ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いや導入メリット

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最近、テレビや新聞などでも取り上げられることが多くなった「ジョブ型」という言葉。「よく耳にするけど、ちゃんと理解していない」という方もいらっしゃることでしょう。

この記事では、そんなジョブ型雇用(以下、ジョブ型)について解説。日本型と呼ばれる「メンバーシップ型」との違いをはじめ、導入メリットやデメリット、注意点についてご紹介いたします。自社にとって有益なのかどうか、見極める際の参考になさってください。

目次

ジョブ型とは?
 日本型「メンバーシップ型」とは?
 契約書から探る!「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の違い
いま、注目される理由
 経団連による導入推奨
 在宅・リモートワークの増加
 働き方改革の影響
ジョブ型のメリットとデメリット
 メリット
 デメリット
導入にあたっての注意点
 就業規則で明確な取り決めを行う
 本人の意思確認を徹底する
 不合理な労働条件としない
まとめ

ジョブ型とは?

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欧米では主流な働き方である「ジョブ型」。経団連が導入を推奨していることもあり、日本でも導入を検討する企業が増えています。まずは、具体的な定義から確認しましょう。

▼内閣府|規制改革会議「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」より抜粋

ジョブ型正社員(職務、勤務地、労働時間いずれかが限定される正社員)は、専門性に特化したプロフェッショナルな働き方、子育てや介護との両立、正社員への転換を望むも無限定な働き方は望まない非正社員、等の受け皿として重要である。

▼海老原嗣生,荻野進介(2018).『人事の成り立ち』より抜粋

「ジョブ型とは、ジョブ(職務)がジョブ・ディスクリプション(職務定義書)によりタスク(課業=最小単位の仕事)まで細かく定められている。だからそこに規定された以外のタスクはしなくてもいい。

つまり、ジョブ型とは……

  • 「勤務地」「労働時間」「職務内容」を限定した雇用形態の一つ
  • 仕事内容を「職務定義書」で細かく定義する必要がある
  • 欧米で主流の雇用形態が「ジョブ型雇用」

このように言えるでしょう。

勤務地や職務内容を限定することから、「ポスト固定型」と呼ばれることもあります。

日本型「メンバーシップ型」とは?

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(画像参照元:海老原嗣生,荻野進介(2018).『人事の成り立ち』P11より編集部にて作成)

終身雇用制度や年功序列と言われるのが日本型です。ジョブ型に対して、職務や勤務地を限定しない無限定雇用です。ポスト固定型契約のジョブ型に対して、日本型はポスト可変型契約とも言われています。

契約書から探る!「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の違い

ジョブ型とメンバーシップ型を比較した際に大きく異なるのが、「職務定義書≒ジョブ・ディスクリプション」の存在です。もちろん、日本でも「労働条件通知書」の提示が法律上義務付けられていますが、大きく異なるのは、その内容の詳細さです。それぞれの契約書記載例を見てみましょう。

【欧米/職務定義書の記載例】

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(画像引用元:TEMPLATE.NET|Pharmaceutical Product Manager Example Job Description Free Downloadより)

【日本/労働条件通知書の記載例】

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(画像引用元:厚生労働省|労働条件通知書参考記入例より)

図表で見ると、両者の差は歴然ではないでしょうか?日本型は業務内容を記載する項目が小さく、簡易的な印象ですが、欧米型は責任範疇や担当内容が詳細です。

なお、ここで注意したいのが、それぞれの職務領域です。

  • ジョブ型=職務領域が特定されており担当範囲が狭い 
  • メンバーシップ型=職務領域は特定されておらず担当領域が広い

上記のような誤解をお持ちの方は少なくありませんが、ジョブ型は職務領域が狭いわけではありません。図表にもある通り、「市場の拡大をサポート……」といった包括的な言葉によって表現されていれば、ジョブ型も決して狭いとは言えません。

このようなことから、ジョブ型とメンバーシップ型とはつまり、ジョブ型は職務固定型、メンバーシップ型は職務可変型というのが最適でしょう。

いま、注目される理由

ジョブ型がいま注目される理由は何でしょうか?その理由や背景を見ていきましょう。

経団連による導入推奨

2021年1月26日の春季労使交渉の企業向け指針において、経団連がジョブ型雇用制度の積極的な導入を呼びかけています。職務ごとに最適な人材を充てるジョブ型は、企業の競争力強化において関心が高く、今後もさらに注目度が高まることが予想されます。

在宅・リモートワークの増加

新型コロナウィルスの影響を受け、在宅勤務やリモートワークを導入する企業が増加しています。オフィスの移転や売却は、もはや珍しくありません。

このように、働き方の急激な変化を背景に、自ら課題や仕事を見つけて働くことができる自走力や「明日からでもその業務をこなすことができる即戦力」へのニーズが高まっています。中でも、社員のパフォーマンス管理と言った観点から、ジョブ型への注目度が高まっています。

働き方改革の影響

終身雇用の崩壊や働き方改革といった影響を受け、労働者の価値観はこの数年で大きく変化しました。長時間労働や残業などの無理な働き方は嫌われ、忠誠心を持って長年会社に尽くすという価値観も旧いものに。

このような変化を受け、労働力確保のあらたな手段として注目され始めたのが「ジョブ型雇用」です。労働者の多様性(ダイバーシティ)を実現し、ワークライフバランスを実現しつつ働ける点が期待されています。また、特化型人材の活用によって技術革新に対するスピード感を高め、企業としての競争力を高めるといった点にも注目が集まっています。

また、同じような取り組みとして、最近注目を集めているのが「限定正社員」という働き方です。エリアや職務内容を限定して働くことができるといったことから、非正規社員との格差問題の解決や離職率の減少が期待されています。三菱地所やオリックスといった大手企業も導入している制度ですので、併せて検討視野に入れても良いでしょう。

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ジョブ型雇用のメリットとデメリット

勤務地や担当する職務領域を固定することで得られるメリットやデメリットは何でしょうか?それぞれ確認していきましょう。

メリット

1)専門スキルの向上化

担当職務を固定化することによって得られるメリットとして大きいのが、専門性を高めつつスキルを磨いてもらうことができる点です。

特に、技術系職種の場合、各分野のスペシャリストを育成することが企業成長に直結すると言っても過言ではありません。目覚ましいIT技術の進化によって、慢性的にITエンジニアが人手不足の日本において、人手不足解消策となり得る可能性が高いと言えるでしょう。

2)無駄な残業が発生しない

日本型「メンバーシップ型雇用」の特徴として挙げられるのが、階段式(自動的に昇格していくこと)です。この階段式があることによって、常に難易度の高い仕事を遂行しなければならず、残業を強いられる状況にある人は多いでしょう。

一方のジョブ型は職務が限定的なので、時間が経過するほどその業務に慣れ、特化していくことが可能です。そのため、残業せずに業務遂行が可能となる可能性が高いと言えるでしょう。

デメリット

1)事業展開のスピードが落ちる

ジョブ型雇用は勤務地や職務が固定型のため、容易に人事異動ができません。

例えば新規事業を始める場合、既存社員をスライドして要員に充てるということは往々にしてあると思いますが、ジョブ型では容易に人事異動が出来ないため、事業展開スピードが落ちることにもなり得るでしょう。

2)空席連鎖が起こる

日本型雇用のメリットとして挙げられるのが、「ゆで蛙式」です。この言葉は、新卒社員に少しずつ難易度の高い業務を任せ、いつの間にか幹部にまで成長させていくことを比喩した言葉です。この方式によって、日本型雇用は常に企業の末端である人材を採用するだけで成り立ってきました。

一方のジョブ型は、「横移動させるのが難しい」というデメリットがあります。仮に本人が同意して横移動してくれたとしても、元のポジションが空席となってしまうため、必然的に空席連鎖に陥ることになります。

3)補充が難しい

空席連鎖が起こることによってたどり着くのが、人材の奪い合いです。

ご存知の通り、明日からでも働いてもらいたい人材≒即戦力人材は同業他社も欲しいため、小さなパイでの奪い合いとなる可能性があります。また、採用難易度も必然的に上がりますので、空席ポジションの補充が難しいという結果につながる点は要注意でしょう。

導入にあたっての注意点

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ここまでの内容をふまえ、自社での導入を検討される企業に向けて、導入に際しての注意点をご紹介いたします。

就業規則で明確な取り決めを行う

ジョブ型雇用制度導入に際して、まず注意したいのが契約書類(職務定義書≒ジョブ・ディスクリプション)です。

ジョブ型は契約書類に基づいた業務が前提となりますので、最初に明確かつ詳細に書面で提示し、契約締結する必要があります。また、もちろん変更時も書面で変更内容を明示する必要があることを心得ましょう。

以下が主な記載項目です。

  • 配属部署名
  • 職務等級、職種名
  • 雇用形態
  • 勤務地、作業環境
  • 職務概要、仕事内容の詳細、責任範囲
  • 直属の上司、部下の人数
  • 必要なスキルや資格、学歴

本人の意思確認を徹底する

内閣府の規制改革会議「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」に、以下の記載があります。

相互転換に当たっては、労働者本人の自発的意思を前提とし、労働条件決定を合意することに加え、労働条件変更の書面による明示を義務付ける。

つまり、勤務地や職務内容の変更を行いたい場合、必ず労働者本人の意思や同意が必要となるということです。まだまだジョブ型雇用が浸透していない日本において、認知されていないのが実状ですので、運用の際は留意しましょう。

不合理な労働条件としない

こちらも、内閣府の規制改革会議「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」の抜粋です。

均衡処遇を図るために、有期労働契約について無期労働契約との不合理な労働条件の相違を認めないとする労働契約法第20 条に類する規定(雇用形態による不合理な労働条件の禁止)を設ける。

ざっくり言うと、「ジョブ型雇用」社員とその他の雇用形態で働く社員間において、労働条件に不合理な差異があってはならないということです。ジョブ型雇用の導入はまだまだ過渡期と言えますが、こちらも整備に努めましょう。

まとめ

日本型雇用であるメンバーシップ型は、長期視点での育成や配置転換が容易であることから、長年主流な働き方でした。「ゆで蛙式」と呼ばれる通り、徐々に業務の難易度を高めることによって、幹部候補を自社で育成することができました。

一方、職務固定型であるジョブ型雇用は、最初からある程度活躍が期待できる人材を採用して即戦力化することで、競合優位性を高めることができると言われています。しかし、メンバーシップ型と比較すると色々と難がある点も知っておくべきでしょう。

前述した通り、経団連がジョブ型雇用の推奨を提唱したことよって今後さらに多くの企業が導入を検討することになるかと思います。しかし、どちらを選択すべきなのか検討する際は、両者の良い点・悪い点を知り、長期視点でどちらが自社にとって良いのかという観点で選んでいただきたいと思います。

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