テレワーク導入による5つの課題とは?解決策や成功ポイントを紹介
コストダウン新型コロナウイルスの流行を背景にテレワークの導入を検討または導入している企業も多いでしょう。本記事では、テレワーク導入によるメリットやデメリットをはじめ、課題や解決策、成功させるポイントをご紹介いたします。
目次
テレワークの導入状況
テレワーク導入のデメリットランキング5
テレワーク導入によるデメリットの解決策
テレワーク導入のメリット
テレワークを導入するためのポイント
テレワーク導入における他社の成功事例
まとめ
テレワークの導入状況
そもそもテレワークとは、リモートワークやフレキシブルワークとも呼ばれています。在宅勤務は出社と併用されるイメージがあるのに対し、テレワークはICT(情報通信技術)を活用した時間・場所に制限のない働き方を指します。日本においては、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の各4省が連携しながら、働き方の向上に努めています。
他社の導入状況
総務省の調査に依ると、2018年度まではテレワークを導入する企業は増加傾向でした。しかし、2021年3月5日付けに発表された東京都の調査では、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は58.7%。2月前半の前回調査(64.8%)に比べて6.1ポイント減少に転じています。
テレワーク導入企業が減少した理由は何でしょうか?続いてデメリットを見ていきましょう。
テレワーク導入のデメリットランキング5
(画像引用元:ProFuture株式会社/HR総研|「【図表8】テレワークを導入・実施して直面した課題」より)
ProFuture株式会社/HR総研の調査に依ると、テレワーク実施によるデメリットは上図の様な結果に。それぞれ一つずつ見ていきましょう。
1.労働実態を把握しにくい
テレワークの導入を検討する企業の多くが、「従業員が仕事をさぼらないか」といったことを懸念しています。ことテレワークにおいては、従業員が上司の監督下にいないため全てを管理するのは難しいと言えるでしょう。
2.社内コミュニケーションが取りづらい
こちらもテレワーク導入に依る課題としてよく挙がります。「テレワークうつ」とも呼ばれ、メンタル不調を訴える人は少なくありません。テレワークは孤立しやすく、いつまでも仕事が出来てしまう環境下であることから、真面目な人ほど陥りやすい課題と言えるでしょう。
3.テレワークで対応し辛い業務が発生する
テレワークを推奨されてはいますが、どうしても対応できない職種はあります。販売・接客業や医療・福祉といった人と直接人と関わる仕事をはじめ、モノづくりや会社でしか行えない作業系統もテレワーク対応が難しいと言えるでしょう。
4.生産性が低下する可能性
テレワークという環境下において真面目に業務を行うかどうかは、個人の誠実性に委ねられる部分が大きいと言えます。そのため、人によっては業務をサボって生産性が低下するという可能性はあると言えるでしょう。
5.テレワーク社員と通勤社員との不公平感が出る
職種によってはどうしてもテレワークを導入することが難しいものもあるでしょう。同じ企業でも、出社組とテレワーク組……といった具合で、対応が分かれざるを得ないため、出社組が不公平感を抱くことは往々にしてあります。
この他にも、金銭的な導入コストや、人材育成、情報漏洩といったセキュリティ面での課題も上がっています。続いて、デメリットや課題に対する解決策をご紹介しましょう。
テレワーク導入によるデメリットの解決策
テレワークを導入することによってデメリットや課題が見えてきましたが、具体的にどのように対策すれば良いのでしょうか?一つずつ解決策をご紹介しましょう。
1)労働実態を把握しにくい
テレワークはもちろん対面(リアル)であっても、全従業員の業務状況を把握するのは無理だと言えるでしょう。しかし、定期的な進捗報告会や日報報告に依る成果報告など、対応策はあります。定期的に従業員の労働状況を把握する制度や以下の様な仕組みを検討してみましょう。
・日報の提出(取り組み内容、成果の確認) ・定例会、進捗報告会の実施(進捗状況の把握) ・勤怠管理システムの導入(一括管理が可能) ・ビジネスチャットツールの導入(リアルタイムで把握可能) |
2)社内コミュニケーションが取りづらい
オフィスであれば気軽に周囲とコミュニケーションを取ることが可能ですが、テレワークはカジュアルなコミュニケーションが生まれ辛い環境です。結果的に従業員同士の関係性が希薄化し、会社への愛着心が薄れることによって、組織で働く一体感や会社への帰属意識が薄れる可能性はあります。
朝会・夕会といった定例会の実施をはじめ、オンラインランチやオンライン飲み会の実施、カジュアルチャット専門ツールの導入など、オフデューティーなコミュニケーションの推進を図りましょう。
3)テレワーク対応し辛い業務が発生する
接客を伴うような業務は、テレワーク導入の難易度が高いと言えます。
もし、全ての業務をテレワーク化することが難しいようであれば、業務を分類してテレワークできるもの・そうでないものに分類すると良いでしょう。また、取引先をはじめ社外の人に対しても、積極的にテレワーク実施中であることを広報し、理解を得るようにしましょう。
どうしても対応できない場合は、限定的に出社を許可して対応し、可能な限りテレワークできる環境を整えましょう。
4)生産性が低下する可能性
テレワークは自主性に委ねられる部分が大きいため、従業員が仕事をサボって生産性が下がってしまった……といった課題を抱える企業もあるでしょう。
定期的なミーティングの開催、進捗管理の徹底、ビジネスチャットツールに依る稼働状況の把握など対策方法は様々ですが、最も重要なのは従業員が自走できる環境を整えることです。やりがいに感じる事や目指す姿を一人ひとりヒアリングして適材適所に配置する、目標管理制度を導入するなど、自走できる構造を検討してみましょう。
5)テレワーク社員と通勤社員との不公平感が出る
電話対応や来客対応など、どの企業も一部出社しなければならない社員がいるのではないでしょうか?このような対応負荷や業務ボリュームの差は、不公平感が生まれやすいものです。
請求書のデジタル化やオンライン電話ツールの検討など、在宅化できないかまずは検討してみましょう。さらに、テレワーク社員の行動指標の設定や定期報告の義務化など、テレワークならではのマネジメントも検討されると良いでしょう。
テレワーク導入のメリット
課題に対する解決策が見えてきたところで、導入するメリットを見てみましょう。
●業務効率の改善
出勤・退勤といった移動時間をはじめ、出社後の準備、雑談時間といったロスタイムを無くすことによって、純粋な業務時間を増やすことが可能です。実際、総務省が2017年6月に発表した「平成28年通信利用動向調査」に依ると、テレワークを導入する企業の方が未導入企業より労働生産性が1.6倍も高いことが分かっています。
●ワークライフバランスの向上
時代の移り変わりとともに労働者の働き方に対する価値観が変容し、プライベートと働く時間のバランスが整っていることを指す「ワークライフバランス」の向上は、企業の存命にも関わる重要要素とも言えるでしょう。
厚生労働省の調査に依ると、テレワークによって「家族と共に過ごす時間」が増えたと回答した人は半数以上の52.6%となっており、次いで「育児の時間(49.3)」「家事の時間(35.9%)」と、いずれも1時間以上プライベートな時間を増加できているという結果に。
働きすぎの日本人にはまだまだ仕事以外の時間が少ないと言えるでしょうが、テレワークの影響は小さくないでしょう。
●オフィス維持コスト削減
一般的に売り上げの総利益に対するオフィス維持費は10~20%とも言われており、オフィスを借りる際の契約金や賃料も継続的にかかります。
この他にも、ITコストと呼ばれるハードウェア・ソフトウェア代金が1%、電気代やガス・水道といった光熱費が1%程度(業種に依り変動あり)、文房具や印刷用紙といったオフィス用品が1%と試算すると、最大で売上高の20%弱かかっていることになります。
このような諸々のランニングコストを削減できることは、企業としてメリットでしょう。
●リクルーティング対策
採用活動における自社の魅力度アップのために、テレワーク(在宅勤務、リモートワーク)の導入を検討する企業は少なくありません。コロナ対策で従業員を守りながら業務の遂行ができるため、企業の魅力度アップにも繋げることができるでしょう。
テレワークを導入するためのポイント
【1】ビジネスチャットツールやICT化を進める
労働状況の把握や離れた場所でスムーズにコミュニケーションを取るためには、簡単にやり取りができるslack(スラック)やChatwork(チャットワーク)といったビジネスチャットツールの導入、書類などを簡単に共有できるクラウドストレージの利用といった業務のICT化が重要な役割を果たします。
最近はスタンプや動画の送信といったさまざまな機能を持ったチャットツールがありますので、自社に合ったものを検討されると良いでしょう。
【2】テレワーク特化型のマネジメントを
テレワークにおける懸念点の一つが、従業員の労働状況の把握や勤怠管理といった点でしょう。このような懸念への対策としては、取り組み内容や進捗状況が把握できる日報の提出や明確な目標設定が有効です。各自の目標を明確化することで、指示を待つのではなく従業員自身が自走できるようになるため、ぜひご検討ください。
【3】セキュリティ面での安全性が高いシステムやツールを選択する
テレワーク導入における企業の最大の懸念点でもあるセキュリティの安全性において、特定の人のみしか接続できないVPN接続の利用により、データを暗号化して安全にやり取りする方法が有効です。情報漏洩リスクに関するセキュリティ研修の実施なども視野に入れ、企業として情報漏洩リスクを抑制するよう努めましょう。
【4】雑談ツールなどビジネス以外のコミュニケーションを軽視しない
テレワークに依る働き方は従業員同士の交流を阻害し、孤立化やテレワークうつなどのメンタル面の問題を起こすきっかけにもなり得ます。
生産性や効率性だけを重視するのではなく、業務外でコミュニケーションが取れる雑談ツールの導入や飲み会などのイベント開催も検討し、業務外の会話も促すよう努めましょう。
【5】継続的に業務分析を行い、ブラッシュアップする
まずは「テレワーク化できる仕事」と「テレワーク化できない仕事」を分類することが重要です。実際にテレワーク化してみて出てきた問題は随時解決し、継続的にブラッシュアップを行う必要があると心得ましょう。
テレワーク導入における他社の成功事例
■株式会社パルコ
育児・介護、病気などで、働き方や労働時間に制約がある従業員を中心にテレワークを導入。事業所勤務と併用しつつ、週15時間までの在宅勤務が可能としています。
■居宅介護支援事業所「ラ・クーラ」
テレワーク導入が難しいと考えがちな介護現場において、いち早く導入を行った山梨県で介護支援事業を展開する株式会社ラ・クーラ。開設当初からテレワークを導入しています。これまでは利用者の方を直接訪問してケアプランがきちんと機能しているかを見ていたモニタリングや面談等をテレワーク化することに実現しました。
■イオン株式会社
店長をはじめとする店舗管理職を対象に実施。テレワーク化できる業務とそうでない業務の仕分けをした結果、週1回は在宅勤務可能であることが分かり、難易度が高いと考えられていた小売業界においてテレワークの導入に成功しています。
まとめ
コロナ対策、コスト削減、労働生産性やワークライフバランスの向上……など、導入によって得られるメリットが多いテレワーク。課題やデメリットに対する対策を押さえておけば、企業としての魅力度も上がり、採用活動にも有効に活用することができます。
労働実態の把握、通勤社員と在宅社員の公平さの保ち方、ハイコンテクストなコミュニケーションの難しさ等、課題に対する対策はこちらで押さえておきましょう。
なお、転職者でも入社してすぐにテレワーク(リモートワーク)となる場合は丁寧なフォローが肝心です。心得ておきたいポイントを以下の資料にまとめていますので、こちらも併せて確認されると良いでしょう。
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