ピープルアナリティクスとは?具体的な活用方法と最新事例を紹介

母集団形成

ビッグデータやAIの活用が進む中、人事領域にもその波が押し寄せています。2014年にピープルアナリティクスという概念が日本にも紹介され、大企業を中心に導入が進んでいますが、成果に結びつくまでには課題も多く、難しい取り組みであることは否めません。

企業に大きな変革をもたらす可能性を秘めたピープルアナリティクスについて、改めて内容を解説するとともに、いくつかの事例をご紹介します。

目次

ピープルアナリティクスとは?
ピープルアナリティクスのメリットとポイント
ピープルアナリティクスの活用方法
ピープルアナリティクスの活用事例
まとめ

ピープルアナリティクスとは?

ピープルアナリティクス

ピープルアナリティクスとは、個々の従業員に関する属性や行動、適正や指向性、心理的傾向や態度特性といった、さまざまな情報を集めてビッグデータ化し、それを分析することです。その分析結果から得られるインサイト(人を動かす隠れた心理)を人的資本の管理に応用することで、組織の生産性と従業員エンゲージメントの向上に結びつけていくことがピープルアナリティクスの目的です。

人事情報を分析し改善へと繋げること

従来の人事に関する情報は、年齢・性別・学歴といった基本情報に加え、勤続年数や部署といった属性情報や、スキルや実績、適性検査の結果、面談による定性情報といった複数の情報をもとに採用や評価、人員配置に活用されてきました。

デジタル環境が職場に浸透したなかで、より積極的な形で従業員の行動的な側面や心理的要素に関する情報を収集・データ化、さらに、分析することで見えてくるものを人事施策に反映させようというのがピープルアナリティクスの考え方です。それが組織の課題解決や個人やチームのパフォーマンス向上に大きな役割を果たします。

分析の対象とする人事データ

従業員の基本的な属性情報と適性検査の結果や主観要素が含まれる上司の評価などの伝統的に用いられてきた人事情報に加え、テクノロジーを活用することで自動的に収集できる情報、従業員からのフィードバックを求めるサーベイで収集される情報がピープルアナリティクスで活用されるデータです。

「ピープルアナリティクスの教科書(一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会)」によるとピープルアナリティクスで収集されるデータを以下の4つに分類しています。

1.オペレーショナルデータ
採用・配置・育成・評価・報酬といった、いわゆる人材マネジメントのオペレーションを実行するために必要となるデータ。

2.センチメントデータ
従業員のモチベーションや組織風土など変化や課題を抽出するために活用されるデータ。

3.パーソナリティデータ
従業員の性格特性や能力特性を指し示すデータ。

4.アクティビティデータ
カレンダーやメール、チャットなどの従業員が日々の業務の中でどのような活動をしているかをログとして残すデータ。

①オペレーショナルデータは従来型の人事システムで登録・管理される情報です。

②センチメントデータ、③パーソナリティデータは、これまでは従業員意識調査や適性検査など、研修プログラムと紐付けられる形で実施・収集されることが多かったものです。

④アクティビティデータはカレンダーやチャットなど日常業務のなかで自動的に記録することが可能なログデータです。さらに先進的な事例として、個々の従業員がウェアラブルセンサーを身に着け、オフィス内での滞在場所・時間、会話時の相手・その時の声量や強弱といったデータを記録することで従業員の行動パターンとパフォーマンスを分析する試みなどが行われています。

従来は①、②、③それぞれ単独の目的に使われていたものを、従業員の行動パターンを示す④アクティビティデータを合わせて定量化し、組み合わせて分析することで、組織的な課題やパフォーマンスに影響を及ぼす要因を見つけ出すいとぐちを見つけ出せる可能性が高まります。

また、②センチメントデータは、情報システムを用いることで日々変化していく従業員のモチベーションや感情的な要素を機動的に収集することができ、従業員それぞれの個々の状況に応じたきめ細かなフォローを行うことが可能になります。

ピープルアナリティクスのメリットとポイント

これまでに扱ってこなかったデータを収集し、それを組織の課題解決やパフォーマンス向上へと貢献してくれる分析に結びつけるのがピープルアナリティクスです。大きなメリットをもたらしますが、実際に成果を出すためには難しい要素があることも事実です。メリットと注意点を見ていきましょう。

属人的な評価を防ぎ、業務効率化も可能

ピープルアナリティクスを行うことで、採用・配置・育成・評価・報酬に関わる人事オペレーションを、より多くの客観的な情報に基づき判断することが可能になります。

より客観的な基準で適正を評価し、判断を下すことができるため、配置のミスマッチや評価に対する不満といった従来型の属人的要素が色濃く反映される人事オペレーションにおいて、公平性と透明性を持つものに作り変えることができます。

また、採用時のAIを用いた書類選考等といった例に見られるように、人事部門の業務効率化に貢献することもピープルアナリティクスのメリットの一つです。

データ分析ができる人材が必要

データを分析する上では分析担当者のスキルや経験が必要とされます。収集可能なデータ、収集すべきデータの判断と分析方法、データ収集の際のオペレーションも十分検討された上で取り組むことが求められます。

収集データの扱いと従業員の合意

データの収集にあたっては個人情報の領域も含まれるため、従業員側から懸念を示されることが想定されます。収集するデータの内容・範囲、利用の仕方の丁寧な説明と従業員の合意を得た上で進めることが重要です。

ピープルアナリティクスの活用方法

「職場の人間科学」とも言われるピープルアナリティクスは、人材マネジメントに関わるデータの切り口を見出すことが重要な鍵となります。収集するデータと分析方法によって幅広い活用の仕方が考えられますが、代表的な活用事例として以下のようなものが挙げられます。

採用活動:ミスマッチの防止に繋がる

採用後、定着し活躍している人材のパーソナルデータを分析し、そこから導かれる特性を採用基準として用いることで、ミスマッチを防ぎ早期退職者を減らすことに繋がります。

客観的なデータをもとに評価できる

売り上げや件数といった結果に加え、アクティビティデータによる行動過程やセンチメントデータによる個々の状態を加味することで、評価者の属人的な部分に捉われない、より客観性のある評価を行うことが可能になります。

最適な配置によりパフォーマンス向上に繋がる

パフォーマンスの高い従業員のデータパターンや特徴をピープルアナリティクスの複数のデータの中から抽出することができれば、その部署や職種、ポジションに適している人材を選ぶ際に役立ちます。結果として適材適所が実現し個人のパフォーマンスも向上します。

個人に合った育成計画ができる

パーソナルデータやセンチメントデータを活用しながら適正や本人の希望に、よりマッチした部署やチームへの配属を行う、また、個々の従業員にふさわしい育成プランやキャリアパスの提示に役立てることもできます。

従業員満足度の測定と対策ができる

ミスマッチがなくパフォーマンスを発揮しやすい環境に配置することは、従業員のエンゲージメント向上に貢献する大きな要素です。また、センチメントデータの高頻度な収集やアクティビティデータによる行動パターンを分析することで、オフィス環境や福利厚生をはじめとする諸制度の課題の発見に繋がる可能性があり、それに対策を講じることで従業員の満足度は高まります。

ピープルアナリティクスの活用事例

ピープルアナリティクスはGoogleやマイクロソフトなどの先端的な企業が採用することで注目された人事施策です。積極的に取り組みを進めている大手企業のいくつかの事例をご紹介します。

事例1:Google

Googleはピープルアナリティクスの分野に最も早くから着目し、専門部署であるPeople Analytics部門を設けています。

さまざまな取り組みがあるなかで以下の事例がよく知られています。

●メールコミュニケーション

メールコミュニケーションのパターンを分析した結果、物理的な距離が近いほどメールコミュニケーションの頻度が高く、顔見知りのほうがメールコミュニケーションの心理的な敷居が低いことをピープルアナリティクスの分析結果として報告。

●独自の採用基準

採用にあたり、膨大な数のレジュメのふるい分けを行う際、入社後に成果を上げる採用候補者の属性をピープルアナリティクスの分析により特定。従来の大学の成績によるスクリーニングとは異なる独自の基準に変更した。

事例2:ヤフー株式会社

2017年に専門部署となるピープルアナリティクスラボを発足させ、「従業員の才能と情熱を取りこぼさず解き放つこと」「同時に、組織の成長を支援すること」の2つをピープルアナリティクスの定義として、以下のような取り組みを行っています。

●ハイパフォーマー分析

収集データから社員が「活躍している状態」を能力・ポテンシャル・資質などの複数の評価軸をもとに抽出。採用時の評価、昇給速度、上司評価・多面的評価の好成績者などの属性を加味し、社員一人ひとりが活躍できる環境を提供。

●退職者予測

組織内で活躍しており、かつ、退職する可能性が高いと予測される社員をデータ分析により特定、リテンションのための重点ケアを実施。

事例3:パナソニック株式会社

パナソニックでは、2017年に人材獲得を目的としたエンプロイヤーブランディングの取り組みを開始。2020年にピープルアナリティクスの機能を取り込んだ「採用ブランディング・ピープルアナリティクス課」を設置し、さまざまな分析データの活用方法を検討しています。

●パルスサーベイを定期的に実施

2020年9月から若年層社員のモチベーション状態を把握するためのパルスサーベイを1~2ヶ月毎に実施。モチベーションが短期間で変動する社員がいることが検証される。その原因や傾向を分析しマネージャーとメンバーの双方をフォローする体制構築を目指す。

●パルスサーベイのデータを配属後のマッチングと採用活動にフィードバック

従来のベテラン社員の経験や勘をサーベイの分析結果から形式知化し、それを採用活動にフィードバックしていくことを目標とする。

まとめ

ピープルアナリティクスは、その言葉通り「分析」することが鍵となる取り組みです。データをスムーズに収集する仕組み作りと分析結果からインサイトを得られるかどうかがピープルアナリティクスの正否に関わります。

人材と働き方の多様化が進み、事業環境も急速に変化するなかで、組織と人材のマッチングを高度化していく取り組みは、多くの企業に求められています。

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