大手企業や有名企業なら、求人サイトで募集をかけるだけで多数の応募が集まりますが、中小企業ではそうはいきません。採用のための予算も潤沢にあるわけではないので、削れる無駄は削りたいところ。
しかし、そもそも中途採用においてどのようなコストがかかっているか、どのような無駄が生じているか、考えたことはあるでしょうか? 効率的に人材を採用するために、採用コストについて考えてみましょう。
人材採用のコストは、大きく「外部コスト」と「内部コスト」に分けられます。
「外部コスト」は、求人サイト・求人誌の広告費や人材紹介会社への手数料など、社外へ支払われる費用です。中途採用向けの合同説明会への出展費用、採用管理システムの利用料なども同様に外部コストと見なされます。
もう一方の「内部コスト」は、採用にかけた時間分の人件費を指します。書類選考や面接、求人サイトを使ったスカウトメール送信などはもちろん、年間採用計画の会議、現場が採用したい人物像の聞き取り調査などにかかった時間や人件費も、すべて内部コストです。もちろん、採用担当者だけでなく、採用業務に関係した社員すべての人件費を含みます。
外部コストはかかった費用を合算することで、比較的簡単に算出できますが、内部コストの算出はそう簡単にはいきません。採用プロセスを洗い出し、そこに関わる各社員の人件費を時給換算するなどして数値化していく必要があるでしょう。
事前に数値化しておけば、「このポジションの採用は重要だから、社長にも面接時間を割いてもらうべき」「このポジションの採用なら面接1回で大丈夫」といった判断もしやすくなります。ひいては、コスト意識に基づいた採用も行いやすくなるでしょう。
それでは、どのような場合に無駄な採用コストがかかるのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。
まずは、求人広告費にまつわる無駄です。特定の求人サイトや求人誌に広告を出し続け、掲載費用だけがかかってあまり収穫がない、という状態になってはいないでしょうか。もしかすると、利用している媒体が自社の求人とマッチしていないのかもしれません。
最近は、ユーザーの属性や募集職種に特化した求人サイトもあります。求人広告費に対して採用できる数が少ないと感じたら、別の媒体への掲載を検討するといいでしょう。
なお、大手求人サイトでの広告掲載にかかる金額はおおよそ1か月で20万~30万円程度。株式会社マイナビの「転職中途採用状況調査」(2018年)によると、営業職一人当たりの採用にかける平均求人広告費は56.8万円、ITエンジニアは79.7万円となっています。検討する際のひとつの目安になるでしょう。
また、外部コストを抑えるために無理に採用業務を内製化しようとすると、今度は内部コストが無駄になりがちです。
例えば、採用ホームページに使う写真1枚にしても、プロのカメラマンが撮影した写真と、人事が片手間に撮影した写真とでは、クオリティーに雲泥の差が出ます。同じく、会社の紹介文や求人募集内容の説明文にしても、専門ライターが書いた文章と、不慣れな人事が書いた文章では、読みやすさ・伝わりやすさが段違いです。内製化すれば一見安価で済むように思えますが、応募・採用にはつながりにくく、結局は「安物買いの銭失い」のような状態になってしまうのです。
こちらの記事では、そんな求人制作において押さえるべきポイントをはじめ、見せ方・伝え方のコツ、効果的な求人広告にするための作成手順を5ステップで解説しています。制作工数がイメージしやすいと思いますので、ぜひご覧ください。
無視されがちですが、「採用することで発生する無駄」もあります。例えば、人材採用に焦るあまり、スキルに乏しい人材を採用してしまうと、後々に研修やOJTなどで余計な時間・人員を割かなければなりません。
同様に「とにかく誰でもいいから」と、社風やカルチャーに合わない人材を採用すれば、早期退職されてしまう可能性やトラブルが発生するリスクがあります。後先を考えない面接や採用を続けると、外部コスト・内部コストがどんどん無駄になっていくと肝に銘じるべきでしょう。
このように、「人さえいれば……」と求める条件を大きく緩和することは非常に危険です。育成に工数を取られて既存社員が疲弊し、最悪退職してしまった、なんてことにも繋がりかねません。また、求職者と採用担当者の間で「即戦力」に対するイメージが異なることも、採用ミスマッチの原因とされています。以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
中小企業にとって、採用にかけられる予算は貴重です。こうした採用コストの無駄は極力省き、効率的に採用活動を行っていきましょう。
また、「人材を採用できていない」ということは、採用できていれば得られたはずだった営業力や開発力が得られず、「ビジネス上の機会損失」も発生しているということです。将来的に、より大きな損失を生んでしまうことも考えられるでしょう。少しでも早く理想の人材を出会うべく、最適解を求めて採用戦略を練っていくことが重要です。
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