コンピテンシー面接で応募者の本質を見抜く!質問例とポイント2つ
選考辞退コンピテンシー面接は、応募者の本質を見抜くことができると言われている面接手法です。また、面接官の直感や経験に基づく主観による判断ではなく、客観的な基準で評価できるため、精度の高い採用手法として多くの企業で導入されています。
本記事では、「コンピテンシー面接とは」をはじめ、メリット・デメリット、質問例や実施する際のポイントなどを分かりやすくお伝えします。
目次
コンピテンシー面接とは
コンピテンシーの原点
コンピテンシー面接のやり方
コンピテンシー面接のメリット
応募者の行動から本質を理解できる
安定した面接を実施できる
入社後の活躍をイメージできる
コンピテンシー面接のデメリット
評価軸の設定に手間がかかる
柔軟性が損なわれるリスク
コンピテンシー面接の質問例
Q:どのような業務で何を担当しましたか?(状況を問う)
Q:業務内での課題や問題点に気が付いたきっかけは?(課題を問う)
Q:解決のためにどのように行動しましたか?(行動を問う)
Q:その結果どのように変化しましたか?(結果を問う)
コンピテンシー面接のポイント
ハロー効果に注意する
人事評価の軸を合わせる
まとめ
コンピテンシー面接とは
コンピテンシーとは「優秀な成果をあげる人に共通する行動特性」を意味します。これを評価基準の一つとして活用し、応募者がその行動特性を持ち合わせているかを見極めるのが「コンピテンシー面接」です。
コンピテンシーの原点
日本におけるコンピテンシーの概念は、1970年代前半に米国文化情報局(USIA)職員の選考をきっかけに、誕生した考え方が原点にあります。
当時は、IQの高い人材が優秀であると判断し採用していましたが、調査の結果、IQの高い人が必ずしも仕事で高いパフォーマンスを発揮する訳ではないことがわかりました。その後、ハーバード大学の教授によってインタビューなどの詳しい調査が行われ、ハイパフォーマーに共通する行動特性や思考パターンを導き出すことに成功。この調査結果がコンピテンシー面接の原点になっています。
コンピテンシー面接のやり方
コンピテンシー面接では、過去の経験や取り組みについて深く掘り下げ、応募者が「何をどのように解決してきたのか」といった行動の意図や背景、その効果や結果を確認していきます。複数の異なる経験について質問を重ねることで、共通する行動特性=応募者の本質を確認することが可能です。また、その応募者の行動特性と、面接前に設定した評価軸(自社で活躍する人材の行動特性から導き出したコンピテンシーモデル)とを照らし合わせ、どの程度合致しているのかを見極めて、採否を判断するのです。
なお、Googleが取り入れていると言われる採用手法「STAR面接(行動面接)」の質問方法も、コンピテンシー面接と同様です。こちらの記事では、STAR面接を取り入れるべき企業の特徴や具体的な質問の作成の仕方をご紹介しています。コンピテンシー面接やSTAR面接を取り入れるべきか検討している方は参考にしてみてください。
コンピテンシー面接のメリット
一般的な面接ではなく、コンピテンシー面接を導入するのはなぜでしょうか。3つに分けてコンピテンシー面接のメリットを説明していきます。
応募者の行動から本質を理解できる
過去の経験や取り組みについて質問を重ねていく手法のため、応募者が嘘や誇張表現を混ぜると話の整合性がとれなくなり矛盾した内容になっていきます。つまり、深く掘り下げることによって応募者の本音を引き出すことができ、本質的な考えを理解できるのです。
安定した面接を実施できる
評価基準を定めていても、面接官によって評価がぶれてしまうことがあります。面接官の主観によって応募者の印象が左右されてしまうためです。しかし、コンピテンシー面接では、質問の内容や手順も決まっているため、誰が面接官になっても客観的な評価ができます。自社にマッチした人材を面接で落とすことなく採用できるのです。
入社後の活躍をイメージできる
コンピテンシー面接は、過去の経験や取り組みについて「なぜそのような行動をとったのか」その意図や背景にスポットを当てて質問を重ねていきます。応募者の回答が自社の求めるコンピテンシーと合致するかを比較し、合致度合いが高ければ入社後のイメージもしやすく活躍の期待も高まります。
そのため、入社後のミスマッチ防止や、採用コストの削減にもつながるでしょう。
コンピテンシー面接のデメリット
応募者の本質を引き出すことができるコンピテンシー面接ですが、導入前にデメリットについても理解し、対策することが重要です。具体的に2つのデメリットを挙げ、それぞれの対策方法についても解説します。
評価軸の設定に手間がかかる
コンピテンシー面接を行うためには、採用したい職種や役職ごとに評価軸の設定が必要です。そのためには、それぞれの立場で活躍している人材をピックアップし、「なぜそのような行動をしたのか」背景や理由をヒアリングしなければなりません。そして、その回答を分析し共通点を見つけ言語化する必要があります。
また、面接官が評価しやすいように、行動特性を5段階程度にレベル分けし、各段階の行動例を定義する必要もあるでしょう。ヒアリング対象者が無意識にとっている行動が成果につながっていることもあるため、評価軸に加えるかどうかの判断が難しいという側面もあります。
なお、この評価基準の設定方法についてイメージが付かないという方も多いでしょう。こちらの記事では、メーカー営業職の採用面接を例に、評価軸の設定方法をご紹介しています。具体的にどのようにレベル分けすればいいのか一目でわかるので、自社の評価軸を設定する際の参考にしてみてください。(以下は評価設定の例です)
大切なのは、焦らずにスモールスタートすることです。小さな気づきにも目を向けることで、少しずつ共通点の輪郭が見えてきます。
また、これらの作業を採用担当者だけで完結するのではなく、部署全体を理解しマネジメントしている現場社員の意見も聞いて設定していくことをおすすめします。そうすることで、より適切な評価軸を設定することができるでしょう。
柔軟性が損なわれるリスク
明確に評価軸を設定することで、誰が面接官になっても客観的に評価できるなどのメリットがある一方で、採用する人材が偏り柔軟性に欠けるというリスクもあります。社内で人材の同質化が進むと、思考の硬直化につながり新たな発想が生まれづらくなるため、組織力低下に陥る可能性も否定できません。
このようなリスクの回避策として、例えば、コンピテンシー面接を行う職種を限定するのも一つの手です。数年ごとに面接手法を変更するのもいいでしょう。
大切なのは、導入前にコンピテンシー面接のメリット・デメリットを理解し、対策を講じることです。他社も導入しているから、流行っているからという理由で導入するのではなく、「いま自社で採用したい人材はなぜコンピテンシー面接が適切なのか」を考えましょう。
コンピテンシー面接の質問例
実際の面接では、大きくわけて4つのテーマ「状況」、「課題」、「行動」、「結果」の順に質問をしていきます。質問例を参考に、流れに沿って質問の意図やポイントについてみていきましょう。
Q: どのような業務で何を担当しましたか?(状況を問う)
コンピテンシー面接では、上記のように「状況」について質問されます。その他にも、
- 「チーム構成を教えてください」
- 「どのような権限や責任を持っていましたか」
などもよく使われる質問例です。面接官は、応募者の過去の経験や取り組み事項の状況、役割について理解することから始めましょう。
この段階で内容を把握していないと、掘り下げて質問していく際に的外れになってしまう危険があります。話のテーマやシチュエーション、本人の役割についてしっかりと理解するまで質問しましょう。
Q:業務内での課題や問題点に気が付いたきっかけは?(課題を問う)
状況を把握したあとは、課題に関する質問をしていきます。
- 「掲げていた目標を教えてください」
- 「その取り組みで一番大変だった、辛かったことはなんですか」
といった質問でもいいでしょう。
ここでは、何を課題と感じたのかを確認することはもちろん、その課題に気付いた背景について知ることが大切です。背景を知ることで、なぜそのように考えたのかという本人の思考が見えくるためです。
Q:解決のためにどのように行動しましたか?(行動を問う)
- 「解決するためにたてたプランを教えてください」
- 「一番効果的な行動はなんだったと思いますか」
このような質問から、課題解決のためにとった具体的な行動がわかります。行動内容も重要ですが、ポイントはなぜそのようなプランを立てたのか、なぜそのような行動をとったのか背景を知ることです。
その行動をとった動機や行動に至った経緯、心の動きまでも知ったうえで評価するのがコンピテンシー面接です。面接では、判断材料につながる「行動」に関する情報をできるだけ多く引き出します。そして、「なぜですか?」「具体的にはどういうことでしょうか?」など回答を掘り下げ、核心に触れるよう心がけましょう。
Q:その結果どのように変化しましたか?(結果を問う)
最後に質問するのは効果・結果についてです。
- 「その課題はどのくらいの期間で解決できましたか」
- 「メンバーなど周囲の人の反応はどのようなものでしたか」
- 「反省点を挙げるとしたらそれはなんですか/またなぜそう思うのですか」
という質問の仕方も有効です。行動に対して得られた結果が期待している通りの内容だったのか、結果の再現性は期待できるか、その行動特性のどのような点が今回の求人に合致しているのか/していないのか、などを確認しましょう。
小さなポイントであってもメモに残しておけば、面接官同士の評価すり合わせの際に新たな発見があるかもしれないのでおすすめです。
コンピテンシー面接のポイント
コンピテンシー面接を実施するにあたって、特に注意したいポイントは2つあります。コンピテンシー面接について理解を深め、正しい方法で実施しなければ採用成功にはつながらないでしょう。しっかりとポイントをおさえ、面接準備をすることが大切です。
ハロー効果に注意する
ハロー効果とは、評価をする際に目立つ特徴に大きな影響を受け、他の特徴に関する評価が左右されてしまう現象のことです。ハロー効果にはポジティブ効果とネガティブ効果があります。
ポジティブ効果 |
1つの良い印象に引きずられ他の特徴も高く評価してしまうこと | 例)「優秀な経歴だから」「挨拶がしっかりでき第一印象がよいから」という理由だけで、活躍する人材であると高く評価すること |
ネガティブ効果 | 1つの悪い印象に引きずられてしまい他の特徴も低く評価してしまうこと | 例)「声が小さい」という印象で業績を低く見ること |
ハロー効果にならないためには、複数の面接官で実施することが効果的です。一人ではなく、複数人で判断することにより、客観的に評価できます。また、面接ではできるだけ先入観を持たずに、公平公正に評価することを意識しましょう。
また、ハロー効果に限らず、面接官の無意識の偏見により応募者の印象が左右されてしまうことがあります。これをアンコンシャス・バイアスと呼びます。こちらの記事では、アンコンシャス・バイアスの特徴や実例、対策方法をご紹介しています。より公平でクリアな面接を実施する参考にしてください。
人事評価の軸を合わせる
コンピテンシー面接を実施する際は、「評価軸」に沿って判断し採否を決定します。入社後のミスマッチを防ぐためにも、その「面接時の評価軸」と「入社後の人事評価軸」を合わせることが大切です。この軸が異なると、面接時に高い評価を受けた特徴が入社後には評価されないといったねじれが生じ、本人も会社もミスマッチを感じてしまいます。
こちらの記事では、経営戦略も絡めた人材要件の設定方法をご紹介しています。採用時のみならず、将来的に活躍する人材を得るために、どのような設定を行い、運用すればよいのかわかります。入社後の早期離職につながらないよう、面接の評価軸とその後の評価軸がマッチしているか、設定時に必ず確認するようにしましょう。
まとめ
コンピテンシー面接とは、「優秀な成果をあげる人に共通する行動特性」を応募者が持ち合わせているかどうかで判断する採用手法です。導入するメリットは大きく分けて3つあります。
- 応募者の行動から本質を理解できる
- 安定した面接を実施できる
- 入社後の活躍をイメージできる
実施方法は、「状況」、「課題」、「行動」、「結果」の順に過去の経験や取り組み事例を掘り下げ、その行動に至った背景や理由までヒアリングし応募者の本質をあぶり出す方法です。
注意するポイントは、ハロー効果や面接時の評価軸と入社後の人事評価軸が合っているかどうか。採用成功につなげるためにも、コンピテンシー面接の効果などを理解し正しく実施することが大切です。本記事を参考に入念に事前準備を行ったうえで、コンピテンシー面接を導入しましょう。
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