中途採用者に研修を行うべき?研修目的・内容やポイントを徹底解説
コストダウン中途採用者は、新人社員と違って社会人経験をしています。そのため、採用時の研修を「必要ない」と考える人事担当者もいます。
まずは、中途採用研修の必要性を理解しましょう。その次に、研修の内容・方法・期間の計画から準備段階において、重要なポイントを確認します。人事担当者が中心となって、中途採用者が自社の戦力になるための中途採用研修を作っていきましょう。
目次
中途採用者への研修が必要な理由
業務に必要な知識・技術を習得してもらう
企業が掲げる経営理念や目標達成に貢献してもらう
従業員同士の交流を促すため
中途採用者への研修種類や内容、期間
研修方法として代表的な2種類
└OJT研修で実践まで指導
└OFF JT研修で知識を伝える
マネージャー以上は別途研修設計を
研修期間は1日から数か月まで必要に応じて
中途採用の研修を成功させる3つのポイントとは?
目標・課題を具体的に設定する
客観的な評価システムを整備・実践する
定期的に面談やフォローアップを行う
中途採用研修を実施すべき企業とは?
中途採用者と社員の能力差が大きい企業
社内環境を改善したい企業
組織力・一体感を高めたい企業
まとめ
中途採用者への研修が必要な理由
中途社員が自社に定着し、中長期的に企業成長のために活躍できるよう支援することは、人事担当者の大切な業務の一つです。リクルートキャリアが行った調査「転職者の転職先でのとまどいランキング」に依ると、「前職との仕事の進め方ややり方の違い」「社内や業界用語、専門知識が分からない」と感じている人が多く、企業側の支援策として「研修」や「面談」を実施しているという結果も出ています。
(画像引用元:株式会社リクルートキャリア|中途入社後活躍調査(2018-2019)より)
それでは、中途採用者に対して研修が必要な理由・目的を見ていきましょう。
業務に必要な知識・技術を習得してもらう
同業種での転職でも、仕事の進め方やルールが異なるのはごく当たり前のことです。業務に必要な知識や技術、スキルを習得してもらい、早期に即戦力化してもらうために「中途採用者に対しても研修が必要」なのです。
なお、育成担当者が決まっていても、肝心の担当者が多忙で指導やフォローが出来ず、中途採用者が放置されては意味がありません。モチベーション低下や最悪の場合、早期離職にも繋がってしまう可能性も……。
人選の際は、ある程度余力があって丁寧にフォローできそうな人をアサインするよう留意しましょう。
企業が掲げる経営理念や目標達成に貢献してもらう
企業が掲げる目標達成に向けてチーム一丸となるためには、社員が同じ方向を向いている必要があります。しかしながら、中途採用者はこれまで勤めてきた会社のやり方やルール、社風や考え方といったものが染みついています。これは年数が多くなればなるほど、顕著です。たとえ同業種での転職だとしても、企業が変われば仕事の進め方もルールが変わり、目指す姿も変わるため即戦力化出来ないのは当然とも言えます。
こういったこれまでの経験を棄却し、自社の成長にコミットしてもらうためにも、一旦企業として目指す姿や経営理念を理解してもらう必要があるのです。また、企業と社員間でのエンゲージメント(愛着心、思い入れ)を向上させ、社員定着にも貢献するため、ぜひ行っておきたいところです。
従業員同士の交流を促すため
研修は従業員同士の交流を促し、相互理解を自然と深めることができます。
一般的に、中途採用者はある程度ビジネス経験がある社会人のため、放置される傾向に。経験年数が増えれば増えるほど、その傾向は顕著だと言えるでしょう。結果として中途採用者が孤立してしまい、周囲に馴染めず離職してしまう……ということも珍しくはありません。
OJT研修やエスカレーション制度などを設けることによって、このような孤立化を防ぎ、気軽にコミュニケーションが取りやすくなるため、新しい職場で業務に集中しやすくなります。
中途採用者への研修種類や内容
人材の育成方法は大きく「OJT」と「OFF-JT」の2つに分けられます。
研修方法として代表的な2種類
研修にはいくつかの種類があります。1人から数人を同時期に採用する場合の一般的な研修方法は、大きく分けて3種類です。
①OJT研修で実践まで指導
実務を行う所属先で行われる研修は、OJT研修(On-the-job Training)と呼ばれています。業務を行う上で必要となる知識やスキルが身につくように、採用者を教育します。配属先の上司や先輩が担当者として指導をし、実際の業務を一緒に進める実践的内容です。中途採用者が担当業務を遂行できるまで、実践を繰り返していきます。
②OFF JT研修で知識を伝える
配属先での実践ではなく、研修やセミナーなどの業務を離れた場で学ぶのが、OFF JT研修(Off-the-job Training)です。1人の場合もありますが、複数人数での実施も可能です。短期間で総合的・体系的に知識を伝える講義形式が一般的。中途採用メンバーが発言できるように、双方向のコミュニケーション機会を組み入れることもできます。
このうちの一つである「Eラーニング研修」は、インターネットが使用できる環境であれば、研修を受ける中途採用者の都合のよい時間と場所で受講できます。OJT・OFF JTの研修の中で、反復学習・知識の定着を必要とする内容をEラーニングに用いると、効率的・効果的に研修を行えます。
マネージャー以上は別途研修設計を
マネージャーに求められる能力を研究しているハーバード大学のカッツ・ロバート・Lに依ると、下記3つを将来のマネージャーに必要な要素と置いています。
・テクニカルスキル…業務遂行上必要な知識・スキル
・ヒューマン・スキル…人間関係を良好にする
・コンセプチュアル・スキル…問題の本質を見極め、解決する
候補者に求める要件に応じて、「マネジメント研修」や「メンタルヘルス研修」「ロジカルシンキング研修」といった研修も検討すると良いでしょう。
研修期間は1日から数か月まで必要に応じて
中途採用者への研修期間は企業によって異なります。一般的に、OFF JT研修は、数日から1週間ほどかけて実施され、その後に配属先でのOJT研修が始まります。
下の例では、職種に関係なく全社共通知識を学ぶOFF JT研修を最初に実施。専門職には、職種に特化した知識・技術に関わるOFF JTを追加で実施。その後に配属されます。
中堅クラス以上の社員1人を不定期に採用する企業などでは、さらに短い期間で実施をすることもあります。例えば、入社当日にOFF JT研修として2~3時間程度で会社の方向性・業務内容、そして社内ルールを説明します。本社勤務であれば、経営陣や人事担当者から直接説明が可能ですが、他の勤務地では所属先の上司に説明を依頼する、またはeラーニングシステムを利用する方法もあります。その後は、中途採用者が実際の業務を進める中で必要な知識やスキルを自発的に取得していきます。配属先の上司や担当者は、必要に応じてアドバイスをするとよいでしょう。
反対に、長い研修期間を設ける企業もあります。ある程度の専門性が必要な仕事に未経験者を受け入れる企業であれば、長めのOFF JT研修で定形的な業務の知識・スキルを教育。さらに配属先のOJTでも、数か月かける場合もあります。
自社が求める成果を中途採用者が出せるように、入社時点で最低限必要な研修内容をリストアップし、最適な研修方法と期間を考えましょう。
<全国展開をするドラッグストアのOFF JT研修の例> ■総合研修 4日間 総合職・薬剤師職の職種に関係なく、中途採用者共通の内容を集合研修として実施。同グループで働くために必要な知識である、社内ルール・レジ操作・接遇などを学ぶ。その他、一般医薬品を販売するための商品知識習得とシミュレーション実施の研修も行っている。 ▶調剤導入・マスター研修3日▶薬剤師職のみで導入研修1日&マスター研修2日間▶座学とロールプレイングで業務一連の流れの理解▶調剤薬局業務に必要な基礎知識・技術習得 |
中途採用の研修を成功させる3つのポイントとは?
中途採用者研修の前後に必要となる、大事なポイントを確認しておきましょう。
中途採用直後の研修期間だけで、スキルの向上や人員の定着を目指すのではなく、人材教育の一環として研修の前後にわたって計画をすることが大切です。中長期的な視点をもって会社の成長に必要な人材を育てるために、重要な3点を解説します。
【1】目標・課題を具体的に設定する
中途採用者が前職までに積み重ねたキャリアを活かし、自社でスキルや経験を獲得しながら、将来どのようにキャリアを積んでいくのかを計画します。「入社直後」、「入社後●年」など、各段階における到達目標と、そのためにクリアするべき課題を具体的に設定しましょう。
本人の希望を確認しながら決定する事はもちろん、設定した目標・課題は人事部で管理しましょう。職務上の個人目標や組織目標だけでなく、キャリア目標と課題も直属上司や所属部長、さらに経営陣も把握しておけば人事異動の際に便利です。
ひいては、社員の成長を戦略的に会社の中長期成長につなげることも可能になります。
【2】客観的な評価システムを整備・実践する
中途採用者の業務に対する成果や人材としての価値を評価するためには、客観的に測れる人事評価制度が必要です。やる気が高まっている中途採用者が、目標にどれだけ達成しているかを的確・適切に評価できるシステムを採り入れましょう。
以下の代表的な評価方法から、自社の方向性や職務に適した方法を選択します。
- 目標管理評価:個人の目標・組織の目標の達成度で評価する
- 行動評価:社員のあるべき行動基準に沿った行動を評価する
- 360度評価:上司・同僚・部下などが評価する
- 能力評価:知識・技術・姿勢を基に評価する
【3】定期的に面談やフォローアップを行う
四半期毎など頻度を上げて、上司とともに目標に対する進捗確認をし、上司が中途採用者へアドバイスをする機会を設けましょう。ビジネスの変化が早い昨今においては、仕事内容も変化するため、1年前に設定した目標が年度末には意味をなさない場合があります。
定期的な面談をすることで、本人のやる気を把握し、やる気を維持・向上させることができます。さらに、年度末に出る評価内容を採用者本人が理解・納得しやすくなり、次の成長へとつなげやすくなります。
中途採用研修を実施すべき企業とは?
どの企業であっても、何らかの中途採用研修を行うべきと言えますが、特に研修が重要となる企業があります。自社が次のどれかに当てはまる場合は、研修を計画・準備する段階で、追加で気をつけるポイントを知っておきましょう。
中途採用者だけでなく、自社で働いている既存社員への事前説明を行い、全社で理解・受け入れ準備が必要な場合もあります。
中途採用者と社員の能力差が大きい企業
中途採用者の社会人経験の短さや異業種からの採用などが理由で、既存の社員に比べて職務で必要となる経験・スキルが不足している場合には、研修で不足部分を補います。他の中途採用社員に比べても不足部分が多い採用者には、さらに個別で追加対応をする必要もあるでしょう。
社内環境を改善したい企業
中途入社者が自社にもたらす新しい風や異なる見方を期待する場合にも、研修が重要な役割を果たします。人事担当者や経営陣が、中途入社者を迎えることで社内環境を変えたいと考えるのであれば、中途入社者に期待する役割を伝えるだけでは不十分です。
既存の社員にも、自社が目指す新しい方針の説明を行いましょう。中途入社者と既存の社員で生じる摩擦が、ネガティブではなくポジティブになるように準備を進めます。
組織力・一体感を高めたい企業
中途採用者が多い企業や、中途採用を始めたばかりの企業でも研修は重要です。中途採用者ばかりで個がバラバラな方向で仕事を進めたり、既存社員が中途入社員を「外の人」として扱ったりなど、組織の在り方に問題が生じる場合があるからです。結果として、組織が一丸となって成果を上げられない可能性もあります。
会社の理念や全社共通の目標などを中途採用者に伝えるとともに、必要であれば全社員にも改めて伝えます。さらに、配属先での人間関係にも配慮した準備も進めましょう。
まとめ
中途採用者に研修を行う目的は、採用者が「新しい組織の理解」「業務に必要な知識・スキル」「職場環境に慣れる」ことです。採用者のモチベーションを高めて、中途採用研修を計画・準備する重要なポイントを確認しましょう。そして、自社で活躍する人材の教育の1つとして、配属先や経営陣からの理解・支援も得ながら、中途採用研修を成功へと導きましょう。
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