残業代、休日出勤、有給休暇…回答に気をつけたい人事への問い合わせとトラブル回避策
選考辞退「残業代の割増、代休や振替休日、退職金…これってどうなっているんですか?」困ったらとりあえず人事へという 雇用者の権利に関する細かな問い合わせに困惑した経験はないでしょうか。面倒に感じても、ごまかさず、あわてず、対応しましょう。また、事前に対策をとっておくことで回避できる質問もあります。
目次
残業代や休日出勤割増手当、退職金など問い合わせの多いQ&A
「残業代の支払い、正しいですか?」
「振替休暇と代休の違いってなんですか?」
「有給休暇はいつでも自由に使えますよね?」
「2週間前に申請すれば退職できますよね?」
権利を主張されたとき、揉めないためには
解読困難な契約書にはわかりやすい解説を
不安を溜めさせない。いつでも解決できるように
知識を新しくし、常に就業規則の見直しを
まとめ
残業代や休日出勤割増手当、退職金など問い合わせの多いQ&A
まずはよくある社員からの質問と回答例をまとめてみました。
「残業代の支払い、正しいですか?」
残業代の計算は、複雑ですよね。ややこしいがゆえに、社員からもよく寄せられる質問です。「オーバーワークした分、きちんと給与に反映されているのか」と、気になる気持ちも理解できます。社員が自分でも確認できるよう、残業代の算出方法をわかりやすく伝えられるようにしておきましょう。
<残業代の計算式>
基本的な残業代の計算式は以下の通りです。
残業代=①残業時間 × ②1時間あたりの基礎賃金 × ③割増率
それでは、それぞれの数字の出し方をみていきましょう。
①残業時間残業時間とは、所定労働時間を超える労働時間のことです。全体の労働時間から所定労働時間を引いて算出したものが残業時間となります。所定労働時間は、 雇用契約や就業規則で決められていますが、「1日8時間、1週間で合計40時間まで」という法律上の上限があります。
②1時間あたりの基礎賃金多くの社員は時給ではなく、月給◯◯万円という契約で働いているかと思います。それでは、1時間あたりの基礎賃金はどのように算出するのでしょうか。
まず月の基礎賃金の額を把握します。「基礎賃金」とは月給から一部の手当・ボーナスなどが差し引かれたものです。例えば1ヶ月の給料が25万5000円で、その内訳は、基本給が21万円、役職手当が3万円、家族手当が1万円、通勤手当が5000円であるとします。この場合、基礎賃金は、給料の合計金額から家族手当と通勤手当を差し引いて計算します(役職手当は基礎賃金に含まれるため差し引きません)。
月の基礎賃金が出たら、その額を1か月間の所定労働時間で割り、1時間あたりの基礎賃金を計算します。ただし、月によって休日数が違うため、1か月間の所定労働時間は毎月違うのが通常です。よって、1か月間の所定労働時間は1年間の平均から求めます。
③割増率
割増率は、「法定労働時間を超えた残業か/深夜の残業か/法定休日の残業か」によって最低の基準率が異なります。
ア)法定労働時間(1日8時間、1週間で合計40時間)を超えた場合
割増率を1.25倍以上として計算します。
イ)深夜残業にあたる場合
さらに、この法定労働時間外の残業が深夜(午後10時から午前5時まで)にあたる場合、割増率は1.5倍以上になります。また、大企業※では、法定休日以外の労働時間が法定労働時間を1か月あたり60時間以上超えた場合、その超えた部分の残業については、1.5倍以上で計算します。深夜残業にも該当する場合には、1.75倍以上として計算します。
参考:大企業の定義 |
ウ)法定休日の残業
法定休日に働いた時間は全て残業時間になります。割増率は1.35倍以上で計算します。深夜残業にも該当する場合は1.6倍以上になります。
以上が基本的な残業代の計算方法ですが、そもそも所定労働時間が週40時間に満たない社員が所定労働時間を超えて働いた場合は「法廷内時間残業」となり、1時間あたりの基礎賃金が支払われていれば問題ありません。ただし、会社によっては割増賃金を設定しているので確認が必要です。また、変形労働時間制やフレックスタイム制の際は、また計算方法が異なってきます。
みなし残業制度(固定残業制度)の場合はどうなる?
会社や職種によっては、一定の残業時間分の残業代を最初から給料に含めた「みなし残業制度」を取り入れている場合があります。外回りが多い営業職のように労働時間を把握することが難しい従業員に対して、実際の労働時間に関わらず一定の労働時間を働いたものとみなして賃金を支払う制度です。
この場合、みなし残業時間を超えて働いた分は、残業代として上乗せして支払わなければなりません。みなし残業制度を利用するためには、具体的に固定残業代の金額と残業時間を明記する必要があります。例えば、「月給25万円※50時間分の固定残業代5万円を含む」というような形です。さらに就業規則や賃金規程に記載するだけでなく、従業員がいつでも見られる状況にしておかなければなりません。
「振替休暇と代休の違いってなんですか?」
振替休日と代休は本来休みの日に出勤した代わりに取得できる休暇ですが、労務管理上の取り扱いは異なります。よって賃金計算の仕方も異なってきます。
- 残業時間の対象とならない「振替休日」
「休日の振り替え」とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすることを言います。つまり休日と労働日を入れ替えることになります。
例えば土日が休日と定められていた契約で日曜日に働き、翌月曜日に振り替えとして休んだ場合、日曜日が「労働日」となり、月曜日が「休日」扱いとなります。従って、日曜日に労働した分については「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
ただし例外として、入れ替えた労働日より1週間以上超えてから振替休日を取り、結果としてその週の総労働時間が40時間(1日8時間)を越えてしまった場合、超過分の25%の割増賃金は必要となります。また、振替休日とする日は、労働日の前後どちらでも設定できますが、休日労働をする前日までに前もって指定しておく必要があり、後から定めた場合は振替休日となりません。
- 残業時間の対象になる「代休」
一方、「代休」とは、休日労働をした後に、その「代償」として以後の特定の労働日を休みとするものです。従って、労働した日は「休日に働いた日」となり、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。
注意しておきたいこと
- 未消化の振替休日や代休をためすぎない
振替休日の有効期限は2年と定められていますが、厚生労働省は、「振り替えるべき日は、振り替えられた日以降、できるだけ近接していることが望ましい」という見解を示しています。未消化の振替休日や代休が溜まりすぎると、労働基準法違反になってしまいます。少なくとも1ヶ月以内、遅くても3ヶ月以内には振替休日を与えるのが望ましいでしょう。
- 代休の強制取得はさせられない
休日出勤をした後に休日を取得する際、従業員は「有給休暇」または「代休」として休むことができます。企業側としては、代休のほうが有給休暇よりも賃金の支払いが少なく、人件費を節約できるというメリットがあるため、「有給休暇よりも代休の取得を優先する」という暗黙の了解を求めている場合もあります。
反面、なるべく有給を先に消化したいと考える従業員も多いでしょう。労働基準法上では、従業員は理由を告げることなく有給休暇を申請でき、会社はそれを拒否できないと定められています。有給休暇を申請した社員に対して、代休に変えるように強制することは違法になるので注意しておきましょう。
「有給休暇はいつでも自由に使えますよね?」
「使いたいときに自由にとれるのが有給ですよね?」と有給休暇の取得に関する質問を受けることも多いでしょう。タイミングによっては「その日に休まれると困る」と思うこともあるのではないでしょうか。その際、会社は従業員に対して拒否や変更の要請をすることができるのでしょうか。
まずは制度を確認しておきましょう。
「年次有給休暇」とは
- ・労働基準法第39条で認められた従業員の権利
- ・賃金が支払われる休暇
- ・雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上出勤した場合に、雇入れの日から6ヶ月時点で10日間付与。その後は1年ごとに付与
また、2019年4月より最低でも年5日取得させることが雇用主の義務となっています。この5日の取得に関して、雇用主は従業員の希望を尊重した上で時季を指定して取得させなければなりません。5日以上の取得日に関しては、時期を指定する必要はなく、また指定することもできません。
取得日は、会社から変更要請できる場合もある
有給休暇の取得日・理由は従業員の自由であり、基本的に会社は申請を拒否できません。ただし、「事業の正常な運営を妨げる場合」は、「時季変更権」を主張することが可能です。具体的には以下のような場合です。
- ・繁忙期や決算期にあたる
- ・同じ日に有給取得者が多数重なってしまう
- ・その従業員にしかできない業務があり、その日に休まれると会社の業務に支障をきたす
注意すべきは、有給休暇の取得そのものを拒否することはできず、できるのは「取得日の変更」であるという点です。また、単に「忙しい」だけでは、いつでも忙しいと言える場合がありますので、理由にはなりません。
有給休暇の取得に関してはトラブルになりやすく、裁判に発展したケースもあります。とはいえ、会社側として時期の変更をお願いしたい時もあるでしょう。スムーズに時季変更権を行使するには、就業規則に有給休暇および時季変更権についても記載しておいたり、計画年休を整備したりしておくなどの対応が有効です。
「2週間前に申請すれば退職できますよね?」
退職時期に関しては雇用契約に期間の定めがあるかないかで異なってきます。
- 雇用契約に期間の定めがない場合
正社員などのように、契約期間があらかじめ決まっていない場合、民法では「解約の申し入れ後2週間で終了する」とされています。つまり、退職したい日の2週間前に届け出ればよく、就業規則に1ヶ月前や3ヶ月前までに退職を申し入れること、と記載があっても法律が優先され無効となります。
- 雇用契約に期間の定めがある場合
契約社員などのようにあらかじめ期間が決まっている場合は、契約期間の途中での退職(辞職)は原則的にできません。ただし法律上は「やむを得ない事由」がある場合のみ、契約期間中でもすぐに退職が認めらます。やむを得ない事情について詳しい決まりはありませんが、妊娠や出産、介護などの個人的な事情を考慮する企業は多いようです。
- 期間の定めの有無に関わらない場合
期間の定めの有無に関わらず、「入社してみたら、雇用契約の内容と業務の実態が大きく異なっていた」という場合は、即時に退職することが認められます。具体的には以下のような理由になります。
- ・雇用契約に記された給料と実際の金額が違う/支払われない
- ・「完全週休2日制」と記載されていたのに、週1日しか休めない
- ・残業代が支払われない
多くの会社では、引き継ぎや新しい人材の補充の期間を考慮し、就業規則などで1ヶ月前や3ヶ月前までに退職を申し入れること、と定めています。しかし、会社の就業規則や雇用契約よりも法律が優先されるため、従業員がどうしても2週間後に退職したいと申し出をすれば受け入れなければなりません。
どういった事情があるのかをヒアリングし、会社としてフォローできることを対応することで、双方納得のいく退職時期を定められることもあります。権利のゴリ押しをされぬよう、日頃から社内環境を整えておきましょう。
権利を主張されたとき、もめないためには
上記のように、休日や退職に関して労働者の権利は法律で定められており、どんなに就業規則で別のルールを設けていても、権利を主張されれば会社側は断ることができません。社員の申し出を無視して、むりやり会社側の要求を押し通せば訴えられることもあります。
とはいえ、急な退職や休暇は、会社にとって打撃となることもあるでしょう。またいちいち人事に問い合わせをされては、対応に時間がとられます。トラブルを回避し、気持ちよく業務を進めるためのポイントをご紹介します。
解読困難な契約書にはわかりやすい解説を
入社時の契約関連は内容が多く見落とされがちです。専門的な知識がなければ理解できないものもあります。目を通してみたものの不明な点があれば、「とりあえず聞いてみよう」と気軽に人事に相談をする従業員もいるでしょう。そんなとき、「契約書に書いてありますよね。自分で確認してください」と単に突き放してしまうと、不安や不信感を高めてしまうだけです。
残業など給与に関するものは、算出方法がややこしいものが多くあります。口頭で伝えてもすぐに理解できないため、誰でも理解できるよう図解などを入れたツールにしておくと良いでしょう。事前によく聞かれそうな箇所はFAQなどを作り、わかりやすく解説しておくことでよくある質問を回避することができます。
不安を溜めさせない。いつでも解決できるように
「資料を確認してくださいと言われたが、どこで何を確認して良いのかわからない」
「就業規則に書いてありますと言われたが、何ページに書いてあるのか見つけられない」
といった悩みを持つ従業員もいます。「時間があるときに確認しよう」と思いつつも日々の業務を優先することで後回しになり、未解決のまま不安や不信感だけが積もっていくケースも珍しくありません。わだかまりを抱えたままでは業務に身も入らないでしょう。
どんなに資料として用意しておいても、従業員の理解をうながすものでなければ意味がありません。従業員が「あれってどうなっていたかな?」と疑問に思った時にいつでもすぐにクリアにできるよう、資料の置き場所を明確にしておいたり、検索機能を整えたりしておきましょう。
知識を新しくし、常に就業規則の見直しを
労働基準法など雇用にまつわる法律は時流に合わせて常に変化します。人事として基本的な知識を理解しておくのはもちろん、最新の情報をキャッチアップしておくようにしましょう。その上で就業規則などの修正が必要であると感じたら即座に社内に提案できるようにしておき、修正後は速やかに従業員に周知しましょう。何かが起こってからではなく、トラブルが起こる前に準備しておくのも人事の大切な仕事です。
まとめ
人事に寄せられる質問の多くは不安や知識不足からくるものです。人事は、多くの従業員にとって一度入社した後は接する機会の少ない存在です。しかし、いざとなったときに「頼れる第三者」でもあります。質問や相談を受けた際には丁寧に対応するのはもちろんのこと、組織と社員のどちらとも良好な関係を築けるように、日頃から労働基準法に関する情報を収集しておきましょう。
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