人材紹介業で起こりやすいトラブルとその予防法・対処法とは?
人材紹介会社様のお悩み需要の広がりを見せる人材紹介業界において、参入したばかりの人や、これから参入しようと考えている人は多いでしょう。しかし、人材紹介業では特有のトラブルが発生することも少なくありません。
そこで、起こり得るトラブルの種類や、その対策を事前に知っておくことが重要となります。この記事では、人材紹介業でよくあるトラブルとその予防法・対処法をご紹介します。
目次
求職者とのトラブル
求人企業とのトラブル
人材紹介業におけるトラブルの予防法・対処法
まとめ
求職者とのトラブル
まずは、人材紹介会社と求職者の間で起こり得るトラブルを見ていきましょう。
経歴詐称
求職者が自分をより優秀に見せるため、人材紹介会社に対して学歴や職歴を偽って伝えてくる可能性があります。例えば以下のようなケースがあるでしょう。
・実際に卒業した大学より偏差値の高い大学を記載する
・学校を中退したにもかかわらず「卒業」と記載する
・転職回数を少なく見せる
・アルバイトでの勤務だったが「正社員」と記載する
もし入社後にこのような経歴詐称が発覚すると、求人企業側から成功報酬の返金を求められることがあります。また、人材紹介会社側で経歴詐称を知っていたにもかかわらず選考を進めた場合、法的措置を取られる可能性も考えられます。経歴詐称に対しては厳重に対処するのが望ましいでしょう。
音信不通になる
求職者と突然連絡が取れなくなったら要注意です。例として、別の人材紹介会社を経由して応募した企業、あるいは直接応募した企業から内定が出て、こちらのサポートが不要になったケースなどが考えられます。
また、人材紹介会社を介して企業と知り合ったにもかかわらず、人材紹介会社を経由せずに直接内定を得る「中抜き」が行われた可能性も。中抜きについては「求人企業とのトラブル」の項目で詳しく紹介しているためご参照ください。
選考のドタキャン、入社日に出社しない
求職者が選考をドタキャンした、入社日に出社しなかったなどのトラブルがあり、企業側からクレームが入ることもあります。このような場合、求職者は何らかの理由で入社を拒否していると考えられるでしょう。例えば以下のようなケースがあります。
・家庭の事情で転職できなくなった
・転職が面倒くさくなった
・現職場から退職を引き留められた
・別のルートで他社から内定が出た
どんな理由にせよ、このようなことがあると求人企業に多大な迷惑がかかってしまいます。返金を求められる可能性も高いため十分注意してください。
早期退職
晴れて内定が出て入社したにもかかわらず、その後すぐに退社してしまうケースも少なくありません。原因としては、求職者と求人企業の間でのミスマッチが多いでしょう。求人企業における仕事が合わなかった場合、求職者が体調を崩してしまい退社に至るケースもあります。
ミスマッチが生じる理由には、求人企業が雇用面のメリットだけを伝えていた、求職者の求める条件とのすり合わせが足りなかった、などが挙げられるでしょう。この場合は、求人企業に関する情報を収集しきれていない、求職者へのヒアリングが不十分だったなど、人材紹介会社側の対策が不足していた可能性もあります。
契約内容によりますが、場合によっては求人企業に対して返金しなければならないこともあり得ます。
求人企業とのトラブル
続いて、人材紹介会社と求人者(クライアント企業)の間で考えられるトラブルをお伝えします。
求人票と実際の雇用条件が違った
求人企業が提出した求人票の内容を偽るケースがあるため、注意してください。例として以下のように、実際の内容より待遇を良く見せ、候補者を集めようとしている場合が多いでしょう。
・年収・月収・ボーナスなどを実際より高く記載する
・実際より残業時間を少なく見せる
・実際より福利厚生が充実しているように記載する
このような虚偽の記載があると、たとえ求職者とマッチングし入社したとしても、ミスマッチが生じて早期退職といったことになりかねません。
さらには、求人ページに虚偽の内容を掲載することで、人材紹介会社に対して「信用できない」という口コミが広がる可能性もあるでしょう。人材紹介業では求職者・求人企業の双方からの信頼が非常に大事なので、評判を落とさないよう細心の注意を払ってください。
人材紹介手数料の中抜き
人材紹介業では「中抜き」と呼ばれるトラブルが多発しています。中抜きとは、人材紹介会社を介して知り合ったにもかかわらず、求職者と求人企業が直接連絡を取り合い内定に至ることです。求人企業は人材紹介会社に対して手数料を支払う必要がなく、格安で採用が叶うため、中抜きが横行している現状があります。
人材紹介業では通常、求職者と求人企業が直接連絡を取ることを契約時に禁止しているため、中抜きは契約違反に該当します。ところが、求人企業側は「求職者本人の希望で直接応募してきた」と言い張ることも可能です。このようなケースでは、中抜きが行われた証明をすることは難しくなってきます。
成功報酬の未払い
採用が成功したにもかかわらず、求人企業側が人材紹介手数料を支払わないケースもあります。人材紹介会社では、求職者の採用に至った場合の成功報酬として、紹介した求職者の年収の30~50%程度の手数料を受け取るのが通常です。
しかし、このような成果報酬型ビジネス特有の問題として、支払いを踏み倒されてしまうリスクは常にあります。そのため、契約書の内容を強固にしておく、企業と連絡を取り続けるなど、綿密な対策が必要とされるでしょう。
人材紹介業におけるトラブルの予防法・対処法
人材紹介業では以上のようなトラブルが考えられます。しかし、対策を講じれば未然に防ぐことができますし、万が一トラブルが発生しても損害を最小限に留めることができます。トラブルを防ぐ方法、また適切に対処する方法をあらかじめ知っておきましょう。
求職者へこまめにヒアリングする
求職者へのケアはこまめに行ってください。特に、その人の良い面だけでなく、問題点や不安に感じていることなどのマイナス面まで含め、細かくヒアリングすることが重要です。求職者へのケアを手厚くすることで、経歴詐称やドタキャン、早期退職などのリスクを低減できます。
求人企業との契約書に返金規定を記載しておく
万が一、人材紹介会社と求人企業の間でトラブルが発生した場合、契約書の内容に基づいて手数料を返金しなければならないことがあります。その際「言った、言わない」の争いを防ぐためにも、契約書には返金規定を明記しておきましょう。
返金額は場合によって異なりますが、例えば早期退職トラブルの場合、「保証期間90日間・返金額100%」「入社後1ヶ月以内の退社なら80%返金」などが相場となっています。
弁護士などからリーガルチェックを受ける
求人企業との間で契約書を作成する際は、社内の法務担当者や社会保険労務士、弁護士などによる第三者のチェックを受けるのがおすすめです。特に「契約内容に抜け穴がないか」「訴訟に発展するリスクがないか」を重点的に確認してもらいましょう。
また、このようなプロがいれば契約時だけでなく、判断が難しい事態が起きたときやトラブルが起きた後などもトータルで力を借りることができ、適切に対処できます。
まとめ
人材紹介業を行う上では、求職者側・求人企業側の事由を問わず、さまざまなトラブルの発生が予測されます。トラブルを未然に防ぐため、また、万が一トラブルが起こった際の損害を最小限に抑えるためにも、事前に知識を付けたり環境を整備したりすることが重要です。
そのため、法務担当者や弁護士と密に連携する、マニュアルやガイドラインを作成する、社内で研修を行うなど、あらかじめ対策を講じておきましょう。