ブリッジ人材とは?役割・採用/育成の方法を紹介
母集団形成グローバルな橋渡しを担うブリッジ人材は活躍の場を広げています。IT関連のオフショア開発が普及した現在では、「ブリッジSE(システムエンジニア)」といった言葉も生まれ、今後さらにさまざまな分野で海外との交流で間に入り、ビジネスを推進する人材の価値が高まっていくと考えられます。
この記事では、ブリッジ人材という言葉の意味や背景、役割や育成方法などについて解説します。
目次
ブリッジ人材とは
ブリッジ人材が期待される役割例
ブリッジ人材を採用/育成するには?
ブリッジ人材の活用事例
まとめ
ブリッジ人材とは
ブリッジ人材とは、日本企業の東南アジア地域進出、IT関連企業のオフショア開発が盛んに行われるようになった2010年代初頭に、現地外国人との橋渡しをする役割を持った人材という意味で使われるようになった言葉です。
コミュニケーションを円滑にする人材
日本企業の海外進出、海外企業の日本における拠点展開など、双方向でビジネス環境がグローバル化していく潮流により、国籍の異なる人材が同じ組織の中で働いたり、マネジメント担当者の国籍が異なったりという状況が必然的に生まれています。
そのため、国によって異なる価値観や考え方、文化、常識、商慣習などが、言語スキル以上にコミュニケーションに影響を及ぼすことが、現場の課題としてクローズアップされることも少なくありません。
翻訳された言葉の微妙なズレやニュアンスの違いによって、指示に対する業務範囲に関する認識の違いや、仕事を行う上での考え方の根本的な違い等が、多国籍間でコミュニケーションを行う上での障害にも。
このような言葉や文化の異なる人材間のコミュニケーションが発生する場において、価値観や考え方の違いから摩擦が生まれることを防ぎ、両者の調整を図りながら円滑な業務の進行を助ける役割を担うのがブリッジ人材です。
グローバル化の影響で重要度が増している
経済のグローバル化の流れは拡大の一途をたどっています。ビジネスにおいて海外とのやり取りが発生する場面は、多くの分野で増えていくと考えられます。
冒頭に挙げた通り、ブリッジ人材という言葉は2010年代の海外投資の盛り上がりに伴って生まれた言葉ですが、以降も着実にグローバル化は進行しています。
経済産業省によると、製造業に限ってみても、国内拠点からの出荷と海外現地法人の出荷を合わせたグローバル出荷指数は、リーマンショック後の大きな低下があったものの、近年は上昇傾向が続いています。
具体的には2015年を100として2018年は104.5とグローバル出荷指数は上昇しており、着実にグローバル化が進んでいることを示しています。
加えて、外国人とのビジネスの中で接触、あるいは合流する場面は、将来的にも増加が見込まれ、ブリッジ人材に対する需要とその役割の重要度は確実に高まっていくことが想定されます。
最近では「ブリッジSE」も注目されている
(画像引用元:みずほ情報総研株式会社│IT人材需給に関する調査P20より)
グローバル化の進展と平行し、経済のデジタル化も時代の流れとして今後さらに進んでいくことは間違いありません。それに伴い国内IT人材の不足が懸念されており、経済産業省の発表では、2030年までに45万人のIT人材が不足すると言われています。
そのため、不足を補う人材を海外に求めることは必然的な流れであり、IT人材のオフショア化は着実に増加していくことが見込まれます。
IT分野の海外進出で現地との間に入るのがブリッジSEです。人件費の面で競争力が高いとされる、インド、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった東南アジア諸国が相手国になることが多く、それらの国々に開発をアウトソースする場合、日本との窓口としての役割をブリッジSEが担います。
ブリッジ人材が期待される役割例
ブリッジ人材は、現地の外国人がその役割を果たす場合と現地を熟知した日本人が送り込まれる場合など、そのポジションや仕事の中身よってさまざまなケースがあります。
国境を超えたビジネス取引をするとき
海外進出白書によると、国内企業の海外進出手段は全体の57.9%を直接投資が占めており、業務提携が15.4%、輸出が11.3%(総務省:「ITCによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」2018年)となっています。
現場のオペレーションに深く関わるブリッジ人材が必要とされる直接投資が最も多く、業務提携や輸出でも窓口となるブリッジ人材が求められています。
近年では越境ECも盛んに行われるようになり、海外取引のバリエーションが増えていく中でブリッジ人材に求められる役割も多様化しています。
海外展開時に現地の人材マネジメントをする時
直接投資では、国内からのマネジメントが海外拠点に及ぶ形になります。重要なのは、このポジションで活躍するブリッジ人材に対して、求める具体的な役割を明確にすることです。以下がその一例です。
・指揮命令系統における責任の所在や範囲
・各階層間でやり取りされるべき情報の内容
・異なる国籍を持つ人員がどこに配置されるか
・コミュニケーションの発生する場所がどこか
こういった要素に応じて、ブリッジ人材に求められる具体的な役割を決める必要があります。
オフショア開発の場合、現地外国人が日本とのブリッジの役割を果たすケースが多く見られます。一方、現地に拠点を設けるケースでは国内でのオペレーションをベースに現地での組織づくりを行い、日本から送り込まれる担当者がマネジメントを行うとともにブリッジ人材としての役割を果たすケースが多いと言えるでしょう。
ブリッジ人材を採用/育成するには?
ブリッジ人材の獲得方法は主に3種類あります。国籍に限らず社内の人材を充当する場合、新たに採用する場合、社外の人材がその役割を行う場合の3つが考えられます。
採用すべき条件をチェック
ブリッジ人材には、目的とする国の言語スキルを大前提に、コミュニケーションスキル、異文化に対する適応力、調整力といった素養が求められます。
相手を理解した上で継続的なコミュニケーションを取り続けながら、協力を得て仕事を前に進めていく力も必要とされるでしょう。日本人同士では想定し得ないところで粘り強い説得や交渉が必要な場面も出てくるため、さまざまな能力が必要だと言えます。
相手国によっても国柄としての考え方や常識が大きく異なることから、滞在経験を持つなど、日本と相手国の両方を知っている人材を採用することが望ましいでしょう。
ビジネス相手国へ派遣し研修を実施する
工場建設など自社の積極的なイニシアチブが求められる海外進出の場合には、社内の人材が主導する形でブリッジ人材として機能することが必要です。ブリッジ人材の社内育成には海外での経験を積むための研修などを実施しながら進めていくことが考えられます。
特に適応力の高い若い時期に海外での体験を持つことは、適正の見極めも含めて、応用範囲の広い問題解決能力を身につけることにつながると言えるでしょう。
ジョブローテーションを実施する
既に海外の拠点を持つ場合には、国内・海外での両方の経験を積むための計画的なジョブローテーションを実施することで、ブリッジ人材としての能力を高めていくことができます。長期的な取り組みですが着実な成果を挙げられる方法と言えるでしょう。
ブリッジ人材の活用事例
ブリッジ人材の活用事例を経済産業省「人材の国際化を推進する企業のグッドプラクティス集(2009年)」からいくつかご紹介します。
事例1:株式会社エヌ・ディ・アール
<事業内容>
ソフトウェア開発
<ブリッジ人材の概要>
オフショア開発のためのインド現地法人を設立。現地で採用したエンジニアに対し徹底した日本語教育を実施。また、時間厳守、報連相などの日本の行動様式も語学同様に教育している。ブリッジSEを海外現地法人で育成する形を採る。
その結果、当社の顧客企業は国内での開発発注と変わらない形でインド人技術者にオフショア案件を発注することが可能となっている。
事例2:株式会社賀風デザイン
<事業概要>
工業デザイン開発
<ブリッジ人材の概要>
日本市場に閉塞感を感じていた社長が中国上海に100%子会社を設立。当初から社長が上海に常駐する形で人材獲得・育成を行ってきた。日本のデザイン会社というブランド力を背景に優秀な人材を多数確保。
当初、商習慣の違いから支払いの遅延などが多発し、日本文化との違いを認識する。契約項目の明文化・細分化、また、社員に対しては罰金制度や独自の評価制度などを導入し現地のやり方に対応。社長自らがブリッジ人材としての役割を担った例と言える。
事例3:株式会社ニフコ
<事業概要>
合成樹脂製系及び金型の製造・販売
<ブリッジ人材の概要>
1980年代から海外進出を開始。国内の大学・大学院を卒業した外国人留学生の積極的な採用を行う。日本本社で外国人を採用し両者の協働の中で価値観、多様性の理解とコミュニケーション能力向上を進め、ブリッジ人材としての育成を進めている。
まとめ
ブリッジ人材は2つの国の橋渡しという意味で使われ始めた言葉です。近年ではデジタル人材とビジネス人材の橋渡しをするブリッジパーソンといった言葉も使われています。
ともに厳密な定義や使い分けがあるわけではありませんが、共通しているのは異なる背景や価値観が重なり合う場面に求められるスキルや対応力だと言えるでしょう。
社会全体が多様化していくなかで、これまでになかったものに対応していく力が、よりいっそう求められるようになっていくと考えられます。
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