【人事必見】カウンターオファーとは?実態を考察

母集団形成

カウンターオファーを提示して退職する社員の引き留めを図ることにはリスクを伴います。カウンターオファーが成功する確率はそれほど高いものではなく、引き留めに成功したとしても、引き留めた社員本人と周囲にわだかまりを残す可能性もあります。

しかし、会社側として誠実な対応を行うことで、両者にとって前向きな結果をもたらし、それが正当で公平なものであることを周囲に納得させることができれば、決して無駄なことではありません。

カウンターオファーの実態はどんなものかについて、アンケート結果などを踏まえながら解説します。

目次

カウンターオファーとは何か
カウンターオファーの実態を紹介
カウンターオファーのデメリット
カウンターオファーを実行する際に注意すべきこと
まとめ

カウンターオファーとは何か

double exposure of businessman or salesman handing over a contract on wooden desk

カウンターオファー(Counter Offer)は「対案」「反対申し込み」という意味を持ち、交渉のなかで一方が提示された条件に満足しない場合に、相手が新しい条件を提示して譲歩を引き出すための提案や申込みを行うことです。

退職を考える従業員に引き留めの交渉をする事

転職市場においては、退職を申し出た社員に対し会社側が引き留めの提案をすること、または、引き留めるための条件の内容を指してカウンターオファーといいます。

退職を表明した社員が会社側にとって、「辞められては困る」または「辞めさせたくない」人材である場合にカウンターオファーを行います。

一般的には、辞めたい意向を持っている社員が退職の意思を示した場合に行われるものですが、退職届を提出するなど公式な形で意思表示がなされる以前に、退職の兆候が見られた時点で会社側が退職の意向の確認と交渉の機会を持つケースもあります。

カウンターオファーで交渉される内容

厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると令和2年1年間の「転職者の前職を辞めた理由」に関する調査結果があげられています。

<男性>
「給与等収入が少なかった」9.4%
「職場の人間関係が好ましくなかった」8.8%
「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」8.3%

<女性>
「職場の人間関係が好ましくなかった」13.3%
「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」11.6%%
「給与等収入が少なかった」8.8%

男女ともに労働条件と処遇が退職を考える理由として上位にあげられたものです。上記は転職者全体を見た場合の退職を理由であり、カウンターオファーの対象となる優秀な社員の場合にはどんな退職の理由を持つのかという点に注意する必要があります。

通常、退職の意思を示した社員の退職の理由を明らかにした上で、会社側からその解消・解決を図るための条件を提示するというのが合理的なカウンターオファーの流れです。

後述の別の調査結果でも触れますが、会社側がカウンターオファーで提示する条件として「異動」と「昇給」が上位にあげられており、これらを見る限りカウンターオファーを行う際に交渉される内容としては、職場の人間関係の問題や給与面が多いことが考えられます。

また、カウンターオファーを行う対象となるのは優秀な社員であることが一般的です。ヘッドハンティングなど、既に転職先が決まっているケースや、有利な条件で転職できる高い可能性を持っているケースも少なくないため、それらの条件と比較検討される場合も考えられます。

優秀人材の離職を防ぐ効果がある

カウンターオファーを行う理由として最も多いといわれるのが、対象とする社員が優秀な社員だった場合です。

一言で「優秀」といっても、業績が良い、リーダーシップがある、他の社員にできない仕事をしているなどさまざまなケースが考えられます。その社員が抜けることで会社や組織の現在と将来に大きな損失になることが明らかであれば、引き止めることを考えるのは会社側としては自然なことです。

しかし、カウンターオファーに成功したとしても、他の社員への影響や上司との信頼関係など、一旦退職の意思を示した社員を留めることでマイナスに働く要素が少なからず存在します。

それを差し引いたとしても留まってもらうことのメリットが大きければ、会社側がカウンターオファーを行うことに一定の合理性はあるといえます。

カウンターオファーの実態を紹介

カウンターオファーを行う企業側にとっては、どちらかというとネガティブな面をもつ行為であることもあり、あまり表に出てくるものではありません。

人材紹介サービスを行うエン・ジャパン株式会社が自社の情報サイトでカウンターオファーついて行った調査が公表されています。

この調査は2017年にエン・ジャパンの情報サイト「エン人事のミカタ」で企業を対象にアンケート調査を行い、775社から回答を得たものです。

65%の企業がカウンターオファーを実施した経験がある

全体の65%の企業が退職意向を持つ社員に対してカウンターオファーをしたことがあると答えています。

カウンターオファーを行った理由には以下のものがあげられています。

カウンターオファーを行った理由 構成比(%)※複数回答可
退職意向の社員が優秀 72%
育てた人材を手放したくない 61%
新規の人材採用が困難なため 44%
職場の士気を下げないため 27%
生産性の低下を防ぐため 24%
代わりとなる人材の育成コストをかけたくないため 22%
離職率を下げたいため 12%
業務のノウハウや知見の流出を防ぐため 11%
顧客の流出を防ぐため 3%
マネジメント評価低下防止 2%
その他 3%

「優秀な人材であること」が最も多くあげられた理由です。

また、「育てた人材を手放したくない」「人材の育成コストをかけたくない」という上位にあげられた選択肢に見られるよう、時間・コストをかけて行われる人材育成は投資であり、投資の成果に対する損失であることが意識されています。

「新規の人材採用が困難」という現実的な理由が3位にあげられている一方、「離職率を下げたい」「マネジメント評価低下防止」といった会社側の都合が理由となるケースもあげられています。

カウンターオファーの成功率は20%以下

カウンターオファーが成功する確率、すなわち、カウンターオファーを行うことで社員の退職を防ぐことができたおおよその成功確率を訪ねた結果は以下のとおりです。

カウンターオファーの成功率 構成比(%)
0% 15%
1~10% 28%
11~20% 18%
21~30% 17%
31~40% 5%
41~50% 9%
51%以上 8%

カウンターオファーの成功確率が「0%」から「11~20%」とした割合を合計すると61%、「51%以上」という回答は全体の8%のみであることから、カウンターオファーを行っても成功する確率は50%に満たないことがわかります。

カウンターオファーで提示する条件は「異動」が最も多い

カウンターオファーの条件に対する回答は以下のものがあげられています。

カウンターオファーで提示した条件 構成比(%)
他部署への異動 37%
昇給 21%
昇進・昇格 9%
新事業を任せる 5%
その他 8%

「異動」が37%、「昇給」が21%と、他の条件よりも多くの割合を占めています。

カウンターオファーのデメリット

カウンターオファーは一旦退職の意思を表明した人材に行うものであり、そのこと自体が対象となった人材だけでなく、周囲の社員にも影響を及ぼすことを知っておく必要があります。

ほかの従業員のモチベーション低下させてしまう

カウンターオファーを行うことは、一般的に、特別な待遇や本人の希望を受け入れた異動など、特定の社員を優遇するということです。

それが、他の社員からどう見えるか、納得感を得られるものかという点が他の社員のモチベーションに大きく影響します。

カウンターオファーが提示された社員がそれを受け入れて会社に留まった場合、留まった社員の実績や会社への貢献が周囲にも認められるものでなければ、他の社員からの不満や会社への信頼低下につながります。

引き留めに成功しても会社に居づらいと感じる可能性がある

カウンターオファーは周囲の社員の士気に影響するだけでなく、引き留めを行った社員本人のモチベーションにも影響します。

周囲には、会社側からの働きかけにより一旦は固めていた退職の意思を曲げたように映ります。会社側から懐柔されたといった印象を与えかねません。

退職の意思を表明したことで人間関係など不満の対象が明らかになれば、それらとの立場や関係が従前どおりにというわけには行かなくなります。

いずれの場合もカウンターオファーを行って引き留めに成功したとしても、本人と会社や周囲の関係にはなんらかの影響があることを認識しておく必要があります。

また離職を考える可能性がある

カウンターオファーにより引き留めたあと、本人が不安定な状況に置かれる可能性が高ければ、再び転職することも十分考えられます。

提示されたカウンターオファーが実現されない、または、十分なものではないと本人が感じた場合は、会社側に対する信用がさらに低下することになります。

また、退職を検討した理由がキャリア形成など前向きなものである場合、カウンターオファーによって完全に解決できないものである可能性も大きく、本人が転職することを諦めきれないといったケースも十分考えられます。

カウンターオファーが成功しても離職の可能性が残ることを念頭におき、本人への対応を検討することが重要です。

カウンターオファーを実行する際に注意すべきこと

多くの場合、社員の退職は会社側にとっても社員側にとってもネガティブな要素を持つものです。退職の意思が表明されたこと自体に、本人・会社側・周囲の社員になんらかの影響を及ぼします。

カウンターオファーの成功率がそれほど高いものではないことを認識した上で、成功・不成功に関わらず、会社側と社員側の信頼関係を保つ努力が求められます。

提示した条件は書面に残し実行すること

カウンターオファーで提示する条件は会社側として公式に認めたものであることを明確にし、確実に実行しなければ引き留めた社員との合意を反故にすることなります。

提示した条件は書面に残した上で関係者との間で共有し、カウンターオファーの内容を実行することが必要です。

従業員と周りの従業員のフォローをする

カウンターオファーのデメリットであげた点に配慮し、カウンターオファーを行った本人と周囲の社員に対してのケアを積極的に行うことが重要です。

カウンターオファーの正当性と公平性、周囲の納得感を得られる説明を行うとともに、退職を表明したことに対するわだかまりを解消する努力を管理者側が示していくことがポイントです。

労働環境や雇用条件を見直す

本来、社員の退職やカウンターオファーを行わなければならない状況が、会社にとって望ましくないのは明らかです。

本人の事情である場合を除いて、社員の退職が会社側に原因があると考えられる場合は、それを解消することが会社側に求められます。

まとめ

記事のなかでも述べたとおり、社員の退職はほとんどが、会社側と社員の両者にとって発展的なものでない限り、両者にネガティブな影響をもたらします。特に優秀な社員ほど辞めていく状況は、会社側に何らかの問題があると考えるのが妥当です。

カウンターオファーは事後的な対応策であることを認識した上で、社員のモチベーションやエンゲージメントの状態を把握し、社員の退職が生まれない人事体制や社内風土を作り上げることが先決です。

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