人手不足倒産とは?データから読み解く要因と対策方法を紹介

母集団形成

少子高齢化の流れは止めることができず、今後さらに多方面にわたる影響が予測されます。企業の倒産に繋がる人手不足もその一つと言えるでしょう。

この記事では統計データを参考にしながら、人手不足の実態と原因、人手不足を解消した企業事例なども合わせてご紹介します。

目次

データから人手不足倒産の現状を考察する
なぜ人手不足倒産が起きるのか?
人手不足倒産への対策方法
人手不足の解消に役立つ!企業事例3選を紹介
まとめ

データから人手不足倒産の現状を考察する

人手不足による

人手不足倒産は、事業継続に必要な従業員を確保できなくなることによる倒産です。少子高齢化が根本的な原因と考えられますが、企業を取り巻くさまざまな環境要因が人手不足に関わってきます。

日本の総人口は2008年をピークに、2011年から減少傾向が続いています。生産年齢人口(15~64歳)はそれ以前の1995年からすでに減少がはじまっており、ピークとなった1995年の8,716万人に対して2017年は7,596万人と1,000万人以上減少したことになります。

約20年間のうちにこれだけの規模で人口減少が進んでいることから、さまざまなところでその影響が表面化してくることは避けられないと言えるでしょう。

人手不足倒産の件数は2019年度で194件

人手不足倒産の推移
(株式会社帝国データバンク「人手不足倒産」の動向調査(2019年度)より)

大手信用調査会社株式会社帝国データバンクでは、「個人事業主を含む、負債1,000万円以上の法的倒産」を人手不足倒産の定義とし、各種調査・分析を行っています。

「『人手不足倒産』の動向調査(2019年度)」によると2019年度(2019年4月~2020年3月)の人手不足倒産は194件となり、過去最多を更新しました。

2013年から開始されたこの調査では、2016年度までは2ケタ台だったものが、2017年度114件、2018年度169件、2019年度の194件と、2017年度以降人手不足倒産が急激に増加していることが見て取れます。

最も多い業種は「サービス業」、次いで「建設業」が多い

同調査から人手不足倒産を業種別に見ると、最も多いのがサービス業の51件であり、建設業48件、運輸・通信業が36件と続きます。2018年度の調査結果では、建設業55件、サービス業51件、運輸・通信業36件であり、これらの3業種に人手不足の影響が大きいことが伺えます。

2013年度から2021年度までの累計件数によると、道路貨物輸送82件、木造建築工事43件、老人福祉事業38件であり、貨物輸送ドライバー、中小建設会社、介護事業者などの職種で恒常的に人手不足が続いていることがわかります。

正社員が不足していると答えた企業が40%と上昇傾向にある

株式会社帝国データバンクの2021年度の調査「人手不足に対する企業の動向調査(2021年7月)」において、人手不足に対する企業の見解を調べています。

アンケート項目とされる「正社員/非正社員別従業員過不足状感」では正社員の不足を感じているとした企業の割合が40.7%、非正社員の不足を感じている企業の割合が22.5%であり、業務に深くコミットできる正社員が求められていることが分かります。

正社員を不足と感じている企業を規模別に見ると、大企業46.2%、中小企業39.6%、小規模企業36.2%と企業規模が大きいほど正社員の不足感は増加傾向に。

業種別では、建設が57.5%と最も高く、次いで、家具類小売、自動車・同部品販売、情報サービス、メンテナンス・警備・検査、再生資源卸売、教育サービスといった業種が軒並み50%を超える結果です。

非正社員が不足していると回答した業種で最も多いのは、飲食店、各種商品小売、メンテナンス・警備・検査などが挙げられ、順位の変動はあるものの、飲食・小売はパートやアルバイトが常に不足している業種であることが分かります。

なぜ人手不足倒産が起きるのか?

株式会社東京商工リサーチでも人手不足倒産についての統計調査を行っており、人手不足倒産の定義を「後継者難、求人難、従業員退職、人件費高騰による倒産」とし、私的倒産も含めて月ごとに統計が取られています。

人手不足倒産の定義として挙げられた、後継者難、求人難、従業員退職、人件費高騰が、人手不足による倒産の主な原因と考えることができます。

「経営者が高齢化しているのに後継者であるなり手がいない」、「これまでのような求人方法では人が集まらない」、「人が集まらないので人件費が高騰する」など、複合的、構造的な問題が人手不足に関わっています。

採用が難しいため

経済成長の伸びが頭打ちとなり、グローバル化によって海外企業も含めた他社との競争が激しくなっている事業環境の中で、企業側の求める人材要件が高くなっていることも人材不足を作り出している一つの側面です。

非正規に比べて正社員の不足を訴える企業の割合が多く、大企業のほうがその割合が高いといったデータにも見られるとおり、能力の高い人材を獲得することが難しくなっているという点も採用難の一因と考えられます。

労働環境が整っていない

前述の統計調査の結果で見た、人手不足倒産をした企業の業種、人手不足感の高い業種ともに、建設、運輸、介護サービスなど労働環境や労働条件を整備することが構造的に難しい業種が挙げられています。

従来から雇用が流動的な業種であったことに加え、全業界で人材獲得競争が激しくなったことで、同業界内に人材がとどまりにくくなっている点が人手不足の要因として挙げられるでしょう。

即戦力を重視するあまり人材育成の視点が欠けている

優秀な人材を求めるのはどの企業でも同じことであり、人材獲得競争の中で「即戦力」「業界経験3年以上」といった募集条件のハードルを上げれば、人材不足に陥ることは目に見えています。そのため、今後は間口を広げるだけでなく、採用した人材を育成しつつ生産性を高めていくという考え方も必要です。

人件費の高騰により人材を雇えない

厚生労働白書による平均給与の推移、また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の新規学卒者初任給の推移を見ると、ともに2010年代半ばから上昇傾向を示しています。

また、主に派遣や請負といった雇用形態の職種に関わる人手不足の要因ですが、需給関係で決まる賃金の場合は、賃金相場の上昇により人を雇えないといった状況も起こり得ます。

人手不足倒産への対策方法

人手不足への対策は、採用対策、リテンション(人材の維持)対策、人手を削減するといった方向性が考えられます。

労働環境・条件の改善

就職希望者にホワイト企業だと認識してもらうことは採用難を解消する一手だと言えるでしょう。需要と供給で決まる労働市場において、従業員側の視点で労働環境や労働条件を改善することにより、解消できる人手不足は少なくありません。

また、労働環境の改善と同時に行いたいものが、その仕事の働きがいや職場の魅力などの発信です。最近はInstagram、Twitter、LinkedInといったソーシャルメディアを通して、自社の魅力を伝える企業も増えてきていますので、ぜひ合わせて検討されると良いでしょう。

採用ターゲットの幅を広げる

これまで対象としてこなかった属性の人材に対して、採用の枠を広げていくことは、すでに女性や高齢者の活用という形で広がり始めています。ダイバーシティに目が向けられ始めた時流の中で、性別や年齢のほか、従来とは異なる経歴やスキルなどの観点から採用ターゲットの幅を広げることは、企業に新たな風を取り入れる効果をもたらすと言えるでしょう。

生産性を向上させる

IT投資やアウトソーシングの活用により、従業員一人あたりの生産性を高めることも人手不足を解消する手段の一つです。これらの取り組みに合わせ、人材への教育投資を進めていくことで効率化と生産性の向上が実現します。

人手不足の解消に役立つ!企業事例3選を紹介

中小企業庁では「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン及び人手不足への対応事例」を公表しています。このなかから3つの事例をご紹介します。

事例1:株式会社アカデミー

【企業概要】
(所在地)福島県(資本金)1,000万円(従業員数)19人(事業概要)教育支援業

【取り組み】
● 所定労働時間を6~6.5時間とする短時間正社員制度を導入、契約社員を積極的に正社員に転換
● 急な欠勤など柔軟にカバーし合えるスキル形成を実施、属人化した業務がないため、女性が働きやすい職場環境が実現

【効果】
● 時間的な制約を克服できる職場環境ができたことから定着率が向上
● 短時間正社員制度が労働市場でも評価され、採用応募数が増加

事例2:株式会社荒木組

【企業概要】
(所在地)岡山県(資本金)2億円(従業員数)205人(事業概要)総合建設業

【取り組み】
● 業務スキルの基準と評価を明確化、表彰制度などと組み合わせて社員のメチベーション向上を図る
● 退社時間に職場PCを強制終了で残業時間を抑制
● 測量ドローン、セミオート化した機材、電話受付ロボットなどICT化を推進
● 希薄になりがちな拠点間のコミュニケーションを定点カメラ導入によりで解消

【効果】
● スキルが可視化され評価基準が明確化されたことで従業員のモチベーションが向上
● ICT導入により業務効率化が実現、時間外労働の減少と有給休暇取得率向上につながる

事例3:インターフェイス株式会社

【事業概要】
(所在地)秋田県(資本金)300万円(従業員数)25人(臨床試験受託期間)

【取り組み】
● 人事分野の経験者、ICT分野の経験者を新たに採用し人事制度やシステム化など社内環境の再構築を図る

【効果】
● 刷新された人事制度により目標管理が有効に機能し、社員の意識が向上
● 子連れ出勤や時短出勤、在宅勤務を取り入れることで、雇用の継続性が高まり、県外からも優秀な人材獲得に成功
● システム化が進んだことで効率化が図られ業務時間の短縮と労働時間の不均衡が是正された

まとめ

少子高齢化の進行は避けられず、テレワークの普及や副業の解禁など働き方への意識も今後さらに変わっていくことが予想さます。それに伴う労働市場の変化に対し人材のマッチングも多様化していくことが求められています。

企業事例でご紹介したように、それぞれの企業は独自の方法で人手不足解消に取り組み、克服しています。先行事例を参考に人手不足解消に取り組んでみることをおすすめします。

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