人事の仕事は、賃金や福利厚生をはじめとした労務管理から、評価や配置・研修といった人事管理まで、多岐にわたります。その中でも「採用計画(人員計画)」「採用業務」は、新しく社員を迎え入れるためには不可欠であり、非常に重要な業務です。
今回はそんな量・質ともに突出したレベルを求められる「中途採用」にフォーカスして、採用計画から面接までの流れとポイントについて解説します。
中途採用の現状
中途採用のメリットと留意ポイント
一般的な中途採用フロー
2021年度版:中途採用に適した時期やトレンド予測
まとめ
採用業務に着手する前に、現在の「中途採用」を取り巻く環境について正しく理解しておくことが重要です。まずは、他社の採用活動状況などをふまえた現状から見ていきましょう。
新卒・中途採用に限らず、人材獲得の方法は年々多様化しています。
IT技術やリテラシーの向上により、最近はSNSによるソーシャルリクルーティングも増加。優秀人材の活動領域も変化しているため、ヘッドハンティングやスカウト活動に力を入れる企業も多くなっています。新型コロナウイルスの流行を背景に採用コストを削減された企業は、自社社員の知人・友人紹介といったリファラル採用を開始するところもあり、採用活動の方法は企業によってさまざまと言えます。
企業がキャリア採用において重視する項目を見てみましょう。
上図は、HR総研が行ったキャリア採用に関する調査結果です。企業が重視する項目としては「経験職種」が76%と最も多く、続いて「人柄」63%、「転職理由」43%という回答結果に。一方、重視しない項目としては「卒業大学等」が53%、「勤務した会社名」43%となっており、実務に関係しない要素についてはあまり見ていないことが分かります。
(画像引用元:内閣府|「特集 就労等に関する若者の意識」より
それでは、求職者側の傾向はどうでしょうか。
内閣府の「就労等による若者の意識」に関する調査結果によると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した人の割合が、平成23年時点では52.9%に対し、平成30年時点では63.7%と、実に10ポイント以上もアップしています。
また、「働くことに関する不安」要素として挙げられているのは、「十分な収入が得られるか」が最も回答数が多く、2位以降は「老後の年金はどうなるのか」「きちんと仕事ができるか」「仕事と家庭生活の両立はどうか」「勤務先での人間関係はうまくいくか」と続きます。
転職先を検討する際は、「残業時間」「福利厚生制度」「人間関係」「社風」といった事柄について口コミサイトなどを利用して念入りに情報収集するといった声も多く挙がっており、こういった要素が転職決定理由として大きな影響力を持つことが予測されます。
自社が求める経験やスキルを持ち合わせており、かつ社風にフィットする人材を探すのは骨が折れるものです。一体、中途採用におけるメリットとは何でしょうか?あらためて見直してみましょう。
中途採用は、一定以上のビジネスマナーや求める経験・スキル等を持ち合わせた人材を獲得することで、不足ポジションにおける早期活躍が期待できます。急募であればなおのこと、メリットとなり得るでしょう。
但し、留意したいのは同じ職種間での転職でも、会社による仕事の進め方やルール、社風などが異なるため、放置して良い訳ではないという点です。中途採用者であっても、定期的な面談や研修を行い、組織に馴染めるよう努めましょう。
「中途採用なのに研修が必要なの?」と思われた方は、必要である理由や実施すべき研修の種類・内容について以下記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
中途採用におけるメリットの二つ目として挙げられるのが、他社の仕事の進め方やノウハウを自社に取り込むことができるという点です。例えば、営業であれば担当者との話の進め方や受注獲得方法といったテクニック、数字へのコミットといった周囲への影響も期待することができるでしょう。
前述した通り、中途採用でも全く研修が必要ないかと言うと、そうではありません。しかし、新卒採用の手取り足取りでの育成期間や工数を金銭的コストに置き換えて比較してみると、やはり中途採用の方が大幅なコスト削減になると言えるでしょう。
中途採用と新卒採用の大きな違いは、包括的コストの削減にあるでしょう。
以下は、平均採用コストと平均育成コストを元に、中途採用と新卒採用における採用コストを比較した表です。新卒採用は採用コストを抑えることができますが、中途採用と比較すると育成コストが跳ね上がることから、結果的にコストがかかると言えます。
※平均育成コストは「外注費等の直接経費:5万円+人事及び現場社員の人件費」とし、編集部にて独自算出。
⇒中途採用は「関係社員数:3名×1人当たりに割いた時間:10時間×時給2500円」
⇒新卒採用は「1日4時間フォロー、独り立ちまでを6カ月(1カ月20日営業日)」 とそれぞれ仮定
しかし、中途・新卒ともに採用単価は年々上昇傾向にあります。背景として挙げられるのが、少子高齢化による労働人口不足です。労働人口(母数)が減少し、これまでの採用手法では人材獲得できなくなっていることから、金銭的コストを投じてでも、良い人材を獲得しようという企業努力がうかがえます。
一般的な中途採用の流れについて、見てみましょう。
採用活動を始める前に行っておきたいのが、採用計画や具体的な採用人数といった採用目標の設定です。今回が初めて中途採用を行う企業の場合であれば、「いつまでに」「どんな人材を」「何名採用するのか」を明確にしましょう。
具体的には、応募者人数、書類選考者数、1次選考者数、2次選考者数など、各フェーズにおいて母数がどの程度存在し、実績としてどうだったのか?という歩留まりをもとに、採用目標を設定することが理想です。歩留まりの計算方法や改善方法については以下の記事をご参照ください。
人材要件(採用要件)とは、簡単に言うと、採用したい人材の「求める人物像」を言語化したものです。「年齢層」「職務経験やスキル」「志向性」「仕事に対して大切にしていること(価値観)」といった事柄を洗い出し、自社で求める要件を定義しましょう。
設定時のポイントとしては、最初はあまり絞り過ぎず、MUST(必要スキル)、WANT(持っていたらより良いスキル)、NEGATIVE(除外したい条件)といった形で人材要件を設定することです。また、「業務を洗い出す」「求める条件を設定する」「期待行動を明文化する」といった具体的な人材要件の設定手順や人材要件の作成例を以下の記事でご紹介していますので、ぜひご確認ください。
関連記事:人材要件の作り方・フレームワークを3STEPで理解!具体例付き |
なお、人材要件は採用ニーズが発生したら最初に着手する必要があります。「どうやって採用するか?」という採用手法に目が向きがちですが、これは、人材要件が固まった後に考えるべきことです。まずは人材要件を定義し、「どんな人」を採用したいのかを明確にしましょう。
求人方法には、大きく分けて5つの方法があります。
できるだけ多くの求職者へアピールしたいときにマッチする手法です。
広告枠を購入するタイプの「リクナビNEXT」や「マイナビ転職」、「doda(デューダ)」などの有料求人サイトが代表例です。無料掲載が可能なハローワークや近年利用企業が増えているIndeedは、無料で掲載できるプランを用意しているので、メディアミックスで利用したいところです。
採用したい人材が見つけにくい場合に適した手法です。例えば、以下のような場合にマッチします。
一般的に人材紹介サービスは「成功報酬型」であることが多く、コスト面でのリスクは高いとされています。サービスについて理解していないと、採用ミスマッチによって無駄なコストを割くことにも繋がりますので、以下の記事からリスクをチェックしておきましょう。
自社の社員や知人経由で人材を紹介してもらう「リファラル採用」。縁故採用との違いをはじめ、リファラル採用によるメリット・デメリット、他社の導入事例が気になる方も多いことでしょう。
リファラル採用を効率化するサービス3選をはじめ、導入手順、違法性まで、以下の記事で解説しています。富士通やメルカリといった大手企業の成功事例もご紹介していますので、ぜひご参考になさってください。
関連記事:リファラル採用とは?注目される理由、費用や注意点、サービス3選を紹介 |
最近は、FacebookやTwitterといったSNSを活用して採用活動を行う企業も増えています。中でも、 「LinkedIn(リンクトイン)」は日本でもユーザー数が急激に増えており、優秀人材層の利用が多いためミドル~ハイクラスの採用にもオススメです。
本来、採用業務は人材採用に関する知見をはじめ、採用手法や季節変調といったトレンド、他社状況などをふまえた幅広い領域にわたる広くて深い知見が必要です。また、候補者群集めから応募者の対応、面接日時の設定・面接対応、選考対応、内定者フォローなど、採用業務は膨大な量です。
最近は、採用代行(RPO)・採用アウトソーシングを活用し、採用活動をプロに委託する企業も少なくありません。応募者対応だけといった1タスク単位から、採用計画~入社後フォローまで……といった具合で包括的に採用活動をサポートしてくれるサービスもあります。
さらに、人材採用業務だけに特化している人は全企業の中でも1~2割とも言われており、この部分に工数を割けるかどうかが勝負とも言えますので、検討視野に入れるべきだと言えるでしょう。各サービスの比較は以下記事をご参照ください。
求人方法が決まったら、いよいよ求人掲載です。各採用手法によってお作法等は異なりますが、求人掲載は掲載して終わりではないことを心得ましょう。
まずは、掲載した求人広告がどの程度見られていかという閲覧数をはじめ、実際に応募してくれた人数なども含め、効果を集計します。まったく閲覧されていないのであれば、市場に求められていない求人だと言えますし、閲覧数はあるのに応募数が少ないようであれば、何かネックとなる要素が求人原稿に含まれている可能性があります。
人材要件が高すぎないか?原稿内容が魅力的かどうか?など、継続的に反応をチェックし、原稿をブラッシュアップするようにしましょう。
選考活動は、企業が求職者を自社の採用基準に達しているかどうかを見極める工程だと認識している方もいらっしゃいますが、本来は相互理解の場です。
候補者が募集ポジションの仕事を遂行できるかどうか、社風に馴染むことができるかどうかといった見極めを行うとともに、自社について適確に理解しているかどうか確認するようにしましょう。
求人手法が決まれば、無料の求人手法でない限りは「稟議・決裁」が必要となります。承認をとる際のポイントや具体的な流れを見ていきましょう。
採用予算を決裁する責任者(上司や、中小企業の場合は社長・役員)に直接交渉します。決裁者が判断するポイントは以下の通りです。
金 額 |
採用にかかる費用(求人広告費用や紹介料)や、採用したいポジションの処遇(人件費)はいくらか? |
採用までの期間 |
選択した採用手法では、採用するまでにどれくらいの期間が必要なのか? 採用できない場合、プロジェクト等に与える影響はどの程度か? |
実現可能性 |
そもそも採用可能なのか?採用したいポジションに照らし合わせ、その採用手法で本当に採用ができるのか、勝ち筋があるのか? |
続いて、効果的な稟議の進め方について説明します。
新しい採用手法を選択したいと考える背景には、現状の課題があるはず。その課題について、具体的なデータ等を用いて決裁者に伝えましょう。主に以下3つの観点で現状について整理することが有用です。
前述の通り、決裁者は「実現可能性」を気にするもの。そのため、予測される効果をしっかりと試算したうえで、いかに勝算があるかを伝える必要があります。試算する際には、求人広告メディアの営業担当者等から得た情報も有用です。
上記の情報に、今回の手法により必要になるコストも加味し、「採用数見込み」と「採用コスト・単価」を伝えましょう。当然ながら、現状の手法によるデータとの比較は必須。併記して伝えると、いかに費用対効果が高く、かつ実現可能性が高いかを伝えられるでしょう。
また、参考情報として、競合他社の情報はぜひとも伝えたいもの。「○○社はこれを使って○人採用成功しました」といった生の声を伝えることは、決裁者が判断するための重要な材料となることでしょう。
いつまでも悩まれていては仕方ありません。採用できなかった場合のリスク(プロジェクトの実行時期や事業計画等への影響)も伝えたうえで、「いつまでに決裁してもらわないと間に合わない」ということを、明確に伝えましょう。
新型コロナウイルスによる景気の低迷を背景に、転職活動を行う求職者が増えています。売り手市場だった中途採用市場も買い手市場に転じるほど、応募数の増加を実感する企業もあるのではないでしょうか?
しかし、良い人材はどの企業からも引く手あまた。選べる立場であることは依然として変わりません。内定を出した候補者に選考辞退、内定辞退されないよう、一連の採用活動として注力しましょう。
対策を採るために、まずは理由を把握する必要があります。候補者が内定辞退する理由や対策を以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
コロナの流行を背景に世界的な不況が続いています。今後は中途採用市場においてどんな変化があるのでしょうか?データをもとに予測してみましょう。
通年を通して転職活動を行っている求職者も少なくありませんが、企業にとって中途採用に適した時期はあるのでしょうか?
厚生労働省が公表するデータをもとに、直近4年間の「有効求職者数」の経年変化を追ったグラフを見てみましょう。このグラフによると、過去3年間は例年4月にかけてピークを迎えていますが、2020年度は1月から求職者数が上昇し続けているという結果が出ています。
一方の「有効求人数」については、3月を境に数値が下がり続けており、コロナウイルスの流行による景気ダウンに影響を受けていることがうかがえます。
こういった不況下においては、限られた求人を多数の求職者が奪い合うことになるため、募集をかけている企業側は、例年より応募数が多いと感じるでしょう。但し、その質が良いかどうかは別問題で、求職者側も出来るだけ多くの求人へ応募し、内定をつかみ取ろうとするため、期待外れのケースも少なくないようです。
また人材採用は季節変調も大きく影響を受けます。大型連休や決算、ボーナス時期など様々な要因によって求職者の動きは変わりますので、市場トレンドを以下記事でつかんでおきましょう。
参考記事:有利なのは何月?1~12月まで月別の中途採用トレンドをすべて解説! |
このような不況下において、企業側はどういった心構えで中途採用に臨めば良いのでしょうか。
まず、念頭に置いておきたいのは、今後も少子高齢化により労働力獲得競争は激化の一途であるという事です。若者の労働に対する価値変容といった影響もあり、その企業で働く意味が問われる時代です。労働者に選ばれる企業とは何か?どうすれば選ばれる企業となり得るのか?を追究する必要性が高まっています。
また、慢性的な人手不足から、新卒採用から中途採用にシフトチェンジする企業も少なくありません。
今後はこのような変化をふまえ、これまで日本では注目されることのなかった「リファラル採用」や「ヘッドハンティング」といった欧米的な採用手法が浸透していくことが予想されます。ぜひ、求人広告や人材紹介会社といった旧来の手法と併行して、新手法も活用しましょう。
なお、不況下でも優秀人材の獲得は不可能ではありません。転職意欲が顕在化していなくとも「良い企業に出合えれば転職を検討しても良い」という転職潜在層は常に存在します。また、そういった人材は多忙なため、なかなか市場に現れない優秀人材であると言えます。ぜひ、こういった層へのアプローチも意識しながら活動計画を立てていきましょう。
採用できて、入社してしまえばあとは配属部署にお任せ、人事の手は離れた、という人もいるでしょう。しかし、人事の仕事は「採用したら終わり」ではありません。
採用した人に、自社でしっかりと活躍してもらうためには、研修等の仕組みで能力開発をする必要があるでしょう。また、職場になじんでもらうためのコミュニケーション施策を講じるのも人事の仕事です。
転職は、大きな決断を伴うもの。その決断に大きく関わって、背中を押し、手を差し伸べたのは人事です。一人の転職者の人生を預かった、という気持ちを強く持ち、その人が会社で活躍し、人生がより充実したものになるよう、人事制度のみならず組織づくりまで含めて取り組んでいきましょう。
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