モチベーションマネジメントとは?下げる要因や解説策も紹介

母集団形成

モチベーションは「やる気」のことです。人事領域でモチベーションという言葉が使われる場合は「仕事のやる気」のことを指し、モチベーションマネジメントは「仕事にやる気を持ってもらうこと」という言い方がわかりやすいでしょう。

「やる気」と「モチベーション」は異なるという議論もありますが、ここでは同じものという立場を取ります。

「仕事にやる気」が生まれる理由や原因は、個人によって異なり、また、仕事の内容や報酬、環境などによっても変わります。

その理由や原因を解き明かすことで、仕事への動機づけに活かそうとするのがモチベーションマネジメントの考え方です。この記事では、モチベーションマネジメントについての基本的な内容を解説します。

目次

モチベーションマネジメントとは
モチベーションを下げる要因
モチベーションを高める方法
モチベーションマネジメントの導入事例
まとめ

モチベーションマネジメントとは

Warehouse worker and manager looking at laptop in a large warehouse

企業の生産性に影響を与える要素として、従業員のモチベーションが取り上げられるようになったのは、20世紀初頭、アメリカで行われたホーソン実験※が最初といわれています。

モチベーションマネジメントは経営管理の中心的課題として、第二次世界大戦以降1980年代にかけて多くの研究がなされ、この時代に研究された理論が企業の職務設計に活かされています。

モチベーションは「動機づけ」といわれることが一般的ですが、モチベーション理論のなかでは「目標に向けて行動を方向づけ、活性化し、そして維持する心理的プロセス」というのがモチベーションの定義として定着しているものといわれています。

モチベーションマネジメントは、企業が組織として従業員のモチベーションを管理することであり、組織の目標に沿うように従業員のモチベーションに働きかけて行くことを意味しています。

※ハーバード大学エルトン・メイヨー教授がウェスタン・エレクトリック社の工場で1927年から行った社会科学的実験。作業条件に加えて労働者の心理的要因が生産性に影響することを明らかにした。

モチベーションには「内発的動機」「外発的動機」がある

人間がなんらかの行動をする時には動機(行動を起こすきっかけや理由、目的)が存在します。

「仕事」に対する動機を考えてみると、「報酬を得るため」「仕事そのものが好き」「昇進して認められたい」「社会的な繋がりが欲しい」「会社に行かないと怒られる」「人間として成長できる」など、人それぞれによって異なり、その要素は一つだけではないはずです。

就職した頃は「会社に行かないと怒られる」ことが仕事の動機であったものが、経験を積むに従って、「仕事そのものが好き」になったり、「人間として成長できる」ことに価値を見出したりすることで、仕事に対する動機が変化することも起こります。

モチベーションは、「仕事そのものが好き」というような、自らの欲求や興味・関心などにもとづく内発的動機と、「報酬を得るため」「会社に行かないと怒られる」など、外部からもたらされる要因にもとづく外発的動機の大きく2つに分けられます。

従業員満足度や生産性の向上などの効果が期待できる

言うまでもなく、従業員の仕事に対するモチベーションが高い方がパフォーマンスも向上し、その結果として企業の生産性にプラスに働きます。

モチベーション理論の一つ「目標設定理論」では、目標を達成するための方法や手段に裁量権がある状況下であれば、「目標が具体的」で「一定程度の困難」を伴い「与えられた目標より自分の意思で決めた目標」であるほど、目標達成に向けた行動のパフォーマンスが高まることが実証されています。

また、特定の行動による結果を実現できる主観的確率の高さ「期待」と、行動により得られる結果の価値や魅力である「誘意性」の大きさを掛け合わせたものがモチベーションであるとするのが「期待理論」というモチベーション理論です。

「期待」と「誘意性」のどちらかが欠けていれば、モチベーションが発生しませんが、目標の実現が自分にとって価値のあるものであり、目標を達成できる可能性が高そうなものであるほど高いモチベーションを生み出すことができるとしています。

期待理論の「誘意性」は、自ら望む価値や魅力であり、目標が達成されることによって仕事に対する満足感は高められます。後述する「二要因論」のなかでも、仕事の満足に関わる要因があげられています。

モチベーション理論を応用し、従業員にとっての目標の価値や難易度に合わせて目標を設定し、モチベーションを高めていくことがモチベーションマネジメントの考え方の一つです。

モチベーションを下げる要因

従業員のモチベーションを下げる要因も、モチベーション理論によって説明できます。その例をいくつかご紹介します。

労働環境が整っていない

モチベーションを高める要因と下げる要因を研究した理論に「二要因論」があります。

仕事に満足を与える要因を「動機づけ要因」、不満足を与える要因を「衛生要因」とし、「動機づけ要因」が高いほどモチベーションが高まるのに対して、「衛生要因」は満たされなければモチベーションが下がり、満たされてもプラスには働かないとするものです。

「二要因論」で「動機づけ要因」「衛生要因」とするものはそれぞれ以下のものです。

動機づけ要因 衛生要因
● 達成
● 承認
● 仕事そのものへの興味
● 責任と権限
● 昇進や成長
● 会社の方針と管理体制
● 監督
● 給与
● 対人関係
● 安全の保証
● 作業環境
など

給与が少ない、対人関係が良くないなど衛生要因が満たされなければモチベーションが下がりますが、仮に給与や対人関係に満足していたとしてもモチベーションを高めることにはなりません。

モチベーションマネジメントの観点からは、衛生要因は最低限満たすべきものであり、従業員のモチベーションを高めるためには動機づけ要因に働きかけることが重要とされています。

目標設定が合っていない

先にあげた「期待理論」で述べたように、目標の高さをどう捉えるかがモチベーションに大きく影響します。

目標が高すぎれば、結果を手に入れられる可能性が低いのでモチベーションは高まらず、確実に実現できることは目標としての意義や価値を感じられないため、達成意欲は起こりません。

目標設定が従業員の能力や意欲の程度に合ったものでないと、モチベーションを低下させることになってしまいます。

評価や待遇に不満がある

会社からの評価が自分の認識と違うことは、管理体制や上司への不満に繋がり「二要因論」の「衛生要因」が満たされないということになります。待遇への不満も衛生要因に当てはまりモチベーションを下げる要因の一つとなっていまいます。

モチベーションを高める方法

モチベーション理論にもとづいたモチベーションを高める方法は以下のものがあげられます。

従業員の成長に合った目標設定をする

「目標設定理論」と「期待理論」で述べたとおり、目標が実現不可能ではないという点を前提とし、容易に実現可能なものでなく、ある程度の困難がありながら実現できそうだという見通しが立つことが目標設定のポイントです。

さらに、目標を達成すれば「二要因論」の「動機づけ要因」の一つが実現され、それが自らの成長に繋がることであれば「動機づけ要因」をさらに増幅します。

スキルアップできる機会と場所を提供する

スキルアップという個人の能力に対する欲求に言及したモチベーション理論に「達成動機説」があります。

達成動機説では、従業員のモチベーションには「達成」「権力」「親和」の3つの欲求が存在するとし、達成動機が強い人の特徴として「個人の進歩」を最も重視する傾向があることがあげられています。

達成動機が強い従業員に対しては、個人の能力や成長を促す機会と場所を提供することが、モチベーションを高める方法として有効です。

適材適所な人員配置をする

職場が自分にあっているかどうかに関連するモチベーション理論に「職務特性理論」があります。職務特性理論では5つの職務特性が従業員のモチベーションに3つのプラスの効果をもたらすとするものです。

5つの職務特性

スキル多様性 その仕事に必要とされるスキルが多様であるこto
タスク一貫性 その仕事全体への関わり方の度合い
タスク重要性  その仕事の周囲への影響度合い
自律性  裁量が与えられている程度
フィードバック  結果に対する評価と知識

3つの心理状態

仕事の有意味性     自分の行う仕事の価値や意義
責任感   責任を負担しているという誇り
結果に関する知識   フィードバックにより蓄積されるノウハウ

従業員を能力や適正の点から配置を検討するとともに、与えられた仕事の種類やポジションが5つの職務特性を満たすことがモチベーションの向上をもたらします。

モチベーションマネジメントの導入事例

モチベーションマネジメントに取り組んでいる企業と取り組みの内容に関する事例をいくつかご紹介します。

事例1:楽器メーカーY社・デザイン部門

担当者のモチベーションが高まる状況は、東京デザイナーズウィークなど外部展開のある活動時、上司との対話のなかで理解を得られた時などに見られる。

それを踏まえ、モチベーションマネジメントは権限移譲し、裁量と責任を持たせることを中心に検討。評価指標は定量評価を用いず、創造性や問題解決、デザイン活動の進捗度などの定性評価を行う。デザイン賞タイトルへの応募促進、社長表彰などがモチベーション向上のための施策としている。

事例2:検索エンジン大手G社

目標管理手法としてOKR(Objectives and Key Results)を活用。全社・部門・チーム・個人すべての階層で目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)の四半期ごと公開と評価を実施。

目標は個人の信念や価値観を反映させるものとし、組織の目標と個人の目標を関連付けることで、目標に対する個人のモチベーションを高める。

事例3:ネットTV配信A社

リモートワークによるメンバー間のコミュニケーションの希薄化を懸念し、パルスサーベイを実施。エンゲージメント低下の兆候をスコアにより把握するとともに、コメントから吸い上げた組織課題や個人の困りごとに対して対策を実施している。モチベーション低下を防ぐ仕組みとして活用。

まとめ

モチベーション理論やモチベーションマネジメントという言葉を使うと、何か特別なことのように感じられます。しかし、モチベーション理論が提唱する「やる気」の発生やプロセスは理屈として経験的に理解できるものですし、モチベーションマネジメントは職務の設計や施策に既に多く取り入れられています。

モチベーションマネジメントは実効性のあるものにすることが難しい部分があるのも事実です。経営サイドから積極的にコミットしていくことと試行錯誤が求められます。

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