採用戦略の一つである採用ブランディング。採用活動において実施すべきだと聞いてはいても、その概要や導入方法を適切に把握している方はあまり多くはないかもしれません。
しかし実は、既存社員のモチベーションアップをはじめ、「候補者集め」や「採用ミスマッチ」といった企業が抱える採用課題を解決する糸口となる可能性も。
今回は、そんな採用ブランディングについて、採用ブランディングに取り組むべき理由やメリットやデメリット、具体的な導入方法、成功事例などを交え、どのように採用活動へ影響するのかをご紹介します。
採用ブランディングとは?
採用ブランディングに取り組むべき3つの理由
採用ブランディングが必要な背景とは?
優秀人材の獲得競争が激化している
企業価値が問われる時代に
採用ブランディングのメリットとは?
1)応募者が増える
2)社員のモチベーションアップにつながる
3)定着率アップ・ミスマッチ防止につながる
4)結果的に経費削減につながる
採用ブランディングのデメリットとは?
1)即効性に欠ける
2)社員の協力が必要
採用ブランディングの導入方法
ステップ1 自社の魅力を明確にする(ブランド化)
ステップ2 採用ターゲットを具体的に設定する
ステップ3 採用ターゲットに合った情報発信ツールを選択する
採用ブランディングの成功事例4つを紹介
成功事例① 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
成功事例② 日本マクドナルド株式会社
成功事例③ トゥモローゲート株式会社
成功事例④ 株式会社カヤック(面白法人カヤック)
まとめ
売り手市場が続く昨今、東証一部上場企業でも「応募が少ない」と苦戦する時代を迎えています。BtoBビジネスを展開する企業や中小企業であれば、思い当たる企業も多いのではないでしょうか。
採用ブランディングとは、このような「認知」や「理解」に課題を抱える企業に有効な活動で「〇〇社と言えば××」といった具合に、企業イメージを定着させる活動です。自社のビジョンや理念、社風、社員像といった事柄を発信し、共感や信頼を得ることで企業をブランド化していきます。
採用活動においては「この会社は〇〇だから入社したい」といったイメージを持ってもらう効果が期待できるため、採用マッチングの精度にも貢献してくれます。
採用ブランディングに取り組むべき理由を3つご紹介しましょう。
採用活動を有利に進めるためには、まず企業について認知・理解してもらうことが必要です。そしてここに苦戦する企業は多いと思います。この最初のステップに有効なのが採用ブランディングです。特に、TwitterやFacebook、InstagramといったSNSをはじめ、ビジネス系SNSと言われるLinkedInは、情報の拡散性も高いため効果が期待できます。
まず、ターゲットの視界に入ることは採用活動のスタート地点です。
人材獲得は経営の要とも言われており、正しく企業について認知・理解してもらう仕組みを作っておくことは重要な取り組みの一つです。効果が出てくると、自然と応募が発生する状態を作ることも夢ではありません。
もちろん、採用ブランディングは継続的な取り組みが重要ですが、ブラッシュアップしながら企業の魅力を高め続けることで中長期的な資産となります。採用だけでなく、営業活動やマーケティング活動においても有利に働くため、経営視点でも取り組みたい要素と言えるでしょう。
自社が伝えたいビジョンや理念に対する共感や信頼を得るには時間がかります。すぐに結果を求めずに中長期的な視点を持って取り組むことが必要です。継続的に続けていくことで、大手企業と同じ土俵で戦うことができるぐらい採用力をつけ、採用活動を有利に進めることができるようになるのです。
採用ブランディングが注目され始めた背景として、昨今の有効求人倍率の上昇が影響しています。新型コロナウィルスによって直近の有効求人倍率は下がりましたが、2010年から2019年までは右肩上がりで推移してきました。以下で変化する転職市場を解説します。
労働人口の減少や有効求人倍率の上昇によって、優秀人材の獲得競争が激化しています。ここ数十年で転職に対するハードルが低くなったことにより、以前よりも気軽に転職を希望する求職者も増えてきました。
最近は新型コロナウィルスによる失職の影響を受け、応募基準に満たない場合でも応募する層が増えています。企業側は、採用基準に満たない候補者の対応に追われ、自社が本来求める人材にアプローチできない状況に。これまで以上に、ターゲット人材へ効率的にアプローチすることが急務と言えるでしょう。
転職市場の活性化に伴って、近年、採用手法も多様化しています。
これまでの求人サイトに求人広告を出して求職者から応募を募る形式から、スカウトやヘッドハンティングといった企業側から求職者にアプローチをかける攻めの採用スタイルに変化しつつあります。
さらに近年は、Instagram(インスタグラム)やFacebook(フェイスブック)といったソーシャルメディアを活用した「ソーシャルリクルーティング」や、社員の人的ネットワークを用いる「リファラル採用」など、新しい採用手法も一般的に。
こういった攻めの採用において、求職者から選ばれる企業となるためには、企業価値を高めることは必然だと言えます。
それでは、採用ブランディングによって得られるメリットとは具体的にどんなものでしょうか?この章では、採用活動へ直結するメリットや副次的メリットについて解説いたします。
採用ブランディングの効果として、はじめに現れるのが「応募者の増加」でしょう。採用ブランディングによって企業イメージを向上させ、「この会社で働きたい」というファン層を増やすことができます。結果的に候補者を集めることにつながり、採用効率も上がります。
冒頭でも申し上げましたが、一企業として自社の魅力を言語化し、広報することは採用活動だけでなく、働く社員のモチベーションを高めることにもつながります。
最近は、求職者だけでなく労働者も会社を選ぶ時代です。社会への貢献度、自己成長の可能性、自社で働くことの意義……など、さまざまな観点で自社についての魅力を洗い出しておきましょう。
採用担当者や社員が自社について自信を持って語ることによって、その会社に入りたいと思う人がおのずと増えることは間違いありません。
採用ブランディングは応募者を増やすだけでなく、人材の定着やミスマッチ防止にも効果的です。自社で働く価値やワークスタイルを発信することで、候補者は具体的な働き方をイメージできます。入社前から自社の理解を深めることで、入社後にギャップが生じる可能性は低くなり、ミスマッチを防ぐことができます。
また、採用ブランディングは既存社員のモチベーションを上げることにもつながります。自社のブランド化により、会社に誇りを持つことができ、人材の定着率も高くなる傾向があります。
求人サービスへ申し込みをされている企業であれば掲載料や成果報酬料が、人材紹介サービスであれば紹介手数料がかかると思います。
もちろんこういった費用が全くかからなくなる、というわけではありませんが、採用ブランディングによって企業としての知名度が上がることで、結果的に広告費用がかからなくなるということは大いにあり得ます。
最近は、ソーシャルリクルーティングやダイレクトリクルーティングなど、コストをかけない採用手法が主流となってきていますので、結果的に大幅な経費削減につながる可能性があるでしょう。
採用ブランディングによるデメリットも押さえておきましょう。
企業について認知・理解してもらうためには、どうしても時間や工数がかかるため即効性に欠けるというデメリットが挙げられます。
例えば、TwitterやFacebookを活用した情報発信もその一つです。フォロワー数が一定数以上付くのには継続的かつ中長期的な取り組みが必要ですし、情報発信する工数もかかります。また、採用ホームページ等を活用する場合は、ある程度費用がかかるだけでなく更新頻度を担保する必要もあるでしょう。
こういった観点から、費用や工数、時間をかける覚悟が必要だと言えます。
採用ブランディングは採用担当者一人で成し得ることは、なかなか難しいものです。
もちろん、採用担当者が魅力的で「人事担当者に魅力を感じた」と入社を決める人も少数はいるでしょう。しかし、企業のブランディングと同義でもある採用ブランディングにおいては、社員一人ひとりの魅力や事業内容、社風に至るまで、一つひとつ丁寧に磨き伝え広げていく努力が必要になります。そのため、社員や経営層の協力を得ながら進めていく必要があると心得ましょう。
採用ブランディングを実践するためには、3つのステップがあります。それは、「何を」、「誰に」、「どのように」伝えるかを明確にすることです。この3つの軸がブレると効果が薄くなってしまいます。以下に、3つのステップについて解説します。
自社をブランド化するためには、自社の魅力を明確にする必要があります。ブランディングする際は、人事担当者だけでなく、経営者や現場社員などにもヒアリングをおこない、多角的な視点を取り入れましょう。
内定者や社員の家族など、外から見た自社の魅力を語ってもらえる人に話を聞くと、社内では分からなかった魅力が出てくるかもしれません。
採用活動を行うにあたり、大半の企業が求める人材像を設定していると思います。発信する内容が決まったら、どんな人に伝えたいのかを明確にしましょう。
ただし、人事と現場で十分な人材要件の擦り合わせができておらず、入社後にミスマッチが起こることも少なくありません。配属先の現場と丁寧に話し合い、求める人材像を明確にして適切なターゲットにリーチしましょう。
採用ターゲットを具体的に設定したら、採用ターゲットに合った情報発信ツールを選択しましょう。
採用ブランディングを検討される企業がまず用意したいのが、企業ホームページです。
ITリテラシーが向上した求職者の中には、企業ホームページ以外の口コミや他社サイトの情報を参考に転職意向を決める人も少なくありません。まずは自社が何者なのかを伝えるツールとして、企業ホームページを準備するところからスタートしましょう。
近年では、ソーシャルメディア≒SNSを使った採用活動が増えています。総務省情報通信政策研究所の「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、全年代の主なソーシャルメディア系サービス/アプリの利用率ではLINEが最も高く82.3%、次いでTwitter:37.3%、Instagram:35.5%、Facebook:32.8%という結果に。
10~20代の若年層だけでなく、30代の利用率も高まっていることから、SNSは採用領域でも十分訴求可能な媒体だと言えるでしょう。
このようなSNS採用(ソーシャルリクルーティング)を導入するメリットやデメリットをはじめ、運用方針や担当者を決めるといった具体的な導入方法、他社の活用事例については以下の記事でご紹介しています。SNS採用を検討する際のご参考になさってください。
昨今、注目度が高まっているのがビジネス系SNSです。LinkedIn(リンクトイン)においては、ITベンチャーや外資系、優秀な学生層が利用し始めています。
LinkedInでフォロワー数を増やすコツや心がけたいポイントについては、LinkedInの運用コンサルタントを手掛ける株式会社アースメディアの松本淳社長に詳しくインタビューした以下の記事をご参照下さい。
新型コロナウイルスの流行を背景に会社説明会をオンラインへと移行した企業は少なくないでしょう。若者の文字離れが進む中、このようなオンラインでの企業セミナー≒ウェビナーの開催も、採用ブランディングにおいて有効な一手と言えるでしょう。
マイクやカメラを用意する必要があるタイプもありますが、Zoomなどのツールを活用すればすぐに導入が可能です。但し、導入において有料版と無料版で違いがあります。それぞれの特性やオススメのWEB説明会ツールについては、以下の記事をご確認下さい。
関連記事:【徹底解説】WEB説明会とは|実施方法や注意点、オススメツール |
このように自社にとって最適な情報発信ツールを選択することは非常に重要です。この他にも、採用パンフレットやポスターなど馴染みある採用ツールの良さもあります。PUSH型なのかPULL型なのかといった形式の違いやそれぞれのツールを活用した成功事例を以下記事でご紹介していますので、こちらも併せてご確認ください。
関連記事:採用ツール9種類を紹介|効果的な活用方法、目的や必要性 |
採用ブランディングのメリットや取り組む方法をお伝えしてきました。実際に採用ブランディングを成功させている企業はどのような取り組みをしているのでしょうか。
成功事例を3つご紹介します。
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)では、採用ブランディングとして「フルスイング」というオウンドメディアで「人」と「働き方」にフォーカスした情報を発信しています。多様なタグでカテゴリー分けされており、求職者が知りたい情報をすぐに探せるようになっています。
方 法 |
オウンドメディアで活躍している社員やDeNAならではノウハウなどを発信 |
特 徴 | 社員の対談やインタビュー、事例紹介が多いので働くイメージが湧きやすい |
効 果 | 自社のブランディングが明確になった結果、リファラル採用が活発に |
日本マクドナルド株式会社(以下、マクドナルド)は、自社の採用情報サイトにて、マクドナルドの企業文化やキャリアパスなどを丁寧に発信しています。
また、発信する前の事前準備として、「EVP(Employee Value Proposition:従業員の価値提案)」をしっかりとおこない、職場の価値をきちんと定義して魅力を伝えるようにしています。
方 法 |
自社の採用情報サイトでマクドナルドのビジネスとキャリアなどについて発信 |
特 徴 |
職場の価値を定義づけして、求職者のインサイトと重なるように発信内容を設計 |
効 果 | アルバイトを含めて年間7万人の採用を実現 |
トゥモローゲート株式会社は、採用ブランディングを事業とし、他社のブランディングを支援している会社です。自社のブランディングにも力をいれており、「ようこそ。ブラックな企業へ。」という奇抜なキャッチコピーで、多く求職者の関心を引き寄せています。
自社の採用情報サイトをブラック企業であるかのように見せ、オフィスも黒で統一するなど徹底的なブランド化をおこなっています。
方 法 |
オフィスからWEBメディアまで視覚的なデザインは黒で統一 |
特 徴 |
一見奇抜なキャッチコピーで興味関心を引き、求職者に強いインパクトを与える |
効 果 |
自社の理念やビジョンを段階的に伝えていき、自社にマッチする優秀な人材を獲得 |
面白法人として有名な株式会社カヤック(以下、カヤック)。「つくる人を増やす」を経営理念に、SNS・Webプロモーションやイベント企画、ゲーム関連事業、飲食店、葬儀事業までを手掛ける異色な会社です。
カヤックでは、何をするかよりも「誰とはたらくか」を重視しているというメッセージ通り、人材採用に非常に力を入れています。「面白法人」を体現すべく、誰もが楽しめるユニークな採用キャンペーンを実施しています。
方 法 |
誰もが「え!?」と思うようなインパクト大でユニークな採用を展開 |
特 徴 |
企業名や経営理念に基づいたオリジナルな採用手法、「バズる」を武器にした採用活動 |
効 果 |
会社の広報にもつながり母集団形成に成功、安定的なターゲット人材の確保 |
今回は、採用ブランディングの必要性を中心に、導入方法や成功事例を紹介しました。自社の存在意義や魅力について、しっかりと言語化することは非常に大切な工程です。また、求める人材像を策定して、応募してほしいターゲットに訴求していく。その結果、自社について十分に理解する人材を採用し、既存社員のエンゲージメントの向上にもつなげることができるのです。
採用ブランディングは、業種や規模を問わずどの企業も始められる施策です。あまり難しく考えずに、自社の発信を始めてみてください。少しずつ効果を実感することができるでしょう。
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