。売り手市場といわれ、求職者の獲得方法が多様化している今、従来の採用方法では思うような人材を確保することが難しくなっています。そこで今回は、中途採用の現状や最新トレンド、各企業の取り組み事例をご紹介します。
現在、中途採用をめぐる環境ではどんな変化がおき、どのような採用課題を抱えているのでしょうか。今の採用トレンドを知る前に背景を確認しておきましょう。
求人募集の歴史を振り返ってみると、かつては紙媒体が主流でしたが、インターネットの普及に伴いネット媒体へシフトし、2010年ごろからは特にその動きが加速しました。ユーザーのITリテラシーもどんどん上がり、個人間のコミュニケーション障壁も若い世代を中心に薄くなっています。
プライベートだけでなく、転職活動や業務においても、Facebook、Twitter、InstaglamなどのSNSを活用しはじめています。
リクルートワークス研究所が行った調査によると、2019年度上半期の中途採用において、人員確保できた企業は48.3%、確保できなかった企業は50.6%。「確保できた」-「確保できなかった」企業の中途採用確保D.I.は、3年連続でマイナスとなっています。
中途採用と新卒採用における採用予定人数の調査では、5年連続で新卒採用から中途採用へ移行する企業が増えているという調査結果も。今後は、中途採用におけるさらなる採用競争の激化や難易度の高まりが予想されます。
また中でも注目したいのが、人員確保できなかった企業の約半数が「IT化や機械化による業務の効率化」を対応策として取っているという点です。今後は、テクノロジーを駆使して人事領域の課題解決を行うという「HRテック領域」に注力する企業は増えていく事は必至と言えるでしょう。
参照資料:2020年度 中途採用見通し(従業員規模別)|『中途採用実態調査』リクルートワークス研究所 |
最近は人材確保のために腰を入れて「働き方改革」に取り組む企業が増えてきました。フレックスや在宅勤務など、働き方も多様化しています。こういった環境の変化にプラスして、現在の売り手市場が影響し、求職者の転職ハードルを下げています。
これは転職者の獲得が容易になると同時に、自社人材の流出のリスクも高まるという相互作用の関係性にあります。こういった市場や環境の変化が、社員定着率を下げている要因の一つとなっています。
また、少子高齢化や日本の人口低下による労働者数の低下といった社会問題も手伝い、人材育成に時間やお金をかけることができないといった企業も増加しています。
早期退職が増えれば、また新たに採用活動をしなければなりません。また求人メディアも多様化し、様々な求職者ニーズに合わせて複数の求人媒体を利用しなければならなくなってきました。結果的に、採用コストを圧迫しています。
売り手市場の後押しもあり、転職のハードルは益々下がり、求職者が企業を選ぶ時代です。企業は従来のように求職者からの応募を「待つ」だけでなく、積極的に「潜在層」を探しにいく必要が出てきました。
上記でふれた変化と課題から、現在の採用トレンドには共通する特徴が3点みられます。それは、
です。一つひとつみていきましょう。
日常的に気軽に情報に触れられるようになったり、無料で登録ができるサービスが増えたりしたことで、就労に関する若者への意識調査(内閣府実施)によると、「仕事より家庭・プライベートを優先したい若者が増加」しており、「転職を否定的に捉える若者は少ない」という結果が出ています。また最近は、無料で転職相談~企業紹介が受けられるサービスや企業から直接求職者へアプローチする採用手法も一般化しているため、転職を考える機会が以前より多いと言えるでしょう。
こういった環境も後押しし、「今すぐではないが、良い会社があれば転職も検討したい」という、転職潜在層が増えていることが予想されます。
こういった人たちは、「A社 or B社」と比較検討をしているわけではないため、他社より早くアプローチできればアドバンテージを得ることが可能です。また企業によっては、フットワークの軽い求職者より、慎重に考えている求職者の方が、入社後の定着率も高いという見込みから、転職市場に現れないような人材こそ貴重であると考え、積極的に探しにいく企業もいるほどです。
参照資料:転職に対する意識|『特集 就労等に関する若者の意識』内閣府 |
従来の人事部が採用を行うフローの場合だと、どうしても現場社員の雰囲気や業務内容に関するイメージのすり合わせが上手くいかず、採用後のミスマッチが発生しがちでした。
そのため、採用した人材が「なかなか即戦力として活躍してくれない」、「入社後すぐに退職してしまう」といった課題を抱える企業も少なくありませんでした。
最近はこのような採用における求職者と企業双方に起こるミスマッチを防ぐため、現場で働く社員が参加したり、SNSなどを通じて求職者一人ひとりとやり取りを行うといった採用手法が増えてきています。
社員による紹介や、企業からアプローチしにいく採用、またSNSを活用した採用は、求人メディアや人材紹介会社を利用するコストより低く抑えることができます。「予算はないが、優秀な人材を採用したい!」といった状況でも活用できることが特徴です。
では具体的にどんな採用手法が取り入れられているのでしょうか。引き続きおさえておきたい3つの手法に合わせ、新たに注目されている2つの手法を紹介します。
すでに多くの企業が取り入れている手法でもありますが、引き続きおさえておきたい3つのトレンドを、「採用コスト、メリット・デメリット」と共にご紹介します。
職場スカウト採用とは、社員自身が友人や知人を紹介する形の採用活動です。リファラル採用とも呼ばれますが、“リファラル”には、「推薦・紹介する」という意味があります。
これまで、面接や選考といった採用業務は人事担当者が行っていました。しかし、限られた時間・人数で選考を行うため、「応募者が社内の風土や環境に合うか」といった適性までを把握することは難しく、そのため採用のミスマッチが起こり、定着率の低下につながる要因となっていました。そこで以下のようなメリットがある職場スカウト採用を取り入れる企業が増えています。
採用コスト |
社員紹介による採用手法のため、メディアへの掲載費や人材紹介会社への仲介料などは発生しません。ただし、リファラル採用を導入している企業の多くは、紹介してくれた社員や入社した社員に対してインセンティブやお祝い金を支払っているようです。相場は1~10万円で、求人広告や人材紹介を使うことを考えれば採用コストは大きく抑えられます。 |
メリット |
企業風土へのマッチ度、定着率の高さ
採用決定率の高さ
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デメリット |
人間関係への配慮が必要
似た人材が集まり、多様性が損なわれる
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ダイレクトリクルーティングとは、企業による積極的・主体的な採用活動のことをいいます。求職者が求人メディアや人材紹介会社を利用して企業にアプローチする従来の方法とは異なり、企業側がSNSや人材バンクなどを通じて興味のある人材にコンタクトをとる方法です。
海外で主流であるこの手法は、ビズリーチ社が日本に持ち込み、「攻め」の採用手法として急速に広まっています。採用コスト削減、潜在層へのアプローチの他に、自社の採用力を高めることができるといったメリットがあります。
採用コスト |
ダイレクトリクルーティングでは、企業が人材データベースを利用して自ら求職者をスカウトするため、かかる費用はデータベースの利用料のみとなります。成功報酬額も人材紹介と比べると低めに設定されています。 |
メリット |
自社の採用力が強化される
ピンポイントで効率的
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デメリット |
採用業務の負荷が増える
根気強さとスキルが求められる
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ソーシャルメディアリクルーティング(ソーシャルリクルーティング)は、SNSを活用した採用手法です。基本的な流れはダイレクトリクルーティングと近いのですが、専用のサービスに登録してデータベース内から人材を探していくのが一般的であるダイレクトリクルーティング対して、ソーシャルリクルーティングはSNS経由で人材を探します。
ソーシャルリクルーティングを成功させるには、一方的な情報発信ではなく、求職者との「コミュニケーション」が不可欠。採用コスト削減、潜在層へのアプローチといったメリットに加え、「企業のイメージアップ」といった効果も期待できます。
採用コスト |
SNSの利用は基本的に無料です。求人メディアへの掲載料も、社員への報酬も、データベースの利用料も払う余裕がない!という企業は、SNSを駆使しましょう。 |
メリット |
深い相互理解が行われる
企業のイメージアップに繋がる
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デメリット |
炎上リスクがある
定期的な更新が必要
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スクラム採用とは、「社員主導型の採用活動」のことを意味しており、全社員が一丸となり「スクラムを組んで」取り組む採用方式のことです。
「リファラル採用」は、スクラム採用の手法のひとつといえますが、スクラム採用では推薦や紹介だけでなく、求人要項やスカウト文面の作成なども含め、採用に関するすべての活動が対象範囲となります。
これは、株式会社HERPが提唱する概念で、以下の3つの条件を満たす採用活動がスクラム採用と定義されています。
<権限移譲> |
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<成果の可視化> |
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<採用担当のPM化> |
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期待できる効果
現場・部署を単位とした効率的な採用活動を行うことで、採用担当者の負荷軽減につながります。その分、採用活動全体のマネジメントを改善したり、振り返りや入社準備を早めに行ったりといった採用活動の質向上に能動的に取り組む余裕が生まれます。
人事だけでなく、社員が自社の魅力を言語化しながら「誰と一緒に働くのか」を自ら考え実行する中で、社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」が高まります。
ただし、社員一丸となって採用に取り組む重要性を多くの社員が理解していても、それぞれの業務を抱えながら採用業務をこなすことはなかなか大変です。そのため、オペレーションを整えたり、ゴールの共有をしたり、スクラム型の採用活動が定着するまでに時間がかかることがあります。
Candidate Experience(候補者体験)とは、採用候補者が企業を認知してから選考を終えるまでの、あらゆるタッチポイントを候補者目線で体験することを指します。
具体的になタッチポイントとしては、
といった段階があります。
優秀な社員の獲得が難しくなっている今、企業は潜在層を掘り起こすため、上記で紹介したような、ダイレクトリクルーティングやSNSを活用した接点強化、またカジュアル面談などを取り入れ、タッチポイントを幅広くしてアプローチする必要があります。
結果、採用候補者が入社を検討するプロセスが長くなり、企業とのタッチポイントの回数が増え、そこでの体験が候補者の判断に大きく左右しているのです。
さらに入社に至らなかったとしても、そこでの体験をSNSでシェアされるなどにより、企業のイメージダウンにつながる恐れがあり、採否に関わらず、いかに良いCEを候補者に与えるかが重要となっています。
期待できる効果
CEがよければ、企業に対する十分な理解を得ており、エンゲージメントが高まっている段階で入社してもらっているので、活躍するまでのスピードが早いという効果があります。また離職率の低下、定着率の向上にもつながります。
CEがよければ、採用に至らなかった候補者に対しても自社のファンになってもらえるといった効果があります。これは、to C企業であればなおさら効果的で、良い顧客を増やすことにつながります。
上記で紹介した今後注目したい新手法である「スクラム採用」と「Candidate Experience」の取り組み事例を、国内・海外合わせてご紹介します。
「採用は全員の仕事」という考えを元に、毎週開かれる「Hello hey」という会社説明会には、社員の9割が参加しているそうです。
参考URL:COMPANY|株式会社ヘイ |
創業当時から入社経路の過半以上がリファラル採用という株式会社メルカリ。気軽に参加できる会食を開き、リファラル採用に必要なステップを簡潔にしています。
また、「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションと、
という3つのバリューは、キャッチーで覚えやすいため社員に浸透しやすく、全員が共通の理念をもって採用活動に取り組む土壌となっています。
参考URL:mercari careers|株式会社メルカリ |
特に、採用を見送ることになった候補者を選考のフィードバック面談へ招待することで、Airbnbに対してポジティブな印象が生まれ、2度目の応募や、友人への紹介などにつながっているそうです。
スクラム採用の事例でも紹介した株式会社メルカリでは、採用面接に関わる社員が100人を超える中で、面接スキルのばらつきや判断軸の振れ幅などが課題になっていました。
それに対し、選考の各プロセスでの見極めポイントの明確化や、模擬面接による面接官育成など、採用プロセスの体系化を行うことでCEの改善を図っています。
様々な採用手法が出現してきたことによって、採用業務も複雑化してきました。採用に関わる社内の人も増え、一人ひとりの候補者ともコミュニケーションをとらなければなりません。スクラム採用でも説明したように、採用担当は今後ますます、採用活動全体のマネジメントにおいて力を発揮していかなければなりません。
そこで注目したい新しい概念が、「HRテック」です。これはHR(ヒューマンリソース)とテクノロジーを掛け合わせた造語で、AIやビッグデータ、クラウドなどの新しい技術を駆使して採用業務を効率化していくという考え方です。これまでアナログで属人的だった採用業務が、より効率的に客観的な視点で進められるようになっています。
もちろん自社で開発しようとしたら難しいことですが、だれでも簡単に利用できるサービスが続々と提供されています。その中でも今回は採用担当者に人気の2つのサービスをご紹介します。
参考URL:HRMOS採用|株式会社ビズリーチ |
求人案件・求職者の管理、求職者と求人案件のマッチングなど、多彩な機能で人事担当者の業務をサポートしてくれます。応募者情報の社内共有はもちろん、データ集計機能で媒体効果も測定もでき、また人材紹介会社との連携機能で各社から応募者の推薦をスムーズに受け取ることが可能です。シンプルで直感的なインターフェースも評判です。
働き方に対するニーズや市場の移り変わりにより、採用手法も変化を続けています。企業から多数の求職者へ一方的に情報を発信する採用活動は縮小し、より企業と個人との「マッチング」が重視された手法へ移行していくでしょう。
転職が当たり前になった分、早期離職などの課題が生まれましたが、逆により企業にマッチする人材と出会うチャンスが増えたと捉えることもでき、採用担当者のやりがいや責任はますます重大になります。
常に新しいトレンドを模索しながら続ける採用活動は大変ですが、業務の効率化を手助けしてくれるHRテックの技術も日々革新されています。そのようなツールもうまく活用しながら、企業と個人がお互いに幸せになれる採用活動を模索していきましょう。
有名求人サービスを簡単比較した、 今回、中途採用サクセスでは、
についての比較資料をまとめました。 「採用サービス手法別比較【完全版】」は、採用サービスの比較検討整理を実施する時間が無い、整理したことはあるけど最新の状態にはアップデートできていない、とにかく資料さえ添付すれば稟議が通るので今すぐ整理資料が欲しい。という方にダウンロードされている中途採用サクセスで人気No.1の資料です。 |