オープンブックマネジメントとは?公開による効果・注意点を紹介
母集団形成オープンブックマネジメント(Open Book Management)は、従業員に対しブック(帳簿)をオープンに(透明化)することにより経営のオーナーシップを意識させ、自分の業務をブック(帳簿)に反映させていく動機づけを行うことを目的とした経営手法です。
目次
オープンブックマネジメントの基本をチェック!
オープンブックマネジメントの効果
オープンブックマネジメントの注意点
オープンブックマネジメントの導入ポイント
まとめ
オープンブックマネジメントの基本をチェック!
オープンブックマネジメントは会社の財務情報をすべての従業員に公開し共有することで、従業員の経営に対する当事者意識を高め、目標達成や課題解決に向けた自律的な行動を促すことを目的としています。
財務情報の公開は経営の透明性を確保することに繋がり、会社と従業員の信頼関係の醸成と組織全体のモラル向上にも結びつくものです。
財務情報を従業員に公開し、経営に参加させるマネジメント方法
1990年代にアメリカで出版された「Open-Book Management」という書籍のなかで、従業員と財務情報を共有することで成功した企業事例が紹介され、オープンブックマネジメントという言葉が広く知られるようになりました。
事例にあげられた成功ストーリーは、経営不振に陥り経営改革を迫られた自動車部品会社のオーナーが、自社の窮状のありのままを知ってもらおうと従業員に決算書を公開したことがきっかけとなっています。
当初、経営不振は経営者の責任と考えていた従業員は、決算書に示された数字の意味を教えられ、自分の仕事の成果が決算書の数字にどう結びつくかを理解するようになると、自ら目標達成や業務改善の努力をするようになっていきました。
オープンブックマネジメントは会社と従業員の利害は対立するものではなく、利害を共ににし協力して利益を追求し、それを分かち合うという考え方を基本としています。
財務諸表を公開し従業員の財務リテラシーを高めるだけでは機能しない
オープンブックマネジメントは財務情報を従業員に向けて公開し、財務情報を理解できるように従業員を教育することと捉えられることが一般的ですが、従業員の携わる業務が決算書の数字に反映されていく道筋が理解されなければ意味がありません。
上場企業はIR情報を公開しており事業年度ごとの経営の結果を従業員も見ることができます。しかし、従業員が損益計算書と貸借対照表の意味を理解していたとしても、自らの日々の仕事と決算書に示された利益と経費、資産の増減がどう関連するのかは見えてこないでしょう。
企業規模の点では、プロフィットセンターとコストセンター※の単位が小さい中小企業のほうがオープンブックマネジメントを導入しやすいといわれ、起業した時点からオープンブックマネジメントを取り入れたベンチャー企業の成功事例も目にすることができます。
各階層の管理者や各部門の従業員にとって、自分でコントロール可能な業務領域が決算書のどの要素に結びついていくのかをブレークダウンする形でフィードバックすることが必要です。
※プロフィットセンター・コストセンター:収益を生み出す部門と費用のみが集計される部門の分類。プロフィットセンターも費用はかかるので、各部門をどちらとみなすかは企業によって異なる。
オープンブックマネジメントの効果
オープンブックマネジメントにより従業員に経営に対する当事者意識が生まれることで、制度や施策に頼らなくても、経営全体にプラスの効果をもたらす自律的な行動が促されることが期待できます。
経営に対する当事者意識が芽生える
「経営者の視点で考えろ」という言葉はビジネスマンであれば一度は耳にしたことがあるでしょう。オープンブックマネジメントでは、経営の結果を数字で表した決算書によって経営の全体像が示されることになります。
一人ひとりの従業員が自分の給与の源泉となる利益がどのようにして生まれ、そのためのコストがどこでどれくらいかかっていて、自分の関わっている仕事がそれにどう影響しているのかを理解すれば、自分が所属する会社の経営そのものが他人事ではなくなります。
そのなかで、自分に与えられている役割は何か、役割のなかで決算書の数字を改善させるためにできることは何かといったことが明確になり、雇われている従業員としての意識から、自ら経営に参加しているという当事者意識に変わっていきます。
業務改善に向けて自主的に行動ができる
オープンブックマネジメントにより、仕事の結果が数値という形でフィードバックされます。それが仕事の問題点を浮き上がらせ、望ましい結果を得るための業務改善に繋がることが期待できます。
目標となる指標を設定する管理手法として目標管理制度(MBO)やKPI(重要業績評価指標)の活用があげられますが、会社全体の評価となる財務指標と直接的には結びつかない点でオープンブックマネジメントとは異なります。
所属する会社全体に自分が貢献しているというインセンティブが、自律的な業務改善や目標達成のための努力に繋がっていきます。
組織全体の生産性向上に繋がる
オープンブックマネジメントの具体的な運用の方法として、各部門に求められる業績指標を短いサイクルで更新しながら、目標達成に向けて業務に取り組むというやり方が取られます。
結果を意識しながら業務を行うことで、そうでない場合と比較して効率があがり生産性が向上します。
オープンブックマネジメントの注意点
経営の透明性を実現するオープンブックマネジメントは、財務情報をオープンにしない場合にはない配慮が必要になることも考えられます。企業側と従業員側の信頼関係が毀損されるような状況を作らないことがポイントです。
経営悪化により組織全体のエンゲージメントが低下するリスクがある
全員による経営努力が結果にあらわれない状況が続いた場合に、組織全体の士気が低下することはやむを得ないことかも知れません。しかし、それを隠すことせずに組織全体で共有しようとするのがオープンブックマネジメントの基本的な考え方です。
隠すことで疑心暗鬼が広がり根拠のない他責に結びつくことを考えると、オープンブックマネジメントにより透明性を保ちながら、客観的なデータをもとに改善策を検討できるメリットのほうが大きくなります。
利益は公正に分配することが重要
経営の透明性を重視するのがオープンブックマネジメントである以上、利益の分配についても公正さが求められます。従業員それぞれの貢献度に応じた成果報酬の仕組みを整備することと共に、チーム全体の成果に対して一律のボーナスを支給するといった仕組みづくりも有効です。
オープンブックマネジメントの導入ポイント
オープンブックマネジメントは財務情報を従業員が理解することを求めるものです。多くの場合、一般の従業員が財務諸表を読めることは少なく、地道な形で教育していくことが必要になります。
また、どのレベルの情報をどの従業員に対して公開すべきか、といった点も検討の必要があります。
財務リテラシー向上のための研修を行う
従業員が財務関連の知識を身につけるにあたり、経営の全体像を把握するという点では、個々の業務の周辺に関わる数値のみならず、財務情報すべてに関する理解を深めることが理想的でしょう。
それに対し、例えば製造業であれば、原価率や生産リードタイムといった現場に関わる数値が収益やコストにどう結びついていくかといったところからスタートするという考え方もあります。
業種や職種、ポジションなどによって、それぞれの従業員にとって重要な財務情報は異なります。従業員に対してどういう形でゴールを示すことができるか、日々の業務のなかの何が重要なのか理解できる形で財務関連の知識を高めていくことが求められます。
会社の細かい財務情報まで全て公開する
実際にオープンブックマネジメントを採用している企業では、個々の従業員の給与までオープンにしているケースや、部門別・階層別にアクセスできる情報を分けて公開しているケースなどが見られます。
オープンブックマネジメントの制度運用は、個々の企業の実情に合わせて行うことが現実的です。
業務への改善案を出し合って共有する
従業員が当事者意識を持ち自律的に目標に向けた行動を取れるようになることがオープンブックマネジメントの最大の目的です。
会社と従業員の間の信頼関係が高まることは、個々の従業員間や部門間の協力体制にも好影響を及ぼすと考えられます。
財務情報をベースに会社全体の問題点を共有し、改善のための建設的な議論ができる企業風土を作っていく必要があります。
まとめ
オープンブックマネジメントには透明性と従業員側のリテラシー、それに基づく権限移譲と報酬面での公平性が重要といわれています。最も意識されるべきことは会社と従業員の信頼関係を築くことです。
従業員の当事者意識が高まることはエンゲージメントの向上にも繋がり、オープンブックマネジメントの導入は多くの企業にとって導入検討の価値があります。
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