最近耳にすることが増えてきた「アンコンシャス・バイアス」という言葉。言葉の意味もさることながら、その影響範囲についてまでご存知の方はあまり多くないのではないでしょうか。
この記事では、アンコンシャス・バイアスの種類や事例をはじめ、及ぼす影響や対策方法、対策によるメリットまでをご紹介します。
アンコンシャス・バイアスとは?
いま注目される理由
アンコンシャス・バイアスの原因
アンコンシャス・バイアスの種類と事例
第一印象に左右される「確証バイアス」
一部の特徴にひっぱられてしまう「ハロー効果」
自分と似た人を高く評価してしまう「類似性バイアス」
集団において多数派の意見に合わせてしまう「集団同調性バイアス」
固定概念による「ステレオタイプバイアス」
性別への敵対心を持つ「敵対的性差別」「善意的性差別」
企業成長にも波及?アンコンシャス・バイアスが及ぼす影響
無意識に打ち勝つ!ステップ毎の対策方法
STEP1)無意識から自覚へ
STEP2)トレーニングを行う
STEP3)正しい評価基準を整える
自社での実施が難しい場合は……
対策によるメリット
まとめ
アンコンシャス・バイアス(unconcious bias)とは、無意識の思い込みや偏見を指します。偏ったものの見方や考え方のことを言い、自分自身の知識・経験等に基づき、人の属性などからその人の事を決めつけてしまいます。
アンコンシャス・バイアスの例はさまざまですが、下記のようなものが代表例として挙げられます。
<アンコンシャス・バイアスの例>
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昨今、日本でも浸透してきた「ダイバーシティ(多様性)」。性別や国籍、年齢、人種などに関わらず、多様な人材を認めるという概念ですが、日本ではまだまだ浸透していないことが分かっています。
世界経済フォーラム(WEF)が発表している2021年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」によると、世界153カ国の中で日本は120位とG7の中でも最下位という結果に。
米Google社やFacebook社が従業員から採用における人種や性別の偏りを指摘されたこと等もあり、日本企業でも無意識の偏見「アンコンシャス・バイアス」への対策がとられるようになりました。
【1】エゴ
自我・自尊心を意味するエゴ。ストレス回避や自分を守ろうとする自己防衛心が働くことによって、アンコンシャス・バイアスの阻害要因になり得ます。「誰でも出来る事だと思っていた」「普通に考えたら……」といった考え方がこれに該当します。
【2】習慣や慣習
当たり前に行われてきた行動や考え方が実は多様性を阻む要因になっていたということは往々にしてあります。会社組織においては、当然だと思っていたルールや慣行などがこれに該当します。「お茶くみは女子社員の仕事」「残業している人がえらい」等、時代遅れな慣行・慣習は要因は社員のストレスになり得ます。
【3】感情スイッチ
感情スイッチとは、その人特有のこだわりや感じ方のことです。具体的には「劣等コンプレックス」や「とらわれやこだわり」が該当します。自分の琴線に触れるような事柄に遭遇した際に、自己防衛反応として冷静に物事が判断できなくなったり攻撃的になることが特徴です。
アンコンシャス・バイアスは、これまでの経験や習慣、育った環境・文化といったさまざまな要素をもとに形成されます。具体的な種類や事例を見てみましょう。
「確証バイアス」とは、自分の意見や価値観の正しさを証明する情報だけを無意識的に集めてしまい、反証となる情報は無視または排除しようとする傾向を指します。
この「確証バイアス」の傾向が強まると、物事を客観的・多面的に捉えられなくなり、自分の見たいようにしか世界が見られなくなってしまいます。面接の場で、身なりや姿勢など第一印象で優秀そうだと感じると、無意識にそれを補強する材料ばかりを集め、反対の印象を持たせることには触れないことがあります。いざ採用してみたら、面接時の印象ほど実務レベルが高くなかった、というケースは確証バイアスのせいかもしれません。
<事例> |
「ハロー効果」とは、ある対象を評価するときに、目立つ特徴に引きずられて、他の特徴に対して歪んだ見方をしてしまう傾向のことです。目立つ特徴が高評価の場合は「ポジティブハロー効果」、逆に低評価の場合は「ネガティブハロー効果」と呼びます。
例えば、候補者の出身大学によって、「高学歴だから仕事もできるだろう」「聞いたことのない大学だから、あまり期待できないかもしれない」と、色眼鏡をかけてしまうことがあります。本来の対象である求職者本人ではなく、他の要素に評価が引きずられるのは採用シーンでは避けたい事態です。
<事例> |
「類似性バイアス」とは、自分と似ている人を高く評価する傾向のことです。求職者が自分と同じ学校・企業・出身地など、面接官と共通点があった場合、好感を覚えて良い評価をつけることを指します。しかし、共通点があるからといって、その候補者が自社に合うか、成果を上げられるかは分かりません。共感と評価は別物であると認識しておきましょう。
<事例> |
集団において、多数派や声の大きい人に意見や考えを合わせてしまうのが「集団同調性バイアス」です。社内でハラスメント等が横行していても誰も意見を言わなかったり、会議において反対意見が出なかったりといった事柄がこれに該当します。
<事例> |
ある特定のグループや性別といった属性に対し、自分なりの固定概念を持つことによる偏見です。
<事例> |
対象となる性別に嫌悪感や敵対心を持ち、ネガティブな態度を示すことを「敵対的性差別」と呼びます。これと似たようなものに「善意的性差別」があり、好意的態度に見えるけれども実は巧妙な差別を指します。
<事例> |
アンコンシャス・バイアスにはさまざまな種類があり、色々なシーンで影響を与えることはご理解いただけたかと思います。それでは、具体的にどういった影響を与えるのでしょうか?企業活動に特化してご紹介してまいります。
採用 |
・面接における不当評価 |
組織構築 |
・差別的な人材配置 |
職場環境 |
・人材の同一化 |
会社 |
・企業イメージの低下 |
アンコンシャス・バイアスは、採用、人材配置、昇進、評価、育成にいたるまで多岐にわたって影響を及ぼします。特に、上層部におけるアンコンシャス・バイアスは、重要な意思決定にも関わるため、下手すると企業成長にも悪影響を及ぼす可能性を秘めているのです。ぜひ放置することなく、企業として積極的に改善に努めたいところです。
それでは具体的にどんな対策方法があるのでしょうか?ステップごとにご紹介していきます。
まず行わなければならないのは、自分自身の無意識に存在する偏見を認識するということ。「無意識を変えるなんて難しいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、人の脳は成功体験によるポジティブな経験により、既存のネガティブな印象を塗り替えることが可能なようにできています。
この脳の特性を活かし、あえて多様性豊かなメンバーを部署やチーム、プロジェクトにアサインすることで、良いイメージを構築しアンコンシャス・バイアスを乗り越えるという経験を積んでいきます。
大手IT企業のGoogleでは、経営陣からの後押しもあり「Unconscious Bias @ Work」という研修を自社で行っています。人事部が主導で実施されており、全社員が参加できるそうです。実際、このワークショップによってGoogle社内ではアンコンシャス・バイアスについての会話が活発になり、具体的な取り組みについて情報交換されるようになったという結果も出ています。
Googleがこの研修に関する資料をオープンにしていますので、ぜひ自社でのトレーニングにお役立ていただければと思います。
参照ページ:無意識の偏見に意識を向ける|Google re:Work - ガイド |
(画像引用元:Google「re:Work -Google で行われている面接の評価基準例」)
最後に重要な要素となるのが、一貫性のある要件、基準による採用や運営体制を構築することです。例えば採用シーンであれば、履歴書から性別、学歴、写真といった職務に関係ない箇所を隠した状態で判定を行う「ブラインド採用」を行う。面接は質問項目を統一し、評価する基準はどこなのか?を取り決めた「構造化面接」を行う……といった事が挙げられます。
Googleでは以下の様な項目を予め取り決めているそうです。
ぜひ、自社の採用においてもご参考ください。
「さまざまなやり方がある事は理解したが、自社で実施するのは難しそう」だという場合であれば、外部へ依頼するのも一つです。3時間ほどの比較的短い時間で実施している講習もあるので、自社のニーズに合わせて検討されると良いでしょう。
アンコンシャス・バイアスに依る誤った判断を防ぐため、前職の上司や同僚に当時の勤務態度や実績などを確認する「リファレンスチェック」も有効な方法の一つです。一緒に働いた第三者視点のため、信頼性の高い情報を得ることができるでしょう。「自社で工数が割けない」といった場合も、比較的安価に代行業者へ委託ができます。以下記事でご紹介していますので、併せてご参照ください。
関連記事:リファレンスチェックとは?質問例や注意点、オススメサービス3選 |
但し、アンコンシャス・バイアスは長期にわたり取り組むべき課題でもあります。長い目で見た時にどちらが最適かどうかはしっかり検討項目に入れるべきでしょう。
労働人口の減少や転職者の売り手市場が続いている昨今、人材獲得に苦労される企業は少なくないと思います。こういった状況下だからこそ、企業成長に影響を与えかねないアンコンシャス・バイアス対策を行い、多様性ある人材採用や正当な評価ができる組織構築をめざしていただきたいところです。
それでは、アンコンシャス・バイアスを対策することによって、具体的にどんなメリットが得られるのでしょうか?ご説明しましょう。
前段でもご紹介しましたが、予め評価に関するマニュアルを決めることにより、一定水準の採用や評価を行うことが可能となります。正しい評価を行うことは、人材配置を正しく行い、正しい決断が下せる組織を作ることにもつながります。
アンコンシャス・バイアスによる影響は組織だけでなく、個人にも及びます。例えば、管理職などの上層部の方は注意が必要です。特に、権力者が何気なく発言する言葉や行動は立場の弱い社員のモチベーションを下げ、大きく影響を当たえる可能性があります。こういったことを意識させることにより、社員がイキイキと働く環境づくりにつながるのです。
アンコンシャス・バイアスへの対策を取ることは、多様性の実現や働きやすい職場環境の構築を実現する一手です。働く社員のモチベーションを高め、イノベーションを生みやすくする環境を作ることで、ひいては企業としての成長へとつながっていくと言えるでしょう。
「誰もが持っている」アンコンシャス・バイアスは、1回の取り組みだけで終了できる問題ではありません。無意識を自覚し、行動に移すためには継続的な研修が必要だと言えます。ぜひ、社員ならず会社の成長という観点で捉え、取り組んでいただければ幸いです。
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