苦労して採用したのに「即戦力を期待した人材が活躍してくれない」「早期離職してしまった」とお悩みの採用担当者の方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、候補者の可能性を測る方法の一つとして有効な「リファレンスチェック」の実施メリット、具体的な実施手順や質問方法、企業として注意しておきたいポイントを企業視点と求職者視点でご紹介いたします。
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックの具体的な実施手順
1)求職者自らがリファレンス先を提示
2)採用企業がリファレンス先を探す
リファレンスチェックの質問項目
勤務実績や勤務態度
業務スキル
人柄に関する内容
リファレンスチェックを実施する目的・メリット
【1】信頼性のある情報を確保する
【2】ミスマッチを防ぎ、早期退職のリスクを軽減
【3】多角的視点で求職者を判断できる
【4】休職など申告し辛い内容について気づくことができる
リファレンスチェックを実施する際の注意ポイント
企業が知っておきたい注意ポイント
求職者が知っておきたい注意ポイント
よくあるQ&A
【企業側】
【求職者側】
まとめ
リファレンスチェックとは身元照会を意図しており、中途採用の選考過程において、求職者の勤務状況や人物像をはじめ、スキルや経験について確認できる第三者(現職または前職の上司等)に問い合わせる確認作業を指します。
海外企業や外資系企業では当たり前のようにリファレンスチェックを実施しており、近年、日本でも幹部採用や採用ミスマッチを防止する目的で実施する企業が増加。仮に求職者が在籍中で退職する意思を伝えていない場合等は、過去勤めていた企業などの協力要請を行い実施します。
このリファレンスは英語のrefarence(参照/紹介)であり、バックグラウンドチェックの一つです。
それぞれの確認項目の違いは以下の通りです。
【バックグラウンドチェック】 ▶確認目的:会社に不利益を与えるような経歴を持っていないかどうかを確認する ・犯罪歴 ・訴訟歴 ・反社チェック ・学歴 ・職歴 ・インターネットメディアの調査 |
【リファレンスチェック】 |
なお、リファレンスチェックを実施するためには、事前に求職者に対して実施許可を得る必要があるため注意しましょう。
応募書類と事実に相違がないかを確認する「前職調査」とリファレンスチェックはほぼ同義ですが、前職調査は調査する企業側が確認先を決定するのに対して、リファレンスチェックは求職者自身が確認先を提示するという大きな違いがあります。
一般的なリファレンスチェックにおいては、求職者自身が問い合わせ先である「レフリー」の提示及びリファレンスチェックの協力依頼を行い、承諾を得た上で企業はレフリーに対して確認を行うことになります。
現場担当者や採用担当者の無駄な工数を削減することを目的とするのであれば、書類選考などの早期段階でリファレンスチェックを実施できるとベストですが、一般的には内定通知書を出す前に実施されると言われています。
採用コストをかけられないといった企業であれば、応募先企業の採用担当者が。人材紹介サービス経由であれば人材紹介エージェントが実施する形を採ります。
最近はリファレンスチェックに工数を割くことができないといった企業向けに、リファレンスチェックの代行サービスも登場していますので、求職者数が多い場合や工数が割けないといった場合は検討されると良いでしょう。
企業がリファレンスチェックを行う場合、まずは求職者に同意を得る必要があります。その上で、下記のような推薦者(レフリー)へリファレンスチェックを行いましょう。
リファレンスチェックを実施する際の具体的な進め方や手順をご紹介しましょう。流れは下図の通りです。図表にもある通り、リファレンスチェックは大きく分けて、2つの実施方法があります。
大前提、いずれのパターンもまずは求職者からリファレンスチェックの実施許可を得る必要があります。求職者が履歴書等でリファレンス先を自ら提示する場合もあれば、企業側から求職者にリファレンスチェックの許可を得て実施するパターンもあります。
この場合、2名以上のリファレンス実施先を推薦してもらい、企業名、氏名、連絡先などの情報を提出してもらった上で、実施する流れとなります。
こちらもまずは求職者に対してリファレンスチェック実施の許可を得た上で、実施します。但し、こちらの方法では実施先企業に対して求職者から事前説明が入りません。企業によっては「個人情報を勝手に提供できない」という理由で協力してもらえない可能性も考えられます。
【図解】2つの違い
依頼主 | 実施先の提供 | リファレンスチェックの実施者 |
求職者 | 求職者 | 採用企業 or 委託先企業 |
採用企業 | 採用企業で探す |
これらのリファレンスチェックを行う際には、質問事項や実施後のレポート作成といった手間もかかります。様々な採用活動と併行して行うのが厳しいという場合には、リファレンスチェックを一挙に引き受けてくれる委託先企業もあるので、工数をかけずに実施したい場合は検討されると良いかと思います。
リファレンスチェックは、そもそもの趣旨である「求職者の実態」を知ることから、以下3カテゴリのような内容を確認すると良いです。最初は当たり障りのない項目から質問し、徐々に切り込んでいくと相手も答えやすいでしょう。
~中途採用で確認したい3項目~
まずは書類や面接の内容に虚偽がないかを確認します。
実際、一緒に働いてみないと分からない部分について確認を行い、採用後のミスマッチを防ぎます。
書類や面接からは分からない、求職者の人物像についてより深く理解します。
履歴書や職務経歴書を確認することで、求職者の情報は確認できるように思われますが、リファレンスチェックを実施する目的やメリットをいま一度見ておきましょう。
求職者自らが提出した書類や面接で聞いた話だけではウソかどうかは判断できません。リファレンスチェックは、テストや適性検査のなりすましに依るデータの改ざんや経歴詐称といったリスク回避や、経歴・身元照会に役立ちます。
また、求職者が話す内容に対する信頼性を高めることで、企業と求職者双方の関係性も良好に。
求職者視点から見ても、自分自身を雇うことに依るメリットを第三者に証明してもらうというメリットがあります。
リクナビNEXTの 「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10」 によると、退職理由の上位に「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らない」「労働環境・人間関係に不満があった」「仕事内容が面白くない」といった内容がランクインしています。一般的によく聞かれる内容であるものの、実際に働いてみないと知り得ない企業との相性とも言えます。
リファレンスチェックでは、こういった求職者の人間関係や価値観などをあらかじめ知ることによって、自社とのマッチ度を測り、入社後のアンマッチや短期間での退職を防ぐことが可能です。
履歴書や職務経歴書、求職者自身のストーリーを基軸に判断を行わざるを得ない一般的な面接。緊張などから十分に自分自身をアピールしきれなかった、という人もいる通り、面接だけでは分からない事があります。
リファレンスチェックでは、実際に一緒に働いていた人に依る事実なので、新しい求職者の魅力を発見することに繋がることもあるでしょう。
転職活動において約8割が嘘をついているという米マサチューセッツ大学の調査データもある通り、求職者は自分にとってメリットとなり得る内容だけアピールします。そのため、メンタル不調による休職やトラブルといった事柄を自己申告する候補者はほぼいないと言えるでしょう。
こういった求職者からの申告で得難い情報を確認することができる点は、リファレンスチェックの大きなメリットと言えるでしょう。
実施する企業側として注意すべき点は何でしょうか。個人情報保護法などの法律面や●●といった観点で注意すべき点をご紹介いたします。
個人情報保護法 第二十三条に「本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」という規定があります。
この観点により、リファレンスチェックの実施を求職者から拒否された場合、実施することはできません。当たり前ですが、調査会社を使って無許可に調べる等も違法ですので注意しましょう。
また、FacebookやTwitterといったSNS経由で候補者の知人にコンタクトし、情報を引き出すといった行為も、同じく個人情報保護法やプライバシーの侵害等に該当する可能性があるので注意しましょう。
内定通知書及び内定承諾書の取り交わしが行われている場合、取り消しは出来ないと考えましょう。内定通知書は民法において、労働契約とみなされます。正当な理由なく解除してしまうと、権利の濫用として無効になる(※2)としています。
但し、内々定の場合や学生が大学を卒業できなかった……といった正当な理由がある場合、解除することは可能です。
(※2)厚生労働省|「6-1 「解雇」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性」によると、使用者の解雇権の行使は、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になるとしています(解雇権濫用法理) |
そもそもリファレンスチェックは求職者の事前承諾を得ることが必須となるため、情報が開示されることについては法律に抵触していません。
但し、下記の様な項目は求職者の不利益になり得る項目のため、質問することはNGとされていますので、覚えておきましょう。
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応募先企業から「リファレンスチェックを行いたい」と言われた場合、求職者はどのような点に注意すべきなのでしょうか。ポイントを押さえましょう。
当たり前ですが、ともすればリファレンスチェックは採用可否に関わるものです。そのため、企業側から「リファレンス先を提示して欲しい」と依頼を受けた場合は、自分を陥れたり悪い印象を持っていたりしない、信頼できる人へ依頼するようにしましょう。
内定通知書や契約書を取り交わしている場合、内定の取り消しを行うのは民法で禁じられています。しかし、書類の取り交わしを行っていない段階であれば、大いに取り消されるリスクはあると心得ましょう。
リファレンス先である推薦者の中には、初めてリファレンスチェックに対応する人もいるでしょう。また、忙しい時間を割いて、あなたの前職での働きぶりや勤怠について回答してくれます。
このような点を考慮し、推薦者へお礼を伝えることはもちろん、事前に軽く打ち合わせも行っておくとよりスムーズです。連絡が来る企業や担当者についての概要や想定質問なども併せて伝えておくと、推薦者の方に失礼がないため良いでしょう。
中途採用において、採用企業と求職者とのミスマッチを減らすために行われるリファレンスチェック。
求職者に許可を得ずに勝手に実施してしまうと、個人情報保護法(※1)に抵触し違法な対応だと罰せられることもあります。ここでは、そんな注意点を含め、人事担当者から頂いた質問と対応方法についてご紹介します。
(※1)個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」にに依ると、第三者が個人関連情報を取得する際は「第三者が個人関連情報取扱事業者から個人関連情報の提供を受けて本人が識別される個人データとして取得することを認める旨の当該本人の同意が得られていること。」と規定されています。 |
A:違法ではありません。個人情報保護法の観点から気になる採用担当者の方も多いようですが、求職者本人から同意を得ていれば、なんの違法性も問題もありませんのでご安心下さい。
A:基本的には、直近1社に対して実施する企業がほとんどだと思います。就業中の方であれば現職1社に対して。離職中の方であれば、前職の会社に対して実施します。学歴の確認までを行うケースは稀ですが、必要だと感じる場合は行っても良いでしょう。
A:リファレンスチェックを強制することは出来ないため、下記の様な理由で断られるースも想定されます。どうしても出来ないという求職者も一定数いるという事を認識し、複数回転職している方であれば前職、前々職など過去に働いていた職場に依頼すると良いでしょう。
求職者本人に拒否される | ・職歴詐称 ・退職時のトラブル隠し |
依頼先(推薦者)から拒否される | ・求職者に退職して欲しくない ・関係性が悪い ・時間がない ・関わりたくない |
依頼先(企業)から拒否される | ・リファレンスチェックを実施して良い事を知らない、 ・時間がない ・求職者と同意を得ておらず個人情報流出に加担する事 を恐れている ・退職に不満を感じており心理的に拒否している |
A: 昨今、「ソー活」と言われるほど、SNS等を活用した就職活動が当たり前になってきています。ご質問の通り、求職者本人や頼まれた知り合いが推薦者になりすましして回答するというケースもゼロではありません。そのため、推薦者として提示された方の身元確認もしっかりと行う事を忘れてはなりません。
「母集団形成9種|ソーシャルリクルーティング等、最新手法の活用法」では、候補者を集める最新手法や母集団形成を成功させる3つの秘訣をご紹介しています。こちらもご参考にどうぞ。
A:推薦者(レフリー)に目星を付けて依頼したところ「忙しいから」と断られるケースも少なくありません。このような事も想定し、事前に何人か推薦者を挙げておくと良いでしょう。一人ダメだったら次へ……という具合で、めげずに依頼しましょう。
どうしても見つからないという場合は、同僚や大学の教授などに依頼する手もあります。
A:個人情報保護法の観点から、求職者には拒否する権利があります。但し、契約書等の取り交わしを行っていない状況において拒否した場合、「経歴内容に虚偽があるのではないか?」「何か隠したい事があるのではないか……」といった疑念を持たれてしまう可能性も否めません。可能な限り応じるようにしましょう。
これまでは外資系企業を中心に実施されてきたリファレンスチェック。採用後のミスマッチを防ぎ、多角的視点で求職者を判断できることから日本企業での導入も少しずつ増えてきています。本人の同意があれば実施できますので、実施におけるリスクや注意点を抑えつつ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
【完全保存版】ストレス耐性、地頭、コミュニケーション力……
こういった多くの中途採用を行う企業が人材に対して求める能力・素質を見極める上で 使える本気の質問77個をまとめました。 採用ミスマッチ防止や即戦力人材の採用にお役立てください。 |
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