IT業界の人材不足は以前から指摘されていますが、ITエンジニア・デジタル人材需給のギャップは今後さらに広がることが予想されています。
この記事では、IT人材がどの程度不足し、今後どう変化するかを政府発表資料をもとに解説。「IT人材不足の理由」や「IT人材不足を解決するための対策」など、業界における取り組み事例と合わせて解説していますので、自社におけるIT人材獲得の施策を考えるご参考になさっていただけたら幸いです。
IT人材が不足する理由
日本におけるIT人材に対する評価の低さ
IT業界に対するネガティブなイメージ(3K)
IT人材の高齢化と若手不足
IT業界特有のスピード感
IT市場の急激な拡大と成長
IT業界における人材不足の現状と今後
全人口に占めるIT技術者の割合
IT人材に対する企業の不足感
2030年までの見通し
企業として取り組みたいIT人材不足への対策
【1】社内の労働生産性を上げる
【2】未経験を採用・育成する
【3】多様な人材活用を行う
【4】オフショア開発も視野に入れる
【5】ニアショア開発も視野に入れる
まとめ
IT世界中で需要が高まっているITエンジニアやプログラマー、プロジェクトマネージャーといったIT人材。経済産業省の調査結果を参考に、IT人材不足の背景を探っていきます。
(画像引用元:経済産業省「我が国におけるIT人材の動向」P5より)
「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、アメリカと比較した際の日本における給与水準の低さが分かります。
IT業界は「きつい、厳しい、帰れない」を意味する「3K」のイメージが持たれがちです。そして、実際にIT業界は離職率が高いと言われています。こうした就労環境が原因でIT技術者を志望する人が増えにくいことも、IT人材不足を招いている一因と言えるでしょう。
情報処理推進機構が大学生に対して行った調査に依ると、理系学生は「IT技術が身につく」「専門スキルを獲得できる」「先進的」といった好意的イメージを持つ一方、文系学生は「仕事内容がよく分からない」「ストレスが多そう」といったネガティブイメージを持っていることが分かっています。
このような「ITはよく分からないこと」だという知識の薄さは、日本国としての問題であり課題と言えるでしょう。
周知のとおり、日本では少子高齢化が進んでいます。労働人口の減少は、もはや国家的な課題です。
これまで活躍していた人材が高齢になり定年退職していく一方、新たに労働市場へ流入する人材は減り続けていることから、全産業において人手不足が顕在化しています。特に、IT業界は市場が堅調に成長を続けていることから、人口構造の変化による働き手不足が特に顕著に表れるのです。
IoTやSaaS、SNSやアプリ、AIなど、IT業界は日々新しい技術やサービスが生まれ、変化し続けています。このような常に変化する業界特性やスピード感といった点も、IT人材不足に拍車をかける要素の一つと言えるでしょう。働き手であるITエンジニアも、常に自らのスキルをブラッシュアップし続けなければなりませんので、人によっては変化の激しさに疲弊してしまうケースも少なくありません。
また、企業側としても常に新しい技術を身に付けたIT人材を求めるため、いつでも最新スキルや技術を持った人材は奪い合いとなってしまうのです。
IoTやAI等の活用が広がる昨今の状況は「第4次産業革命」と呼ばれ、IT産業はその中核を担うものと位置づけられています。
こうした産業構造の変化を受けて、IT市場は年々拡大を続けています。特に、モノに通信機能を持たせてインターネットでつなぐIoT化が進む伴い、これまでIT企業やWEB業界に限られていたIT技術の活用が、業種を問わず広がっていることは大きく影響しているでしょう。
IT業界の人材不足は今に始まったことではありませんが、この先さらに深刻化することが予想されています。政府の調査データをもとに、現状や今後を見てみましょう。
ヒューマンリソシアが調査した世界各国のIT技術者のデータを見てみましょう。全人口に占めるIT技術者の割合は0.86%で世界第32位という結果でしたが、IT技術者の人口数は109万人で世界第4位でした。IT技術者不足が叫ばれて久しい日本ですが、世界的にみるとITエンジニア数が少なくわけではないことが分かります。
一方、独立行政法人情報処理推進機構が800社程度にアンケートした「IT人材の量に対する不足感」の調査に依ると、2015年度から「大幅に不足している」企業は年々増加し続けているという結果に。ITエンジニアの数自体は少なくないのに、充足できていない日本の現状が分かります。
(画像引用元:「IT人材白書2020」概要|2020年8月31日)
続いて、複数のシナリオによる市場成長予測に沿って、人材の需給ギャップを予測した経済産業省の「IT人材需給に関する調査(概要)」を見てみましょう。2030年度のIT人材不足数に関する試算結果に依ると、年々人材不足数の増加が予測されており、将来的な人材不足に懸念が残る結果となっています。
日本における深刻なIT人材不足の現状について見ていただきました。では、この問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、企業がIT人材を確保するための対策をご紹介します。
既存社員への教育や就労環境の改善を行うことによって、一人あたりの労働生産性を向上させるというのも一つの手です。
特に、即戦力となる若手人材は採用難易度も高く、なかなか求めるような人材の獲得に至らないのが実状です。そのため、採用に依ってではなく、すでに活躍している社員のスキルアップなどによって、IT部門の生産性向上を目指すというのも有効な対策の一つです。
既存社員の生産性向上と並行して、採用の間口を広げるために、多様な人材に目を向けると良いでしょう。
IT業務未経験者やシニア層など、幅広い層から意欲溢れる人材を採用し育成すると、優秀なIT人材へと成長し、会社に大きく貢献してくれる可能性も。即戦力となる人材を探すことに加え、見込みのありそうな未経験人材を採用し、自社で育成することも積極的に検討してみましょう。
この、将来の可能性を信じて採用する手法をポテンシャル採用。採用においては、成長意欲やヒューマンスキルといった必ず見極めるべき4つの資質や育成前提で考えなければならないといった成功のための秘訣があります。以下の記事で解説していますので、併せてご確認ください。
多様な人材という観点では、外国人採用もぜひ検討したいところです。とくに近年は、ベトナムやインドといったアジア圏でIT教育が活発化していますので、こうした国の出身者に目を向ければ、ITスキルを備えた人材を見つけやすいと言えます。
IT業界の待遇は日本人にとって特に魅力的なものではありませんが、インドや中国を含むアジア諸国と比べれば、平均年収は高い状況です。同じITレベルを持った人材でも、日本人と比較すると意欲も高く、活躍が期待できるでしょう。
ただし、就業ビザや居住環境を含めたサポート、書類の英語化など、さまざまなフォローが必要となることも心得ておきましょう。
人件費の安い海外の企業や現地法人に開発を委託するオフショア開発。1980年代ごろから導入する企業が増え始め、日本IT企業の約半数近い企業が利用しているとも言われています。
特に、人件費を大きく削減することができるため、日本国内におけるITエンジニア不足を解消する一手にもなると期待されており、検討すべき対策の一つです。
<対策例やポイント>
海外に委託するオフショア開発に対して、都市部の企業が日本国内の比較的近い地域にある企業や事業所へ開発を委託する方法を「ニアショア開発」と呼びます。北海道や九州、沖縄といった比較的人件費を抑えることができる地域に拠点を置く企業が多いと言えるでしょう。
オフショア開発と比較すると、時差なくやり取りができる、文化の違いによるコミュニケーション齟齬や業務の進め方の違いといった業務における課題が少ない点がメリットです。ブリッジSEも必要ありません。何より、高品質かつセキュリティを維持しつつ、人件費抑制にも効果的な点が最大の魅力と言えるでしょう。
<対策例やポイント>
市場規模の拡大や人口構造の変化、変化が激しいといった業界特性を背景に、IT業界の人材不足はますます深刻化することが予想されています。政府もさまざまな対策を講じていますが、労働生産性を上げるための取り組みや未経験者の育成、さらには外国人人材の活用など、各企業にも工夫が求められる状況だと言えます。
優秀なIT技術者の確保がますます難しくなる中、自社のIT関連事業を引き続き円滑に進めていくため、この記事で紹介した事例を参考に、多様なIT人材の活用や育成を検討してみてください。
即戦力ITエンジニア採用で
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