管理職不足は重大な経営課題!理由と効果的な対策を解説
母集団形成近年、管理職を目指す若手がいない、管理職の採用が難航している……といった問題を抱える企業や管理職のなり手不足に悩む企業が増えています。2020年3月のマンパワーグループ株式会社の調査では、一般社員の8割が「今後管理職になりたくない」と回答しており、管理職を目指す社員は少数派になっています。管理職が少ない状態でも組織が滞りなく回っているからと対策をしないままでいると、後に組織存続に大きな影を落とす可能性があります。この記事では、管理職不足が引き起こす問題とその対応策をご紹介します。
目次
管理職不足の現状
管理職が不足する3つの要因
労働人口の減少
管理職への不安
大々的な採用活動が難しい
管理職不足による問題
慢性的な人手不足に陥る
パフォーマンスの低下
採用前に見極めたい!中間管理職としての心得や能力とは?
自社が求める役どころに対するマッチ度
責任者としての適格者かどうか
部下のモチベーションを高めるノウハウを持っているかどうか
管理職不足への3つの対策
1.管理職の業務・待遇の改善
2.若手~中堅社員の能力開発・人材育成に取り組む
3.社外からの引き抜きも検討する
まとめ
管理職不足の現状
転職者の転職意欲の高まりや転職活動の活発化していますが、「優秀な管理職」の採用に悩む企業は少なくありません。
株式会社日本総合研究所の資料である管理監督者層の人事労務管理マネジメント「管理監督者を巡る最近の動向」には、1999年から2006年にかけて、労働力人口の高齢化に伴い、管理職割合は増加していたと記載されています。しかし今後は、少子化の影響を受けて、管理職自体が減少していく可能性が高いと考えられています。
また、2010年度および2015年度の国勢調査によると、1995年度には4.2%だった管理職割合は、2000年度には2.9%に減少。その後、2005年度、2010年度、2015年度ともに2.4%と横這いで、増加の兆しは見えません。
管理職が不足する3つの要因
管理職が不足している背景には、3つの要因が考えられます。社会の動きによるもの、個人の心情によるもの、採用活動にまつわるものです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
労働人口の減少
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年8月分)について」によると、2014年度からは有効求職者数が有効求人数を下回る、いわゆる「売り手市場」となっています。労働人口が少ないため、相対的に管理職になりたい人も減っていると見ることができます。
また、管理職になることが多い40代前後の労働者層は、ちょうど就職氷河期だった世代にあたります。そのため、そもそも管理職世代に該当する労働人口が他の世代より少ないことも、管理職不足の一因と考えられます。
管理職への不安
管理職であれば、労働時間を自由に設定できるようになりますが、反面、それまで得られていた残業代の支払いがなくなる(深夜残業を除く)などのデメリットもあります。管理職は、労基法の一部や労働時間の適用外になる一方で、責任や業務量は増加します。また、名ばかりで実態が伴っていないといった事もあるでしょう。
パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」の、管理職本人の負担感(心理負担感・業務負担感)を高い層(オレンジ)と低い層(ブルー)のグラフを見てみましょう。
管理職になって高い負担を感じている層において、「残業増加」「効率低下」「モチベーション低下」が起こっていることが分かります。
<管理職の負担感と管理職になっての変化・意欲>
このような状況を放置することによって、結果的に他社への人材流出リスクが高まることは押さえておくべきポイントでしょう。
大々的な採用活動が難しい
管理職の採用は、新卒採用やほかの中途採用と比べ、大々的に行うのが難しいという事情があります。理由としては、管理職レベルの採用活動を大々的に行うと社内の従業員に「管理職の誰かが退職するのか」「自社の業績は大丈夫なのか」といった不安を抱かせ、エンゲージメントを低下させる要因になるためです。
外部からの目も気になるところです。社外の人に管理職や役員の退職が知られると、経営状況悪化が懸念され、株価が下がるリスクがあります。このため、管理職レベルの採用は主に人材紹介会社やスカウトサービスなどを使ってクローズドに行われます。
また、求職者が転職を考えていても、転職市場に出てこないという課題もあります。既に管理職として活躍している人たちはその責任の重さから、業務量も膨らみがちです。その結果、転職活動をする時間的余裕がなくなっていたり、他の人から転職を引き止められたりしている可能性が高く、転職市場への表出も多くはありません。
管理職不足による問題
(パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」P30より)
管理職が不足すると、組織成長に必要な「経営理念の浸透」、「人材育成」、「能力開発」、「目標設定と評価管理」などのマネジメント業務が停滞する可能性があります。具体的にどのような問題が起きるのか、一つずつ見ていきましょう。
慢性的な人手不足に陥る
管理職の仕事の一つとして、後進の育成・能力開発が挙げられます。部下の適性や志向、会社の意向に合わせ、適切なキャリアを描けるようサポートするのです。
その一方で、管理職は企業規模や管理する人数が増えるほど負担感が上昇し、物理的にも心理的にも負荷が高い状況に陥ります。実際、このような状況下に置かれている管理者の転職意欲が高いこともデータで分かっています。
このような状況が続くことで起こるのが、後継者不足です。最前線で働く従業員たちに今必要な経験が何かを考え、支えることができなくなります。ひいては従業員が適切な職業経験を積むことができず、品質低下にもつながりかねません。
パフォーマンスの低下
調査データからも分かる通り、管理職になると創造的な仕事や付加価値を生み出すような業務にコミットできない状況に陥ります。休暇不足や残業の増加によって、心身ともに健康被害を及ぼす可能性も高くなるため、管理職としてのパフォーマンス低下が起こる可能性も高くなると言えるでしょう。
万が一、統率者である管理職が不在になってしまった場合、指示者がいなくなったメンバーが動けなくなってしまい組織全体のパフォーマンス低下につながる可能性もあると心得ましょう。
採用前に見極めたい!中間管理職としての心得や能力とは?
中途採用で外部から管理職を採用する場合、事前に見極めたい素養というものがあります。以下を参考に、採用前に自社に最適な人材なのかどうか見極めるよう注意しましょう。
自社が求める役どころに対するマッチ度
自社の社風とのマッチ度はもちろん、ビジョンやミッションに対する理解度がしっかりあるかという点は重要なポイントです。自社が求める役どころについてしっかり説明した上で、候補人材の志向性を確認し、自社とのマッチ度を測りましょう。
例えば、企業側としては「経費を削減して利益率を高めていきたいのに、新規事業を拡大していきたい」といった志向を持っている場合等が該当するでしょう。事前に面接でしっかり見極めておきましょう。
このようなカルチャーフィット度や志向性に関する確認方法については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご確認下さい。
責任者としての適格者かどうか
責任者としてのリーダーシップや人格をはじめ、コンプライアンスへの理解や実行できる人材かどうかも重要なポイントです。例えば人事リーダーという肩書でありながら、実際蓋を開けてみたら自分がパワハラを行っていた…なんて実例も。コンプライアンスへの知識・意識があるかどうかだけでなく、適格な人格者であるかどうかも事前に見極めるよう注意しましょう。
こういった人格に関する内容については、リファレンスチェックや適性検査を行うことである程度確認することができます。メンバーではなく管理職や経営層における採用であっても、導入を検討すると良いでしょう。
部下のモチベーションを高めるノウハウを持っているかどうか
頼られる上司は、部下一人ひとりについての理解がしっかりできています。例えば、その人の人柄や志向性、モチベーションがどこにあるかといった事柄を知り、その上で適材適所に配置して業務効率や業務の品質を高めることができるのです。
こういった事柄ができる人材かどうかは、具体的なエピソードを事実ベースで確認するのが一番です。「部下のマネジメントにおいて心がけていること」といったマインドや思考ベースの話だけでなく、具体的にどんな行動に落とし込んでそのマネジメントを実現し、どんな結果を出しているのか?といったところまで知ることができるとベストです。
このような具体的エピソードに基づいた質問方法は、Googleをはじめとする一部の優良企業で導入され始めています。構造化面接と呼ばれ、あらかじめ質問事項を決めておくことで、面接官による採用のブレを無くすことにも繋がります。こちらも併せて確認しておくと良いでしょう。
管理職不足への3つの対策
管理職不足への対策は、すでに社内で管理職とされている人たちの処遇改善と、外部からの人材登用の両側面から考える必要があります。どのような対策をすればいいのか、3つの方法をご紹介します。
1.管理職の業務や待遇の改善
今、自社内にいる管理者層に「名ばかり管理職」がいる可能性もあります。賃金などの処遇・業務の権限は、当該管理職にふさわしいものでしょうか。
業務内容と裁量・待遇面の適正化に努めると、管理職層の離職に歯止めがかけられます。今いる人材を手放さないためにも、適正な環境を用意しましょう。
2.若手~中堅社員の能力開発・人材育成に取り組む
管理職候補の育成も重要です。若手~中堅社員の能力開発に取り組むことで、管理職候補を育てることができます。近年では、タレントマネジメントやOKR(目標管理)の導入・実践によって、企業の方向性と従業員個人の指向性を合わせられるよう工夫する企業も出てきています。
「管理職を目指したい」と思っている若手社員に手を挙げてもらい、その人たちに限定して能力開発をすることも視野に入れましょう。そうすることで、意欲のある従業員のモチベーションアップにも繋がります。また導入の際には、適切な人事管理を行えるようにしましょう。
以下の記事では、研修の企画の仕方から実際に行った後のフォロー体制までの流れとポイントをご紹介しています。社内研修を検討される際のご参考になさってください。
3.社外からの引き抜きも検討する
管理職の採用活動を大々的に行うのはリスクがあります。もし今、一般的な求人サイトで社名を出して採用を行っている場合は、ヘッドハンティングや人材紹介会社経由での採用活動に切り替え、必要なスキル・能力を持った人材の採用に注力してもいいでしょう。
社外から新たなに管理職を迎えることは、既存社員への良い刺激となり他社のノウハウを学ぶことによって新たな分野に挑戦することにも繋がります。ぜひ検討されると良いでしょう。
なお、ヘッドハンティングには3種類の手法が存在します。人材数や課金形式が異なりますので、自社に合った方法を確認したいという場合は以下の記事をご参照ください。
まとめ
管理職不足の現状と今後の動向、管理職不足が引き起こす組織内の問題点、その対応策をご紹介してきました。
既に自社で管理職として働いている人材の処遇の確認と、若手~中堅社員の人材育成、管理職の採用方法見直しによって、問題を解消できる可能性があります。必要な取り組みを行い、健全な組織運営が出来るようにしましょう。
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